見出し画像

住んでた家のこと

生まれ育ったのは千葉県北西部。1950年頃の建売住宅は私たちが生まれた後に増築されて、平屋の広め4DKだったけど、とても使いにくい間取りだった。

トイレ風呂の間には洗面があった。

南側にガッと引き伸ばしたので床面積も収納もたっぷりだったけど、廊下が少なく部屋と部屋の仕切りは襖や障子なので、プライバシーもへったくれも無い。玄関横の3畳間が唯一しっかり個室だった。傾斜地に盛土された土地だったからか、だんだん家が傾いたようで、1990年頃には外壁と柱の間にすごく細いけど隙間ができて、蚊は入るし西日は差し込むし、というすごい仕様であった。1980年代に分譲された家に住む友達がとても羨ましかった。もっとも、高校の時のある友人の家は風呂を沸かすのが薪だと言ってたし、2年先輩の地方出身者は生家が汲み取りだったというから、最底辺ではなかったと思う。
その家も2015年頃までは人が住んでて、2021年に売却解体された。

急にこんなことを書こうと思ったのは、今の家に引っ越す前に住んでた家が子どもたちにとっては「育った家」なんだなあ、と、ふと思ったので。
彼らが自分の家をどう説明しているのかいないのか知らないし、家に友達が遊びに来ることもなかったが、一生のネタになる家だった。

雨漏りする
アシナガバチが入り込む
冬は外より寒い
風呂場にナメクジが出る
押入れにカビが生えた
台所の床が腐って穴が空いた(もちろん修理してもらった)
入居早々にトイレが詰まってえらいことに(もちろん修理してもらった)

言い訳をすると、住居にお金をかけるのは老後で良いと思っていた。若い時は外の活動が多いんだから家は雨露しのげて寝る場所さえあれば良い、と。
実際、これで相当な金額を投資できたのだから、暑さ寒さに耐えた価値は十分にあった。それに、きれいで快適な家より、古くて虫なんかもいて、という家の方が絶対ネタになる。アシナガバチは夜は眠い、なんてことを知ってる人はあまりいないから。
私も、かなり古い家で育ったことを、今では懐かしく思っている。

もっとも、家が古い上に、食べるものに事欠いて親はギャンブル依存とかDVなんて環境だったら絶対に親を許さないだろうけどね。古い家をネタにできるのは「楽しい我が家」って条件付きだね。