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2023年10月の記事一覧

『マトリョーシカと消えた死体』ケイト・アトキンソン(著)青木純子(訳)

擦れっ枯らし達のドタバタミステリ群像劇。前作のようなシリアスは無く、ミステリもイマイチ。ただ、清濁併せ呑むというか、人間は所詮”濁”なんだよ、でも清くあろうとするんだよ、というメッセージが熱い。(登場人物全員罪人で笑った) お話は、前の車の急ブレーキに切れた男が、その運転手と車をバットで滅多打ちにし、見物人が荷物を投げつけ追っ払うという事件から始まる顛末を、被害者、見物人たち、複数の視点で語られる。 のだが、初っ端から脇道にそれる。見物人の生い立ち語りが始まり目を疑う。本

『ブロークン・エンジェル』リチャード・モーガン(著)田口俊樹 (訳)

前作はハードボイルド探偵SFだったが、今作は、革命軍、政府軍、大企業による火星人の宇宙船争奪戦。正体不明の裏切り者、放射線後遺症によるタイムリミットが事態をどんどん緊迫させてゆく。 果たしてコヴァッチは、所有権主張ブイを設置して大金を手にできるのか?  今回は革命戦争で、政府側傭兵として雇われたコヴァッチ。負傷して病院で療養していると、怪しげな男から未調査の火星人の遺跡(宇宙につながるゲートと、その先には超巨大宇宙船!)があると聞かされ、戦争をほっぽらかして確保に向かう。冒

『卒業生には向かない真実』ホリー・ジャクソン(著)服部京子(訳)

三部作完結! ホリー・ジャクソンよ、最後になんてことをするんだよ! 読書でこれほどの衝撃を受けたのは久々だよ。是非はともかく、凄いよ。 出だしから、ピップがPTSDと不眠で不正に眠剤を購入してたり、レイプ魔に名誉毀損で訴えられそうだったりと、前巻以上に鬱展開でしんどすぎる。 さらに今度はストーカーがピップを狙う。その手口を調べると、すでに犯人は服役中。またも冤罪で、警察の不手際がピップを襲う。 本書は三部作というより、上中下なので、前2作のキャラや関係を覚えてないと読書が

『ウィザード』ジョン・ヴァーリイ(著)小野田和子(訳)

コロニーのような超巨大宇宙船の中を旅する幻想SF。ヴァーリイはハードめのSF作家の印象だったので吃驚。 正直、ストーリーはイマイチだが、世界観はさすがヴァーリイ、思いつきもしなかった奇抜で美しい世界を堪能できる。 神が実在し、面会もできる世界がユニークだが、その神(ガイア)がかなり俗物なのが笑える。地球のTVに毒されてる(笑) 主人公二人にヒーローになれというが、それ用の冒険イベント(ドラゴンや巨大な宝石)が各地に用意されてたりする。 そのガイアが思いつきで作った動植物、不