見出し画像

建築パースの作り方について

こんにちは、佐藤研4期生の横井です。

今回は6年間で培われた建築パースの作り方を書いていこうと思います。

(卒業前の置き土産的に書こうとしたところ、己の怠惰さにより4ヶ月も寝かされていたことをここにお詫びします。)

正直、パースの作り方を一から十まで教えることは不可能だと思うので、パースをいい感じに仕上げる方法を中心に書いていきます(基本操作は世の中にありふれていて、そちらの方がきっとわかりやすいはず)。

※あくまで一学生が6年間で得たざっくばらんな技術であり、ちょっとしたTipsだと思って読み進めてください。

パース作成のキホン

はじめに、いいパースを作るためには、観察と分析→実践の繰り返しをすることが一番大切です。

昔、何かの雑誌に「イラストが上手くなるためには腕を動かすことも大事だけど、目を上手くつかいなさい。」と漫画家が言っていたことを覚えています。

すなわち、パース技術を養うためには、なぜいいパースだと思ったのか(観察)、どういう技術が使われているか(分析)、試しに作ってみる(実践)のように、いいパースを観察して自分の技術に落とし込む必要があります。

スポーツだとわかりやすいと思いますが、上手い選手のプレーを見て、自分も同じプレーをするためにはどうすればいいか試行錯誤しますよね。これと同じです。

スポーツだと身体能力や技術に差があってできないこともありますが、パース作成(少なくともPC)における条件はみんな一緒です。なので、観察と分析→実践を繰り返していけば、誰でもパース技術をつけることができるのです。

僕が特に意識しているのは、観察の質と実践の量です。ネットやa+uなどからお気に入りのパースを見つけてきて、真似しようとしているうちに自分の技術になります。実践する時間がなくても、あらゆるデザインに「これってどうやったら作れるんだろう?」って想像する癖が大事かなと思います。

下準備

モデリング

スケッチアップがおすすめ。四角が作れれば問題なし。

手描きパースをする人も、簡単にモデリングができたほうがいいです。
モデリングをすることで、パースを取ることができるのとスケールを合わせた表現ができるからです。

スケッチアップのモデリング
手描き後のパース
打ち合わせの資料などにも非常に便利です。
モデリング(横井作成)
完成パース(後輩作成)
大体1日くらい格闘していた記憶がありますが、非常に綺麗に作れます。

簡単なモデリングとパースの技術があると、ひたすらモデリングで画角を作りながら、後輩にパースを作ってもらうこともできるようになります。

ラフスケッチ

僕がパースを作る時は、なんとなくのイメージをスケッチします。漫画で言うネームの部分です。

モデリングからパースを決める
人の動きや見せたいことをイメージしながらラフスケッチする
手描きとフォトショのどちらでもラフスケッチはします。
清書してテクスチャを入れ込む

時間がない時は省略することもありますが、なるべくラフスケッチするといいです。スケッチすることで伝えたい情報を整理できるのと、必要な作業量が見えてきます。

他にも、遠近感のトレーニングになります。どの位置に部材が来るのか、人の大きさはどのくらいか、たくさん作るうちに描くスピードは上がります。

また、テクスチャを入れるのを別の人に任せるなど、作業の分担もできます。(実際に、↑のパースは後輩に植物や石の表現をしてもらいました)



6年間の成長過程


「パースが作れるのは元々センスがあったからでしょ?」
いやいや、そんなことはないと思います。
最初は誰でも初心者です。もちろん僕も初心者でした。

ここでは、6年間のパースを時系列順に見てもらい、最初はこんなものだったのかと思ってもらえると幸いです。

パースの技術を解説している記事は多いけれど、プロセスがただ載っているものって少ないですよね。そう思って、参考程度に書きました。

手描きパース

手描きパースは、まっすぐ線が引けることと表現の仕方を覚えれば、だれでも描けるようになります。僕も最初から人間が描けたかといえばそうではないし、少しずつの積み重ねで技術を獲得してきました。

