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私の淡い変な恋の話と、そこから学べる人の魅力の話。

恥ずかしげもなく恋の話をしましょう。
ええ、書くことが少なくなってます。早くも身を切り始めました。

私は恋愛が不得手です。得意ならこんな文章書いてません。
そして、学生時代は割とすぐ一目惚れするタイプでした。

そんな私の好きなタイプは…あぁ、待って。興味ないみたいな顔しないで。聞いて。お願い聞いて。

私の好きなタイプはズバリ「変な人」です。たぶん。うーん。本当にそうなのかなぁ。そういうところ含めてお話しします。

高校生の頃の淡い変な恋の話

私がファミレスでバイトを始めて半年、同じバイト先の違う高校の同級生の女の子が部活の先輩をバイト先に紹介し、一緒に働くことになりました。

一つ上の先輩は、小柄でお人形さんのような可愛らしい顔をしていました。正直、顔からしてもうタイプでした。
そのくせ、随分なハスキーボイスでした。ギャップにやられまくっていましたが、まだそれが恋愛感情になることはなかったのです。

それが恋愛感情になったのはある日のこと、私はファミレスのキッチン、先輩はホールで別々の担当だったのですが、先輩がカウンターを挟んだ目の前でお皿の山を崩してしまったのです。

崩してしまったとは言っても、床に落下して割れたとかではなく、カウンターの上に何枚かお皿が散らばっただけでした。

先輩は少し呆然とした様子で私を一瞥すると、ピョコンとその小さな体躯で前のめりになり、平坦な調子のハスキーボイスで「理非道さん。大変なことになりました」と助けを求めてきたのです。

……何が?

崩れた皿の山は落ちた訳でもないのだから、元に戻せば良いだけの話。助けを求められても何をしてあげたらいいのかわかりません。

仕方なくホールに赴き、私は崩れた皿を再び元に戻してあげました。
先輩は「ありがとうございました」と満面の笑みを向けてくれました。

その時私は恋に落ちたのです。ええ、我ながら意味不明です。

それから間も無くしてクリスマスの時期がやって来ました。例に漏れず恋人なんかいる訳ない私は「リア充爆発しろ!」なんて懐かしいフレーズを頭に浮かべていたのですが、結果自分が爆発することになります。

私の勤めていたファミレスではクリスマスになると会社から従業員用のクリスマスケーキが差し入れられ、好きに食べていいという社員向けのサービスがありました。

店長から「ケーキあるから食べてってね」と言われたその日、私のシフトは先輩とモロに被っていました。

これは…休憩室で先輩と二人きり、ケーキを食べられる絶好の機会!

だからといって何かする訳じゃないです。それ自体が嬉しいのです。どこまでも奥手です。というか最終的に奥から手も出ません。

私は胸を高鳴らせて終業を待ちました。
そして予定通り、先輩と二人きりでケーキを食べられる時間到来。しかも先輩がケーキを切り分けてくれるのです。さぁ、待ちに待った至福の時です。

「………」「………」

ダメだこりゃ。自分がまず喋れない。先輩もそんなお喋りってタイプじゃない。
それでもこの気まずい空気を打破しようと必死で言葉を練り上げます。
しかし、先に声を上げたのは先輩の方でした。きっと私と同じくこの気まずい空気をなんとかしようとしてくれたんですね。

「……不味いですか?」
「えっ、いや、美味しいですけど…なんか俺、不味そうに食ってました?」
「いや……」
「………」
「………」

誰か助けて。

なんで初っ端から「マズイですか?」ってネガティブな質問になるんですか!!普通「美味しいですね」とかそういうポジティブな話のとっかかりとかあるでしょう!!聞かれたこっちもかなり気ぃ使っちゃうじゃないですか!!訳わかんねぇっすよ!!コミュニケーション能力皆無なんすか!!

