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レバ刺しの今

レバ刺しの今

平成23年10月、厚生労働省は食品衛生法を定め、牛肉の生食に関する規定を定めました。これは同年4月富山県で起きた、ユッケによる集団食中毒を受けての事でした。

食品衛生法による規定が定められる過程で、様々な食肉に対する検証が行われました。その結果、厳格な基準を満たした生肉のみ、提供可能となりました。

この規定により、事実上ユッケや牛刺しは表舞台から姿を消しました。

そしてこの規定により、完全に生食が禁止になった商品があります。

それが今回のテーマ、レバ刺しです。
なぜユッケ事件が原因でレバ刺しが禁止になったのか。
レバ刺しはもう食べられないのか、レバ刺しの今を追っていきます。

①レバ刺しが禁止になった原因

ユッケ事件の後、食肉に対して検証が行われた結果、牛肉の内部は無菌状態であるが、屠畜、解体、加工の工程で表面に菌が付くことが汚染の原因である事が分かりました。

その為新しい食肉の規格では、表面を加熱する事で殺菌する事が主軸となっています。食中毒の原因の大腸菌は75℃で1分加熱する事で死滅するからです。

様々な検証の中で、牛レバーの内部に腸管出血性大腸菌を有する固体がいくつも出てきました。これまでレバーは表面にしか菌が存在しないといわれていました。

しかし内部に存在する事が確認された事と、その大腸菌を除去する方法が加熱以外になかった事から、牛レバーの生食にも規制がかかりました。

これが牛レバーが禁止されたあらましになります。

②牛レバ刺し禁止その後

牛レバ刺しが禁止になった後、代替えとして豚レバー、馬レバーが提供されていました。豚レバーは平成23年の食品衛生法では規制されませんでした。

これは豚レバーの安全性が確認されたからではなく、豚レバーを
生で食べるという想定をしていなかったからでした。

豚肉の生食は従来、生食の文化が無く、その為食品衛生法の規制の対象外となりました。しかし、牛レバーが禁止になった後、豚レバーをレバ刺しとして提供する店が増えてきました。その結果、大腸菌以外の、ある食中毒発生件数が増えていったのです。

豚レバーによる食中毒の主な原因はE型肝炎ウイルスにあります。
E型肝炎ウイルスは汚染された土壌や水に生息します。
それが川や海に流れ込み、動物が摂取する事で体内に生息します。

E型肝炎ウイルスは、重症化すると劇症肝炎(肝不全)を引き起こし
劇症化の後の致死率は20%に及びます。

食中毒件数の増加を受け、厚生労働省結果平成27年6月、豚の生食を全面的に禁止しました。これで法で許可されている馬レバー、鶏レバーを除き、レバ刺しは法令上完全に禁止になりました。

③レバ刺しを食べる手段

牛、豚ともレバーの生食が禁止された今、レバ刺しを食べる事は不可能なのでしょうか。しかし需要有れば供給あり、禁止されているものほど価値が上がるものです。レバ刺しを食べる手段について説明していきます。

・隠れて生レバーを提供している店を見つける。

レバ刺しが禁止になった時、「食文化の破壊だ」という意見がありました。
これは提供する側も同じだったと思います。今まで食中毒など出ていないという経験則から、隠れてレバ刺しを提供し続けるお店は多かったと思います。

実際、僕の前職の焼肉屋は常連様にはレバ刺しを提供していました。
また、お客様からもレバ刺しを出しているお店を何件か教えてもらいました。

ただこの方法は、まず店を検索するのが非常に難しいです。
常連にしてみれば、レバ刺しが食べれるお店をおいそれと知られたくないでしょうから。

また、知りえたとしてもお店が簡単にレバ刺しを提供してくれるとは限りません。もし保健所にばれたら職を失う可能性があるので、レバ刺しがある事を知られたくないからです。

この方法を選ぶ人は、刑事になったつもりで足で情報を集めて下さい。

・レバ刺しが合法な外国で食べる

日本では、集団食中毒事件がきっかけで食肉の安全性が検証され、
結果生食が禁止されました。集団食虫毒が無ければ、今もユッケやレバ刺しは提供されていたかもしれません。

なので、牛肉の生食文化があり、規制されていない国に行って
レバ刺しを食べるという手段があります。

代表的な国としては韓国が上げられます。
レバ刺しが禁止になった後、韓国への旅行者が増えたという報道がありました。さすが焼肉の発祥の地、懐が広いですね。

また、オーストラリアでもレバ刺しを食べる事が出来ます。
オーストラリアは肉牛の生産地として知られている国なので
レバーもたくさん市場に出回っています。

畜産業が盛んな上に、先進国の為、衛生管理も発達しています。
主に日本食レストランでレバ刺しは提供されているようです。

★合法レバ刺しを食べる

近年、冷温調理がブームになっています。
元々低温調理はフレンチの技法なのですが、それがなぜ肉料理の世界に広がったのか。

これには肉の加熱のメカニズムが科学的に解明された事、
そして家庭でも使える低温調理機が開発された事にあります。

60℃で10分以上加熱する事で肉内の細菌が死滅します。
しかし、65℃以上になると肉汁を外に放出してしまいます。

肉を低温で加熱する事で安全でかつ柔らかく食べる事が出来るようになり
サラダチキンや低温調理ステーキなどが人気レシピとして紹介されました。

そしてこの低温調理法が肉業態に応用され、現在レバ刺しとして提供されています。

業界初の合法レバ刺しを開発したのは、西荻窪の「もつ吉西荻窪店」。
加熱時間、温度、水蒸気量の中から最適な状態で、厚生労働省の基準を
クリアする過熱状態と認可を受け、レバ刺しとして販売しています。

同じように、低温調理レバーを提供しているお店としては
・はたがやレバー 本店(幡ヶ谷)
・焼肉・ホルモン料理とらじ亭(神田)
・Moshas(モシャス)(上大岡)

などが挙げられます。レバ刺し好きだった人は行ってみるのもいいかもしれません。

④レバ刺しの今後

レバ刺しは法律で禁止されています。食中毒のリスクが回避できないからという理由です。しかし、今後も隠れてレバ刺しを提供するお店は絶対になくなる事はないでしょう。

それほど好きな方にとっては代替えの効かない商品だからです。
焼肉屋で働いていて分かりますが、レバーが一番好き嫌いが分かれます。

好きな人にとっては麻薬のようなものなのでしょう。
カリギュラ効果も働き、背徳的な美味しさに舌鼓を打っているでしょう。

個人的にはそれでいいと思います。たまに生レバーを提供していたお店が
摘発されたいうニュースが流れますが、警察も野暮な事をするもんだと思っています。

食べ物に関する処罰は、その人が健康を害する事以外あってはいけないと思っています。何故なら食と生活は一体であり、だから食文化という言葉が生まれたのだから。

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