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なぜ小さいスピーカーで重低音が出せるのか (1)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。


今回から新しい対談がスタートする。

コデラはAV Watchで製品レビューの連載をやって長いのだが、昨年あたりからオーディオ製品のレビュー数がビジュアル製品の数を抜き始めており、オーディオに大きな技術革新の波が来ているのを感じる。

その中で特に感じるのが、小型スピーカー製品の音の変化だ。スピーカー径が10cmもないようなスピーカーで、かなり量感のある低音が出せるようになってきている。これは耳を塞がない系のイヤホンも同様で、1cmもないようなドライバを使って、耳奥に突っ込むことなく迫力のある低音を出すことに成功している製品がいくつもある。

こうした傾向には、何か秘密があるのではないか。そう思って、以前から懇意にさせていただいているソニー株式会社の音響デバイス技術開発部 関 英木さんにお話を伺うことにした。ちょうどソニーから重低音重視のスピーカー、ULTシリーズが出たばかりということで、ULTの商品企画を担当した、滝本 菜月さんにもご同席いただいた。

昨今大幅に進化を遂げた低音の謎に、迫っていく。


小寺:最近小口径なのに低音が十分出るというスピーカーが、御社だけでなくいろんなメーカーから出てきています。

以前のオーディオの常識からすると、10cm程度のスピーカーってフルレンジではあるものの、重低音というほどでもなかったですよね? 僕もエンクロージャを自作してバックロードホーンとかも作ってみましたけど、出てないものは出てない。

どうも昨今のオーディオを語るには、僕の知識が古すぎるようなんです。そこで最新のスピーカー技術の話をお伺いしたいと思います。

オーディオ的に言うと、人間の可聴音域は20Hzから20kHzとされていて、スピーカーもこの領域をフラットに出すということが永らく求められてきました。ただ昨今のスピーカーのスペックを見ると、どうも下のほうは20Hzまでにあんまりこだわらなくなってきているような気がします。このあたりはいかがででしょう?

関:確かに可聴音域というのは20Hzから上ということになっていて、それ以下は振動という形でしか人間は聴く事ができません。確かにおっしゃるように、音楽を構成する「楽音」の再現として、本当に20Hzまでが必要なのかと、そう考えるメーカーさんもあると思います。

ただ我々としては、お客様がどんなソースを再生するのかわからないので、一応ちゃんと20Hzまで再生できるというところには、こだわっていきたいと思っています。

小寺:昨今御社ではULTという新シリーズを立ち上げました。これは重低音を重視したシリーズですよね? 現代において、求められる低音の姿って、低音そのものよりも、バスドラムのアタック感とか、空気圧みたいなものなのかなという気もするんですが。

関:ULTシリーズでは、ULT1と2という2つのモードをご用意しています。ULT1は、これまでよりももっと深い低音というんですかね。多くの方にご満足頂けるサウンドというものを、楽しめるような音設定になっています。ULT2というモードになると、圧力感を重視してるような低域感、いわゆる空気感のほうを重視してる低域感になっています。

ソニー株式会社 音響デバイス技術開発部、関 英木(せき ひでき)さん

で、2つを設けているというのは、お客様にとってどっちが気持ちよく聞こえるかというのは、聞かれる楽曲ですとか、お客様の嗜好によって選べるようにしたほうがいいんじゃないか、というのが我々のメッセージですね。コンセプトは企画の滝本のほうが話せることなんですけれども、我々の製品としては、圧力感を感じるULT2のモードがデフォルトになっています。

そこはおっしゃるように、まずは圧力感を好まれるお客さんが、我々がいま狙っているターゲットのひとつになる、ということが言えるかと思います。

小寺:なるほど。ULT Field 1はULTモードが1個しかないんですけど、あの1個のモードは、ULT FIELD 7で言うところも、ULT2なわけですか。

関:FIELD 1はね、あれはなかなか難しくて、ULT1でもULT2でもないんですよ。

小寺:あれ、そうなんですか。

関:あれは欲張りでですね、両方いいとこ取りをしようという感じなんですよね。なので、ある曲をかけると、わりとローエンドが伸びた感じになりますし、一方で音量をマックスにすると、今までのモデルより圧力感のある低域というのができるようになってるんで、どちらかというと、1.5のちょっと1.8寄りか?みたいな、そんな感じじゃないでしょうか。

小寺:あ、そのぐらいのバランスなんですね(笑)。なるほどね。

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