……あーもう、好き。

私はすっかり先輩の虜でした。
しかし、翌年開けてすぐに先輩はバイトを辞めました。店長が一定のノルマを達成しなければいけないと社員にお土産用のカレーを買うようお願いしていたのですが、それが先輩に対してどうやらしつこかったようです。

私の恋は束の間でした。いまだに店長が許せません。

教習所で起きた淡い変な恋の話

私が運転免許を取りに教習所に通い始めたのは、もう社会に出る寸前のことでした。
2月から3月に掛けての教習ですから、お察しの通り、常に教習所はごった返しています。

合宿ではなく、集中的に通っていたので、教習はスムーズには行きません。1日の大半を待合室で過ごしていました。
そんな中、人混みの中に彼女はいました。

なんか、すげぇのがいる。

一見すると、彼女は少し地味ながらも端正な顔立ちでした。近くにいた女子も「ねぇ、あの子可愛くない?」と言っていたくらいです。
オタクが好きそうな感じですね。
しかし彼女の出立ちは明らかに異質でした。

余す所なく全身真っ黒だったのです。
服はもちろん、身に付けているバッグや小物、果てはネイルまで余すことなく漆黒の出立ちでした。
たぶん彼女がインターネットで使っているハンドルネームは†漆黒の堕天使†です。

私はその日から彼女から目が離せなくなりました。
一体どんな人なんだろう。その興味はある日、驚愕へと変わります。

その日の待合室も人でごった返していました。
席は完全に埋まり、立っている人も大勢いる中、私もまた壁際に陣取って、乗車を待っていました。

ふと見れば、あの漆黒の彼女がいるではありませんか。今日も今日とて全身ブラックコーデです。そして彼女は席に座って…

……いや、座ってない!!椅子に自分の荷物を置いてその前でこの人混みの中、体育座りしてやがる!!訳わかんねぇ!!

私はその瞬間、恋に落ちましたが、それ以降彼女の姿を見ることはありませんでした。


それは恋愛感情なんですか?

恋の話、してましたか?
よく分かりません。

だんだんと歳を重ねるにつれ、誰かに一目惚れすることも無くなっている今日この頃なので、たまに彼女たちのことを思い出します。
そして、あの淡い恋達は本当に恋愛感情だったのかと疑問を抱くようになりました。

私は彼女たちの奇怪な行動に目を奪われただけで、それを恋愛感情だと勘違いしていただけではないのかと。それは例えば吊り橋効果と呼ばれるように、恐怖からくるドキドキを恋愛感情と勘違いしてしまうのと同じで「この人、次は何をするんだろう?」という興味を恋愛感情と錯覚してしまっただけではないのかと。

正直難しいところです。
が、好意には変わりありません。そして彼女たちから学ぶことは多いはず。
ここから魅力的な人について考えていきます。

「変わってる人」の利点

皆さんは誰かから「あなたって変わってるね」って言われませんか?言われますよね。じゃなかったらこの文章読んでません。やーい、変わり者。

待って、怒らないで。話聞いて。
でも変わってるって結構良いことだと思うんです。
ちょっといくつか利点挙げましょうか。

人の興味を誘う。

「マズイですか?」と開口一番尋ねてきたり、頭の先から爪の先まで黒に染めてたら、そりゃ「なんでさ」ってなります。
ふと、気になってしまったら考えずにはいられません。どうして、何故……。
しかしこの考えは万人共通じゃありません。
まず、変わってることに気づかない人だっています。気づいたらからこそ遠ざける人だっています。

しかし、興味を持って近づいてくる以上、あなたに関心や、好意があるってことなんです。
もし、あなたの内面に関する事で主張したいことがあれば、ここぞとばかりにひけらかしましょう。きっと、目を輝かせて聞いてくれるはず。
私も彼女の黒に対するこだわり聞きたかった。

人一倍大事にしてもらえる。

抜けてるところがあるって大事な魅力の一つです。
私なんて抜けすぎてスッカスカです。
「この人、私がいないと心配だな…」って庇護欲が芽生えます。庇護欲って単純な愛です。常に注目して何かあったら行動せざるを得ないんですから。
なので、私のズボンのチャックが開いてたら指摘してください。家出てから何時間チャック開いたままだったんですか。恥ずかしいったらないです。

