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疫病、豪雨、そして第三の危機 鳥取砂丘編

九州ほぼ全土が線状降水帯に覆われた2020年7月。私は小倉にいた。
一応は一回目の緊急事態宣言が解けており前々年より始めていた旅仕事の取材が可能になっていたため九州を3か所ほど回ろうとして決めたその日がこの惨状だ。
人類の危機は昨今はウイルス一本のような状態だが近年日本においては自然の脅威がより深刻だ。(まあウイルスも自然の脅威なのだが)まさかその自然の脅威の中に自ら進んで突入することになるとは。
とは言えこのタイミングを外すとまたウイルスの蔓延で外出もままならぬことになるかもしれない。
そんな焦りの中一連の旅の予約をしたのが一週間前、当日のこの天候は予想できなかったが、とはいえ私は危ないとなれば避けて帰ることもできるわけで現地に住まわれている方々の苦難とは比べうるものではない
私が一旦待機した小倉は翌朝になっても大雨レベルで推移していたが予報をみると本来の目的地大分方面は芳しくないが一応電車は動いているし旅費をかけてここまで来ている以上仕事ネタ最低3件は見ていきたい。
前進(九州突入)か後退(東京へ戻りがてら途中でネタを拾う)かという2択を迫られた結果後退を選択。
だが後退したからと言って悪天候に見舞われないとう確証などないということを当時の私はほとんど考えてなかった。実際九州から岡山あたりまで西日本の川はすべて増水してまっ茶色だった。
とりあえず岡山で新幹線下車し鳥取へ向かったのは全くの思い付きだったが疫病禍にあって特急はゆったり宿は飛び込みでも余裕で空きあり。世の中の鬱な空気さえなければこんな自由で快適な旅はなかった。

そんな私に感染でも豪雨でもない第3の危機が降りかかっていた。

その危機とはは足元。

私は旅先でかなり歩く方で必須なのは足に合う靴だ。旅の数日前からその合う靴を連日はいておりその数日間東京でも雨が降っていた。旅に欠かせないその靴は完全に乾くことなくそのまま旅の足になった。さらに前日強行した雨中の門司港巡りでしこたま水を吸ってしまっていた。ホテルで湿った靴に新聞紙を詰めるなど対策は施しながらその時点では当然ながら靴よりも天候の不安が上回っていた。

翌日の鳥取行の特急の中漠然とした不安はは確実なものとなっていた。
すさまじい異臭、ほぼUNKのそれと同等。足元が緊急事態宣言である。私はこの時ほど国民皆マスク、ソーシャルディスタンスに感謝したことはない。
幸いなことに客も少なく隣に人が座ることもない。
鳥取につき定番の砂丘、途中のバスも人はほとんどいない、よかった。砂丘に着いて砂にまみれれば少しは緩和されるだろう。
だが鳥取砂丘も雨、砂丘の砂は湿っていた。結果普通に外で歩いているだけで異臭は鼻に届くまでになった。
もはや旅の目的は本来と異なったものになっていた。とにかく街に戻って新しい履物を手に入れよう。帰りのバスも人はほぼいなかった。
疫病禍の旅先で異臭騒ぎなど目もあてられない。鳥取駅前に普通の靴屋はないのか?なるべくなら人との距離を置いて買い物ができる環境を望む。
ソーシャルディスタンスの重要性をここまで身に染みたことはない。
散々探した末駅の反対側にIONが!地方に行ってこの大型量販店をありがたく思ったことはない。
この時私を救った約700円のサンダル、せっかくだから愛用させてもらったところ残念ながら半年ともたなかった。

疫病の旅3


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