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『読みたいことを、書けばいい。』書評&私が文章を書くということのお話。

これは、すごい大胆な本だ。

本書は2019年に発行された元電通のコピーライター田中泰延氏のビジネス書っぽい雰囲気の本です。

noteにアカウントを作成したので「文章を書く」ということをテーマに据えた大好きなこの本を書評してみようと思います。

まず私は、ビジネスマンではないです。少し前に話題になったビジネス書『嫌われる勇気』とか『もしドラ』ですら手に取る必要がありません。ニーチェってなんですか?中国語?

そんな私がこの本を手に取った理由も正直謎です。見るからに固そうな内容の表紙です。普段なら目にも留まりません。でもいつのまにか本棚に置いてあったんです。

そして、ふとした拍子に手にとってはクスリと笑ってまた本棚に戻す本なのです。普段ライトノベルも読まないような活字嫌いの人間ですが、そんな人間にも本書は何度も読ませてしまう魅力があります。

いったい何が書いてあるんでしょう。
私の何度も手にとって読んできたこの本に対する情熱を存分に文字列に注ぎ込んで、可能な限り文字数を稼いで書評するならこうです。

「読みたいことを、書いている。」

本書は著者が昔読んだ雑誌に掲載されていた職業適正診断の「あなたはゴリラか?」という謎の質問に「どうしてこんなことを書いたのか?」という至極当然の疑問を抱いた記憶から始まります。

そしてそれを「誰に命ぜられた訳でもなく、自分が読みたかったから書いた一文なのだ」と結論づけます。
それがこの本の全てです。

表紙にはタイトルの他に「人生が変わるシンプルな文章術」とのサブタイトルじみたコピーも書いてますが、読み終わっても何処にそんな記述があったのか不明です。というか、本書でも散々「この本は文章テクニックを書いた本ではない」と記載されています。
一応文章を書くにあたり、5W1Hのうち『なにを書くのか』『だれに書くのか』『どう書くのか』『なぜ書くのか』の4つの章に分けられ、ためになりそうなハウツーが書かれています。
ですが「これはすごい!ためになった!これでバリバリ文章が書けるぞ!」とはなりません。

ならばこれは「文章を書くにあたっての心構えを記した本なのか」と理解するでしょうが、そうでもないのです。
確かに随所に心構え『的な』ものは書いてありますが、読み終わっても物書きとしての心構えは出来た気がしません。
じゃあ、なんのために読むんでしょう。

それ以上に、ただただ面白いのです。

「普段本を読まない人間だから読解力が無いんだろ」と言われてしまえばそれまでなのですが、私はこの本が『文章を書くということをテーマに著者が実用性はともかく、自分が読みたいことを書き連ねた本』だと思えます。
書いた自分が恥ずかしくも一人で笑ってしまうようなユーモアを交え、時にはちょっと実用的な内容を交えたこの本にタイトル以上の意味がないのです。
名は体を表しまくってます。

私はこの本に物凄い共感を覚えます。
例えば私はnoteに5つほどここ数日で一気に記事を書き上げました。
恥ずかしい話、書き上げた記事は事あるごとに読んでいます。ちょっとした空き時間にも読んでいます。
私のスマホのメモには小説じみたお話や、くだらないパロディネタなどたくさんの、人には見せられない文章が詰まっています。そしてそれを事あるごとによく読みます。
一時期、小説投稿サイト「小説家になろう」に小説を投稿していた時期がありました。
うん十万字に及ぶちょっとした大作は200万PVを超え、書籍化待ったなしだろうと思っていた時期もありましたが、大賞に応募した結果二次審査落ちでした。書籍化しなくて良かったです。黒歴史が増えるだけです。軽い自慢みたいになりましたが、そのうちの数万PVは私です。「おもしれー」って毎日のように読んでいました。今はもう怖くて見れません。

このように、私は自分が書いた文章が自分で面白いと思えれば書いた意味があると思っていました。
創作や随筆であれ、とにかく自分が楽しければいい。スマホのメモなんて自分しか見れないんですから最もたるものです。

そして私は私自身に限らず、他の人が書いた「自分が楽しいと思って書いている文章」が大好きです。

文章を書く、というのはなんだか知的なイメージがありますし、語彙の豊富さや表現の豊かさなど、突き詰めれば実際頭のいい人が書く文章の方が良いような気がします。
でも実際のところ、なんか頭の良さそうな横文字ばっかりだったり、真面目にクソ真面目な文章の魅力ってなんでしょう?

「いや、これは頭の良くない君に向けて言ってる訳じゃないから」と切り捨てられてしまえば、私も討ち死にせざるを得ないのですが、実際に頭の良い人が自分が面白いと思って書いた文章は、とても魅力的であり、そして難しい横文字を使わなくとも隠しきれない知性が見えています。何よりそんな文章は何回でも読みたくなるのです。

この本に難しいことは何一つとして書いてありません。その代わり余計なユーモアが随所に散りばめられています。その「余計」が私に束の間の笑いと幸せをもたらしてくれます。
「自分が読みたいことを書いた結果、自分も少し幸せになって、もしかしたら誰かが少し幸せになるかもしれない」
文章を書くにあたってこれ以上の事はないでしょう。それをこの本が実証しています。
本当に何処までもタイトル通りの本です。

さぁ、私たちも書くことで少しでも幸せな気持ちになりましょうか。



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