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ホメオスタシス

この間飛行機に乗る機会があって、ぼんやり窓から外を眺めていたときに、ふと思ったこと。
この大気の中にあるCO2やメタン、N2Oといった化学物質が、その物質の寿命の間じゅう熱を蓄えてくれているお陰で人間にとって「ちょうどいい温度」で保たれていたはずが、大気中のCO2の濃度がほんの少し上がっただけで(400→500ppm。ppmはご存知の通り100万分の1)、人間の生活を脅かすものとして「敵視」されているんだよな。。と。
個人的には暑いのは苦手ではありますが、CO2やメタンの立場になって考えると、人間とはなんと適応力のない生き物なんだよ、と悪態の一つでもつきたくなるはず(笑)。。

生命の神秘の中で個人的に好きなものの一つに「ホメオスタシス」(恒常性維持機能)という機能があります。環境が変わり続ける中で生き残ってきた生命に必ず備わっていて、細胞単位から身体単位までマルチスケールで外部環境の変化をいなすために内部を一定に保とうとする機能。
暑い時には汗をかき、寒い時には毛穴を閉めて体温が逃げないようにするのも、血糖値があがったらインスリンが分泌されるのも、はたまた怖い音楽がかかると不安になって逃げたくなるのも、いずれも元の状態を保とうとするホメオスタシス機能のおかげ。
僕らのアニキ、木村東吉さんが彼のポッドキャストの中で、
https://open.spotify.com/episode/7HdLyFRs0qLH2tGcqoc0Pb
フィジカル・トレーニングの世界でも、ホメオスタシス機能を理解した上で運動強度を変えると、より効果的に鍛えることができるとおっしゃっていました。具体的には、同じ内容のトレーニングを約8週間続けると、筋肉や心肺機能はそのトレーニングに対しての耐性を持つ形に組織が生まれ変わってしまい、それ以上はいくら頑張っても効果がなくなるため、それ以上を望むならそのタイミングで強度を上げるなり、新たな刺激を与えねばいけないそう。この8週間かけて身体が自律的に順応していく「恒常性」をポジティブに利用して、メンタル状態を整えていく「マインドフルネスプログラム」(MBSR):
Mindfulness Programs
をMITメディカルが開発していますし、福岡伸一先生が唱える「動的平衡」のように、生命は一定期間同じ環境の中にいると、それに適応した形に(比喩的に言えば)生まれ変わるんだと理解しています。
第5回 京都大学 − 稲盛財団合同京都賞シンポジウム「生命とは何か?それは動的平衡」福岡 伸一 2018年7月22日
昨日もあるメンバーたちと話をしていて、会社の中の不可思議な制度に「変だ!」と思う組織のNew Comerに対し、旧人は「変だ!」と感じない事例があがりましたが、これも「ホメオスタシス」のなせる技、旧人は不可思議な制度、という「環境に順応した生命に生まれ変わった」んだろうなと。。

逆説的に言えば、人間が「外部環境の変化」を嫌うのは、ホメオスタシスを起動し「生まれ変わる」ために身体の多様な組織に負担をかけることを嫌うためであり、避けられるのであれば外部環境の変化はない方がいい、というルールは遺伝子レベルに組み込まれているに違いありません。だから、「変わろうとしない上司」「変わろうとしない部下」、そして「変わろうとしない組織」「変わろうとしない社会」は、「ホメオスタシス機能の起動」の機会を極力減らそうとする生命固有のもの、特に荒れくるような環境変化を生き抜いてきたヒト族だからこその特質。

だからこそ「自己決定させて、やる気にさせる」、内発的動機づけが、眠り続けようとするホメオスタシス・スイッチを起動させる要だと理解しています。
と一丁前のことを言いつつ、今晩こそは夜寝るときにエアコンを入れるか・・とホメオスタシス・スイッチをOFFにすることを決めた朝でした(笑)。
みなさんも無理せず快適な環境で、素敵な一日を!


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