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ハムスターの脱走、ヒマワリの種大作戦!

 私は遥昔に、大学受験に失敗した。だからといって何がしたいわけでもなく、考えた挙句に浪人をしたい旨を親に伝え、いざ浪人したら通っていた予備校が楽しすぎて遊びすぎてしまい、これまた受験に失敗して両親激怒、自分で学費を払える専門学校の夜学を探して、昼間は働く事にした。

 夜学では3年間学ぶと保育士と幼稚園教諭免許を取得出来る所で、午前中働く場所を紹介して貰う事が出来た。私は白金にある幼稚園の助手として働く事になった。場所柄大使館があるなど国際色豊かだった。小学校と併設になっており、アットホームな雰囲気だった。(現在は廃園、廃校になっている)

 夜学に通っている人たちは当時めちゃくちゃ働いていた。午前中幼稚園や、保育園で働いて、学校に来て、その後に飲み屋で働いている子も居た。私は、平日は幼稚園、空いた時間には、お爺さんが1人で営んでいるカレー屋さん(コーヒーはサイフォン)のお手伝い、週末は地元の保育園で働いた。

 そんなある日の事、同じく港区の幼稚園で助手として働いていた同じクラスのKちゃんに、「ハムスターの赤ちゃんが産まれたんだけど、少し預かってくれないかな?」と言われた。たくさん産まれたので、数匹を預かって欲しい、そしてバイトしている幼稚園に持って行って欲しい。幼稚園の先生同士で、譲渡の話はついているから、との事。

 そして、小さな小さなハムスターが私の家にやってきた!幼い頃に脱皮に失敗したミミちゃんというザリガニ以来の可愛らしい生き物がやってきたのだ。

 私は、空いた靴箱に空気穴を開けた。これをハムスターの家にしよう。
 そして、靴箱の蓋を見ながらハムスターは苦しくないだろうか?と、不安になってきた。
 蓋を自分の顔に近づける。息をする。く、苦しい、、、
 「これではハムスターは苦しい!」悩んだ末に靴箱の蓋に自分の拳くらいの大きさの穴を開けた。
これで、大丈夫なはず!ハムスターよ、ゆっくり眠るんだよ!

 そして、夜何やら玄関で、がさごそがさごそと音がしているのを感じてはいた。

 翌朝。箱を見に行くと、ちょうど大きな穴を抜け出そうとして、足をかけたハムスターと私は目がバチっと合った。するとそれをきっかけにして、ハムスターは、物凄い速さで走って逃走。「待って、待ってよ〜!」と言っても勿論逃げる足は止まらなかった。

 そして、行方が分からなくなってしまった。

 「馬鹿じゃないの?!」色んな人に言われた。「そんな大きな空気穴を開けたら、逃げて下さいって言ってるようなものじゃない!」とも言われた。
その通り。だけど苦しかったんだもんね。(人間だからね)

 そしてすぐさま家族会議が行われた。皆で知恵を絞って考えた結果、まだハムスターは家の中に居るだろう、部屋ごとにひまわりの種を置き、扉を閉めてひまわりの種が無くなった場所にハムスターはいる筈だ。因みにこれは母の案だった。

 押入れにも、ひまわりの種を置いた。すると夜中、皆が寝静まったころに、ガジガジという音が聞こえてきた。

 翌日、押入れのひまわりの種が少なくなっており、翌日の夜にそっと押入れの扉を開けるとハムスターがひまわりの種を両手で持ちガジガジしていた。そうして無事ハムスターは空気穴の小さな場所に入れる事が出来、幼稚園に持って行く事が出来た。その後も幼稚園の子どもたちのアイドルとなった。

 よく考えないとダメな事ってあるよね。人間だもの。


ハムスター脱走の過程

 

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