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2019年8月の記事一覧

『大江戸スモーキングマン』大石まさる(著)

四国の小藩主のお気楽三男坊が藩の御用で江戸に出てきたはいいが!?煙を操る心優しき田舎侍が江戸で起こる様々な事件をどんどん解決!煙男の大江戸事件簿ここに開幕! ハードボイルドモノかと思いきや、大江戸ギャグファンタジー。初っ端から笑った。 Amazonの試し読みで、美麗なカラーページと冒頭のツカミが読めるので、まず試して欲しい。 試し読みで、実に見事なヒキが拝める(笑) テコ入れ要員、くのいちハルワちゃんが阿呆過ぎて可愛いし、斉天大聖の孫という猿が変に真面目で笑える。小聖は

『HELLO WORLD』野崎まど(著)

「お前は記録世界の住人だ」本好きで内気な男子高校生、直実は、現れた「未来の自分」ナオミから衝撃の事実を知らされる。世界の記録に刻まれていたのは未来の恋人・瑠璃の存在と、彼女が事故死する運命だった。悲劇の記録を書き換えるため、協力する二人。しかし、未来を変える代償は小さくなかった。世界が転回する衝撃。初めての感動があなたを襲う。新時代の到来を告げる青春恋愛SF小説。 藤井太洋の『ハロー・ワールド』を読んだので、同タイトルのこれも読んでみた。コンピューターSFを予想していたのに

『裏世界ピクニック2』宮澤伊織(著)

季節は夏。この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界で、女子大生の紙越空魚と仁科鳥子は互いの仲を深めながらも探検を続けていく。「きさらぎ駅」に迷い込んだ米軍の救出作戦、沖縄リゾートの裏側にある果ての浜辺の夜、猫の忍者に狙われるカラテ使いの後輩女子―そして、裏世界で姿を消した鳥子の大切な人、閏間冴月の謎。未知の怪異とこじれた人間模様が交錯する、大好評のネットロア×異世界探検サバイバル、第2弾! 主人公たちの百合具合が進行してきた。さらに小桜も可愛いので、読んでいてい楽しい。 裏世界

『厨師、怪しい鍋と旅をする』勝山海百合(著)

優れた厨師を輩出することで有名な斉家村に生まれた見習い料理人・斉鎌は、ある日見知らぬ男から不思議な鍋を借り受ける。しかしそれは煮炊きをしないでいると腹を空かして動物や人間を襲い始める、とんでもない鍋であった。鍋を返すまで故郷に帰ることは叶わない―流浪の身となった斉鎌は、鍋とむらに代々伝わる霊力を持った包丁を頼りに、戦場の飯炊き場、もののけの棲み家、名家の隠居所などで腕を揮いつつ、鍋の元の主を捜し歩くが…。若き厨師と怪しい鍋が旅の途上で出会う人々と不思議、そして料理。無類の面白

『シベリア民話集』斎藤君子 (編集, 翻訳)

多くの少数民族が伝統的生活様式を守って居住するシベリアは、口承文芸の一大宝庫である。海陸の様々な動物や魔物、シャーマンが活躍する物語をはじめ、動物女房の話や天界と地界の交流譚、雄大な創世神話など、シベリアの民話は素朴な語りのなかに人間の創造力の豊かさを感じさせる。17民族・41話を収録。わが国初の本格的紹介。 理不尽な話が好きなので手に取る。 理不尽度は日本昔ばなしと似たりよったりだった。 猿蟹合戦そっくりの話とか、つるが服を脱ぐと娘になり、泳いでるすきに服を隠して結婚す

『へびつかい座ホットライン』ジョン・ヴァーリイ

八世界シリーズの長編。時系列的にも短編の続き。 集大成の長編だけあり、短編で語られなかったインベーダーが登場するし、ホットラインの正体も判明するだけでも最高なのだが、短編以上にアイデアに溢れ、ストーリー自体も目まぐるしく、読者をガンガン揺さぶってくれるので、心底楽しい。 本書の特徴はなんといっても、主人公のありかた。主人公リロが殺されては蘇り(クローン&記憶バックアップ)をつづけ、挙げ句には3人に増え、それぞれのストーリーを歩き出す。読んでいて、全部リロなので若干混乱するの

壮大なエンタメバカSF『三体』劉慈欣(著)

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。数十年後。ナノテク素材の研究者・汪森(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体“科学フロンティア”への潜入を引き受けた彼を、科

傑作ハードSFラノベ!『ふわふわの泉』野尻抱介(著)