B1のリートフェルト邸、新しく買ったコピックで描いた最初のパース
B1〜B2の課題、実際の建築を見ながらパースを描きました
B2後期の住宅課題、人がまだ抽象的です
B2後期の最終課題、iPadで模型写真に人間を入れてみたもの
B3前期の集住課題、鳥瞰風のパースを描き始めました
集住のアイレベルパース、B2と比べて人間をしっかり描き始めました
B3夏の新人戦に向けた小学校のラフスケッチ
線画を抽出してiPadで色をつける技術を身につけました
アイレベルパースも描きたいものが整理され始めました
B3夏に取り組んだコンペのパース、手描きでやり切りたい一心でした
B4前期の学会コンペ、後輩と協力しながらパースを作ることができるようになりました
どうすれば雰囲気のあるパースが作れるか、試行錯誤した時期です
卒業設計の検討パース、何枚も描きながらどういう空間が必要かを検討しました
M1スタジオ課題のメインパース、短い時間でクオリティを上げられるようになりました


PCを使ったパース

PCのパースは主にPhotoshopを使っています。
レンダリングソフトはリアルな分だけ情報過多になってしまうので、伝えたい情報を絞る上ではPhotoshopがいいかなと思います。
まだまだ自分も試行錯誤しながら、がんばっているところです。

B2課題をTwinmotionに入れただけ、これでパースと呼んでいた時期もありました(B3)


B2後期課題をTwinmotionに入れただけ、テクスチャというものを全く知らない(B3)
B3常滑課題、モデリングとTwinmotionに時間をかけた結果は、
スタイロフォームの本模型になりました
エスキスをしてもらっていた久保さんには今でも申し訳ないと思っています(B3)
卒制をせんだいに出そうとした時にPhotoshopを触りました
卒制は大きな挫折で、無力感に溢れていました
人も入っていないこのパースはその象徴でもあります
模型にフォトショで加工をしています(B4)
スタジオ課題をやりながら、1日でやり切ると決めたコンペのパース
粗しかないけれど、空間を伝えるには十分だったのかもしれない(M1)
学会コンペのメインパース
アイソメをPhotoshopで作れないかと試行錯誤したもの(M2)
隣で指示をしながらB3の後輩が作った印象的な一枚
パースの作り方がわかっていることの大事さが身に沁みました(M2)
ポートフォリオ用の卒制パース
一年越しのリベンジ、光と影を意識することを覚えました(M2)
相手に伝えたい情報を選びながらパースを作りました
テクスチャは大事、版築を強調するために時間をかけました

PC・手描きのハイブリッド

まとめとして、僕の学生期間の集大成となる表現を紹介しようと思います。
PCと手描きをハイブリッドするパースです。

PCと手描き、どちらかのみでパースが作られるのは、テイストの調整の難しさにあると思うのです。
ただ、テイスト調整の壁を乗り越えれば、PCの作業速度と手描きの表現の自由度を兼ね備えたパース作成が可能になる気がしています。

PCと手描きの技術が最低限備わっていれば作れるので、ぜひ試してみて欲しいです。

卒制のメインパース
モデリングから手描きして、人はPhotoshopを使いました
時間はなかったけれど、雰囲気を伝えることに全力を注ぎました


JIA東海の銅賞をもらったシート
これはアイデアからシートまで1日で全部を作りました
Photoshopで作成した背景ラフ
紙に手描きをして、スキャンしたもの

僕のパース作成のススメは以上になります。

僕自身、優秀でもなかったし、講評会でもあまりいい思い出もないですが、新しい表現方法に挑戦することは続けてきました。
難しいことは考えずに、やってみることが大切です。

結果を追い求めても結果はついてこなかった
何を伝えるかに重きを置いた時、いずれは結果がついてくるものだと考えている


一学生の参考として、何かのお役に立てればいいな思います。

参考資料・サイト

おまけとして、自分がパースを作る時に参考にしていたものをいくつか紹介していこうと思います。

千葉大卒の方がパースの仕上げについて説明している動画です。僕が今回紹介したレタッチもこの方の動画から学びました。

このような海外の方がフォトショの使い方やパースの作り方を紹介している動画です。表現方法に悩んでいるときにおすすめです。

日本大学卒の方がパースの作り方を説明されています。卒制やコンペなど数多くの受賞をされている方で、有料ですが非常にためになります。


このように、コンペ受賞常連の方が技術を説明してくれていることもあるので、Xなどで検索をかけてみるのもいいと思います。ポートフォリオなども参考になります。

水準は一流の建築家やデザイナーたちに、具体的な技術は身近な学生たちの知恵に助けてもらうスタイルが個人的なおすすめです。

それでは、またどこかで!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?