それはそれとして、よく頭のいいアピールされる方、いますよね。実際に頭がいいならともかく、常に自分を大きく見せようとしてる人は割といっぱいいます。
確かに頭が良い人は頼りになりそうです。

が、残念ながら多くの人はアホが好きです。自分を大きく見せちゃいけません。アホになりましょう。

好意を持ってくれた人は大抵似たモノ同士。

変わってる人ってそれだけで人を選びます。変わってる人は変わってる人を呼びます。普通の感覚持ってる人がいいですか?贅沢言ってんじゃねぇですよ。

思い返せば、私に好意を抱いてくれた人達は余すとこなく、変わり者でした。端的に言えば面白い人たちばかりです。
独特の世界があって、感性がある。そこに多少の違いはあれ、似たモノ同士なんだから干渉も共有もできます。

なので、近づくことさえできれば仲良くなれます。たぶん。仲良くしてください。

でも変わってる人って、綱渡りみたいにリスクを抱えながら生きています。誰かから好かれるのも、嫌われるのも割とあっさりです。

じゃ、どうしたら良いでしょう?その辺りも彼女たちから学んでいきましょう。

欠点は欠点のままでいい。

先輩は、失礼ながらおっちょこちょいです。教習所の彼女は周りがよく見えません。まぁ、印象でしかないですが。でも、印象はおおよそ間違わないってアカギも言ってました。

私たちはそれぞれ大なり小なり欠点を抱えています。直せたらそれが一番いいですが、なかなか難しいです。大抵人に迷惑ばかりかけてしまいます。

ならばこれはもう、抱えていくしかありません。開き直りましょう。
しかし、忘れてはいけません。常に愛想は良くしておくこと。

皿を崩したくらいで、こっちは働いてんのにわざわざ呼び出して、そんなもん不愉快です。その前に意味不明です。
しかし、先輩のあの笑顔と「ありがとうございました」あれさえあれば、悪い気はしません。
悪い気しないどころかこっちはもうコロっといってしまいました。

よく「周囲に迎合したくない!」と無愛想な方いらっしゃいますよね。あれではダメです。自分も得しません。そういうのは他で発揮しましょう。
とりあえず今日から愛想良くしてください。

こだわりはあればあるほど良い

「周囲に迎合したくない!」って人はこっちで発揮してください。これは得する機会があります。

こだわる人って素敵です。そういう方ってなんか一目見て分かります。
漆黒の堕天使である彼女もこだわりの強い人だったんでしょう。こだわりセンサービンビンでした。

そういう私も当時、スゴい色の服ばっか着てました。緑だの、紫だの、ショッキングピンクだの、そりゃもう「なんでさ」って感じです。
思い返せば、漆黒の堕天使とよく目が合ったような気がします。たぶんセンサーに反応したんでしょう。お互い「なんでさ」って感じで。


最近はジャケットにチノパンという、今日び大学生でもしねーよって格好です。私も大人になりました。無難ザ無難です。
ですがこだわりを捨てた訳じゃありません。365日ジャケットにチノパンです。クソ暑いこの頃もジャケットにチノパンです。
暑くないのかって?マスターキートン読んでないんですか?砂漠で生き延びられませんよ?
私は東京砂漠のカーリマンです。水と食料を下さい。

結局、人それぞれって話にはなりますが、人一倍人を選ぶ自分には割と大事な話なんです。

「変わってるね」ってあまり好きじゃない言葉でした。「あぁ、だから自分は周りに馴染めないことが多いのか」って裏付けになってしまいますから。

でも欠点は直せません。こだわりは捨てきれません。でも、それで良いんです。それを好きになってくれる人はどっかにいるんです。
それを彼女たちが教えてくれたのかも…

えっ、なんですって?
お前、どっちも顔から入ってんじゃねぇかって?結局内面より外見の方が大事って話にしか聞こえなかったって?
なんだとこの

                〜完〜


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