浜松西高校化学部部長・浅倉泉の人生の目標は“努力しないで生きること"。文化祭を前に泉は、ただ一人の部員・保科昶(あきら)とフラーレンを生成する化学実験を行っていた。そのとき学校を雷が直撃!実験失敗と落胆する泉の眼前には空気中に浮かぶシャボン玉のような粒子が生まれていた。ダイヤモンドより硬く空気より軽いその物質を泉は“ふわふわ"と名づけ、一儲けしようと考えるのだが・・・・・・伝説の星雲賞受賞作、ついに復刊 最高に楽しいハードSFラノベ! 空気より軽い粒子「ふわふわ」というロ

『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ(著)

化学物質の摂取過剰のために、出生率の低下と痴呆化が進化したニューヨーク。下水ポンプ施設の職員の視点から、あり得べき近未来社会を鮮やかに描いたローカス賞受賞の表題作、石油資源が枯渇して穀物と筋肉がエネルギー源となっている、『ねじまき少女』と同設定のアメリカを描きだすスタージョン賞受賞作「カロリーマン」ほか、全10篇を収録。数多の賞に輝いた『ねじまき少女』でSF界の寵児となった著者の第一短篇集。 素晴らしいディストピア短編集。 どのお話も、固有名詞や世界観の説明がなく、描写から

『星を継ぐもの』ジェイムズ・P・ホーガン(著)

月面調査隊が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。すぐさま地球の研究室で綿密な調査が行なわれた結果、驚くべき事実が明らかになった。死体はどの月面基地の所属でもなく、世界のいかなる人間でもない。ほとんど現代人と同じ生物であるにもかかわらず、5万年以上も前に死んでいたのだ。謎は謎を呼び、一つの疑問が解決すると、何倍もの疑問が生まれてくる。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見されたが……。 解説=鏡明 傑作ミステリーSF! 主人公は学者で、月で見つかった

『平安貴族の夢分析』倉本一宏(著)

夢のお告げを信じ、加持祈祷にすがったとされる平安貴族。しかし彼らの日記からは、用事をサボる口実とするなど、夢を巧みに利用した姿が浮かび上がる。彼らが夢にどう対処したのかを探り、平安貴族の精神世界に迫る。 『はじめに』で、フロイト、アーグラー、ユングらの夢分析や、脳生理学の話が綺麗にまとめられていた。 レム睡眠中にみる夢は、日常の莫大なデータから、不要なものを削除する作業との事。 それらを踏まえて、本編では、平安の貴人10人の夢が分析される。 当時の貴族(男)は日記(個人的

『IQ2』ジョー・イデ(著)

亡き兄の恋人だった女性から、高利貸しに追われる妹ジャニーンを助けてほしいと頼まれた探偵“IQ”。腐れ縁のドッドソンを伴い、彼女が住むラスベガスに赴くが、事態は予想よりも深刻だった。ジャニーンは中国系ギャングの顧客情報に手を出し、命を狙われていたのだ。待望のシリーズ第二作。解説/丸屋九兵衛 1巻のラスト、兄マーカスを轢き殺した車をスクラップ置き場で発見した場面から、物語が始まる。 開始6ページで、遺留品と状況から、ひき逃げが事故ではなく、狙って行われた殺人であることを突き止め

『臨機巧緻のディープ・ブルー』小川一水(著)

カメラマン志望の石塚旅人は、相棒のAI・ポーシャとともに宇宙戦艦に乗り組んだ。太陽系を知り尽くした人類がはるかな星系へ送り出す『知に飢えた艦隊』、ダーウィン艦隊だ。目的地のカラスウリ星系には水に覆われた青い星が発見される。しかし星のそばには未知の宇宙艦隊が待っていた。緊迫の対立の中、タビトは愛機のカメラを抱えて、謎の種族が待つ海へ飛び込んだ。新感覚ファーストコンタクト物語。 地球外知的生命体とのファーストコンタクトものだが、状況が面白い。 地球の調査艦隊がワープで未知の星系

『枕草子REMIX』酒井順子(著)

自覚たっぷりの意地悪、いっそ潔いほどの悪口、ミーハーで無邪気なモテ自慢、ミもフタもないブス嫌い、もう誰も止められない男非難…そしてぽろりと見せる女心。清少納言との架空対談あり、痛快な意訳あり、観光案内あり。 平安ガールフレンズが面白かったので手に取る。 枕草子の現代語訳かと思っていたが、清少納言はなぜブスや下衆、年寄に厳しいのか? などが楽しく考察されるエッセイだった。 女同士、男、キャリア、そういったテーマごとに、枕草子の色んな所から、清少納言の発言を切り取り、どう思っ