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2021年8月2日(月)@横浜シネマリン・塚本監督オンライントークレポート

7年目の『野火』アンコール上映のトップバッター、横浜シネマリンさんで上映後に塚本監督のオンライントークが行われました。MCは八幡支配人。7/17(土)に実施されたPFF×早稲田大学講義「マスターズ・オブ・シネマ」のレポートも読み込んでたっぷりの質問を用意してくださってました。

2021年8月2日(月) 14:40の回上映後
会場:横浜シネマリン
MC:八幡支配人

毎年8月には戦争をテーマにした映画の特集をしっかりと組まれている横浜シネマリンさん。今年も〈戦後76年〉特集内での『野火』の上映です。

まずは八幡支配人より改めて「戦争映画を撮った意味」を問われた塚本監督。最初の動機は戦争というテーマを越えた「大岡昇平さんの原作の素晴らしさ」に魅かれたことでしたが、戦後70年を迎えるタイミングで本作をつくらねばと思ったことについては「戦争体験者の方が少なくなってくるにつれて戦争の方に近づいていってしまってるのではないかという危惧からつくり、そのことで共感してくださる方も多かった。今という時期に戦争の映画をつくったことはやはりこのタイミングだったのかなと思いますし、その後毎年見てくださる方がいるというのはやはりつくってよかったなと強く思っています」と答えました。

戦後76年を迎え、実際に戦争に行かれた方はおそらく現在95歳以上。「体験者の方が全くいなくなってしまうときが確実に訪れる中で、戦争のリアルをどうやって若い方たちに伝えていくか」という課題について、早稲田大学の講義で学生の方から「戦争体験者でない人が戦争映画をつくること」についての質問が上がったことにも触れつつ問われた塚本監督は「実は自分もその答えを見つけるのが難しいと思っていたので体験者の方の話をちゃんと聞ける最後のタイミングで『野火』をつくったんです。実際にフィリピンの戦場に行かれた方にインタビューをしたのはこの映画をつくる10年前くらいでしたが、そのときすでに85歳でいらしたので、ちゃんとその体験を聞いた上での映画にしよう、何とか間に合わせたいと思ったんです。つまり体験者の方がいらっしゃらなくなったらどうやって映画にしていったらいいんだろうという答えが見つからないまま藁にもすがる思いでつくったのがこの『野火』です。なので今後に関して言うと新しい課題ではあるのですが、戦争を体験してない人が戦争の映画をつくっちゃいけないのかというと、そんなことはないなとだんだん気づいてきて、書物などをいっぱい読むことによって浮かび上がってきた客観的事実に、書いた人も自分も人間ということでわいてくるはずの想像力をあわせ、その上で慎重につくっていけばいいんじゃないかなと今は思っています。」と考えを述べました。

そんな塚本監督の今後の作品の構想としては、3年間準備を進めている戦争をテーマとした企画があるそうです。

質問タイムでは、「辛いし恐いけれども継続して観ている」というお客様から「市川崑監督の『野火』は意識されたのか」という質問。高校生の映画少年だったときに市川版『野火』を鑑賞したという塚本監督は「市川崑監督の作品は10代の自分に強い印象とその後の映画づくりに影響をあたえました。ただ『野火』に関しては自分の語り口とは違うなと思いました。市川監督の『野火』は登場人物の暗い心の問題に差し迫っていく感じ。僕はまず風景が大事で。フィリピンの美しい風景とぼろぼろの人間の対比を描きたかったんです。」と答えました。

ほかにも戦争について、戦争を伝えることについて、今の日本が直面する問題など深い話がたくさん飛び出し、20分ではおさまりきらない時間となりました。
横浜シネマリンさん、ご来場のみなさま、今年もありがとうございました!

横浜シネマリン
https://cinemarine.co.jp/

7年目の『野火』上映概要
8/2(月)~8/5(木) 連日14:40~
8/2(月) 上映後、塚本監督オンライントーク
8/3(火)~8/5(木) 本編前、塚本監督ビデオメッセージつき

〈戦後76年〉特集
『8時15分 ヒロシマ 父から娘へ』
『スズさん~昭和の家事と家族の物語~』
『ひろしまー1945年8月6日、原爆雲の下の真実―』
『東京裁判 4Kデジタルリマスター版』
『生きろ 島田叡 ―戦中最後の沖縄県知事』
『なんのちゃんの第二次世界大戦』


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