見出し画像

にょっきり軍艦島

2021年春長崎駅は既に私が知ってる姿から変貌していた。
従来の長崎駅はその地名のメジャーさからするといささか寂しい感じではあったが地方JR著名駅あるあるの「え?なんもないじゃん」的なものとはいささか趣が異なる。
まず終着駅でありその歴史や歌謡曲の題材からの県外者が持つ独特の哀感(勝手なものですが)なども重なり旧長崎駅の特にあのホームのちょい寂しい感じ、あれが長崎だ。(勝手な思い込み)
それにくらべリニューアル長崎駅ときたら、と老害に言わせてもらえば長崎駅に限らずリニューアル駅舎はだいたいが高架式になるのなんなん?。メジャー駅ほど似た構造の高架リニューアル。多分そこになんらかの合理性があるのでしょう。そこに私自身のの老化要素もプラスされ各新駅の思い出の区別がつかなくなってるのだ。久々の長崎、リニューアルのことも事前に知ってはいたがこれは完全に初めて見る別の駅。それでいて駅の構造は他所でも見たような光景のため(しかもまだ工事中)つい混乱してしまった。かつて知ったる駅前に出られればまだよかったが今まで出たことのない側に出てしまい今まで見たことの長崎駅前がそこにあった。ここはどこ?
それもまたよし、新しい長崎が歓迎してくれている。

そんな情緒より今優先すべきことは軍鹿島周遊クルージングの乗船手続きである。とりあえず港を目指す。駅の知らない側に出て一瞬戸惑ったが海と山が見えてる限りは長崎で道に迷うこともなく徒歩で無事港到着。ただし今回のクルージング船の発着はこのメインの港ではなかった。実際には複数の業者がクルージングをやっているようでそれぞれに発着場が違うようだ。そのさらに先の公園を抜けたところの小さな波止場に受付事務所が。特急が遅延したとはいえ時間に余裕があってよかった。

さて、今回の軍艦島クルージングツアーだが直前に疫病禍の影響による予定変更が行われた。
密による複数人の接触回避するため軍艦島上陸は中止。
結構なガッカリ事態だ。そもそも上陸は野外だからむしろ乗船時のほうが密じゃないのか?2023年の現在の視点だから言えますが、やってますよアピールですよね。
ただ九州行きの直前より感染数の波が上昇傾向だったのでそもそもクルージングツアー自体が中止になることも覚悟していたので行けるだけ御の字といったところか。
手続きも済ませ乗船時間まで余裕があったため近所をぶらつく。割と大浦天主堂などが近くでここであらためて「ああ長崎にいるんだ」と実感。
当然天主堂もグラバー園も休業。静まり返る観光の定番スポットの風景にむしろレアな今しか見られない風景を堪能。

出発時間、乗客多し。一名予約客がまだ来ていないということでちゃんと待ってくれる。多分別の業者さんのほうに行ってしまったのだろうか。あとで知ったことだが空いていれば予約なしで当日乗れるとのこと。

さて無事出航となったがここでひとつやり遂げたことがある。

「長崎から船に乗って・・・」

を実体験。
実際には神戸に着くどころか軍鹿島すら降りることなく

「長崎から船に乗ってまた長崎に着いた」

だったが。
しかし長崎港からのドッグやらいかにも重工業な鉄っぽい光景、そのバックに斜面地と軍鹿島に行かずとも船からのこの光景を見るだけで充分満足なくらいだ。

軍艦島到着までは島で育ったという女性のガイドさんの説明。同年代くらいの人でモニターに映る子供時代の写真も自分の昔の写真と同じ時代感。但しその背景は軍艦島。ここに人が生活していた時代は勝手に相当昔だと思っていたが炭坑が閉山したのが1974年。自分の感覚ではそんなに昔じゃない。親近感が増す。

 そして周りを囲む岸もなくなり一面海になったくらいところで軍艦島は突然現れる。急にニョキっと廃墟群が海から浮上したような感じだ。
白昼だが夢のような光景だ。結構怖い。窓の一つに人影とか見えたら卒倒しそうだ。いらん想像をして勝手に怖くなっている。
上陸はなしということで時間をかけて周りを周回してくれたがこれはよかった。
手前に海があっての廃墟群にこそこの風景の特異性があるのであって上陸してしまえばただの廃墟群だ。当然建物の中には入れないし決まった遊歩道を歩くだけ。むしろこれでよかった。

と自分に言い聞かせた。

往復約2時間、いい時間でした。
今回唯一時間が決まっている行程の軍艦島ツアーを終えあとは自由。しかも今回は長崎に2泊。後に振り返ってこの時の幸福感を何度も思い出すだろう。
いや決して大げさでなく。

駅前のビジネスホテルにチェックインしてから夕飯がてらグラバー園の上からの夜景を見に行く。
ところで疫病禍のホテル営業、今回に限らず私の利用したところは特に特別な対応とかはなく変わった点でいえばだいたいのホテルが歯ブラシタオル等のアメニティが部屋設置ではなくフロント横などに置かれるようになったがこれも疫病禍以前からそうだったような気もする。

出島の海側に長崎出島ワーフという今風のデッキで連なった飲食店の並びがある。通常夕食時になれば賑わうであろうがやはり人は少ない。店にとっては望まない状況だがデッキで静かにビールと軽食、対岸には稲佐山。
なんとまあありがたい時間よ。

 食事後グラバー園の上へ向かうため二つの野外のエレベーター(斜行と垂直)を利用して夜景を見に行く。これはクルージングツアーのガイドさんから聞いた一応穴場コースとのこと。エレベーターは基本斜面地に住む方々のためのもので観光客にどっと来られても迷惑になるのであくまでも穴場ということで。
長崎夜景といえば稲佐山からが定番だがこちらの夜景は近いしコンパクトなもの、但しほぼ無料。たしかこの時は稲佐山へのロープウェイも休業中だったはず。

グラバー園上からの夜景は疫病禍だからなのかもともとそうなのか、いささか寂しい光量に見えたが自分にとっては新しい長崎の思い出となった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?