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届かぬ声

促す声に誰も耳を貸さず 届かぬ声は謀略に掻き消されていく やがて耳を貸さなかった者は悲痛な声を上げ 促した者は泣きながら耳をふさぐ

    • ソムリエがワインセラーから「今日」と言う名の時のワインを取り出す ソムリエは丁寧に封を開け私のワイングラスに時を注ぎ込む 私はいつもソムリエにお願いする 時の一雫(ひとしずく)、一瞬たりともこぼさぬように ワイングラスに時が満たされると私はゆっくりと飲み始める 一口一口、時の芳醇な味を楽しみながら 時のワインはその日によって味が違う 時に甘く、時にほろ苦い 一昨日は妻と、昨日は親友と一緒に時のワインを楽しんだ お互いの時のワインを片手に同じ時間を共有する至福

      • 終わりと始まり

        深夜零時 「今日」という世界が終わり 「今日」という世界が始まる 僕は世界の終わりと始まりを見届け眠りにつく さっきまで「今日」と呼ばれていた世界は 「昨日」という世界に形を変える さっきまで「明日」と呼ばれていた世界は 「今日」という世界に形を変える そしてまた新しい「明日」という未知の世界が生まれる 新しい「今日」の朝を迎え僕は目覚める 僕は新しい「今日」という世界を生きる 「今日」という世界が終わり 「今日」という世界が始まるまで 悔いの残らないように精一

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