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PTA広報紙を電子化したった

■はじめに

新学期がスタートし、PTAの役員改正も行われたことだろう。だいたいどこの学校も、5月のGW前に新役員が選出され、GW開けにPTA総会という流れだと思う。運良くか運悪くか、PTA会長や広報委員長に任命された方もいらっしゃるのではないだろうか。

このコロナ禍の中で、学教行事もPTA活動も制限される中、PTA広報紙をどうやって発行していくかは、新しい課題となった。なにせPTA予算のうち、数十万円が紙の広報紙制作に吹っ飛ぶ。保護者の収入も下がっていく中、これらの高額な活動をいつまで維持し続けていくのか、もうそろそろ真剣に考えていくべき時が来たのではないかと思われる。

本コンテンツは、サイボウズ式の人気コラム「コデラ総研 家庭部」のうち、PTA広報紙の電子化に関わる話を加筆、修正し、1つにまとめたものである。

広報紙の電子版は、執筆開始時である2017年度はまだ実証実験段階であったが、翌年より正式運営となり、現在まで4年の実績を積み重ねてきた。ワークフローも確立し、筆者がすでにいなくても問題なく回り続けている。

広報紙を電子化すれば、それまで数十万円かかっていた費用が、ほぼ1万円程度に圧縮できる。また委員が集まって紙を切り貼りして原稿を作ると言った作業も不要になり、三密が避けられるというメリットもある。

ここで電子化に至るいきさつや過程、手法などについて、まとめておくことにする。どなたかの参考になれば幸いだ。

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1. 始めに、問題ありき

PTA活動の中には、未だに昭和時代の慣習を引きずっている部分も多い。それを変えようとする人もいるのだが、役員の多くは1、2年の腰掛けなので、何も自分たちのときにそんな苦労して……という思いがあるのだろうか、「今まで通りでいいんじゃないの?」という消極的な意見に押されて、進まないケースが多いように見受けられる。

筆者は娘の小学校、中学校と広報委員会/広報部の長をかれこれ5年経験してきたが、PTA広報紙ほど、一体何のためにやっているのかよく分からない事業もないと思っている。学校は学校で、たくさんのお知らせやお便りで子供たちの様子を知らせてくる。PTAも本部から「PTAだより」が出され、各部からはその活動報告のお便りが発行されてくる。そんな中、「PTA広報紙」は一体何を伝えればいいのか。存在が非常に曖昧なのだ。

またせっかくカラー印刷できれいに作った広報紙も、実際に子供のランドセルの底でしわくちゃになったまま地層のように積み重なり、親に届いてない。さらに届いたとしても読まれていないようでは、一体何のために高いお金を払って作っているのか。

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高いお金、と言ったが、実際どれぐらいの予算を付けて制作しているのかは、PTAによって様々だろう。カラーで数ページにわたる印刷物を数百部オーダーで作るのは、業者に任せないとまず無理だ。従って多くの学校では、地元の印刷業者やローカル出版社などに外注しているはずだ。その外注度合い、つまり制作をどれぐらい外部事業者へ依存しているかで、金額が変わってくる。

小学校の広報予算は10数万円で、それでも外部の事業者を使うのだから、そんなもんだろうと思っていた。しかし中学校の広報予算を聞いて驚いた。刷り数は1.5倍にしかなっていないが、予算は2.5倍の40万円も付いている。PTAの年間予算のうち実に1/6が、広報紙に消えているのだ。まずこの金額が、問題だと思った。

■じり貧化するPTA予算

PTA活動費は、ほとんどが会費である。そのほかにも、地域からの助成金や資源回収による収益もあるが、これらは年々減る一方だ。加えて少子化により子供たちも減っているので、当然会費収入も下がる。だがPTA活動は、人数は減ってもやることは変わらないので、必要経費は大して変わらない。

多くのPTAでは、広報紙発行予算を固定費として見込んでいることだろう。ここが手つかずなのは、印刷物制作に関してはほとんどの人がよく分からないため、まるで聖域のように扱われているからだ。だがここを削減できれば、親や子供の尻を叩いて資源回収やベルマーク集めをもっとがんばらせるより、楽に予算の余裕が作れるはずだ。

では具体的にどうするのか。いっそ広報紙発行をやめるというのも1つの手だろう。今後10年ぐらいかけて、PTA活動は徐々に縮小を余儀なくされていくだろうことは、想像に難くない。そこでまず大鉈をふるわれるのは、広報紙発行だろうと思う。

だが現時点では、まだそこに着手する段階ではない。予算をかけずに、現在の紙の広報紙出版に変わる方法を探さざるを得ない。

幸いにして筆者はネットのモノカキであり、自分でもePubを作ってメールマガジンを発行している。テキストと写真の電子化に関しては、ビジネスベースできちんとやれているという自負がある。

予算削減の方法論として、PTA広報紙の電子出版化は、ありなんじゃないか。そういうところからこの話はスタートした。

2. 方法論を探る

広報紙を電子化すれば、外部事業者への支払いがなくなる。一方でどのような手段を使うかによっては、別の費用がかかることになる。当然その予算は、現状の予算よりも低くなければ意味がない。

加えて別のハードルもある。その電子化の方法に、保護者がついて来られるのか、という課題だ。これまで一般の保護者でも広報紙が作れていたのは、原稿制作がすべて紙ベースの「切った貼った」だったからである。誰でも子供時代には、壁新聞を作らされた経験ぐらいあるだろう。決められたスペースに文字を流し込み、写真を貼り付けるわけだ。

だが電子化となれば、「最初は紙」というわけにはいかない。何らかのデジタルデバイスを使わなければならないわけだが、今の保護者には、パソコンのスキルは求められない。

もちろん、今も仕事でパソコンを使っている人なら大丈夫だろうが、それは決して多くはない。その人のところに負担が集中するという方法論は避けなければならない。

代わって今もっとも普及しているデジタルデバイスは、スマートフォンだ。引き続きフィーチャーフォンを使い続けている保護者もいるが、スマートフォンも持っているという人がほとんどである。

広報紙制作作業で、一部はパソコンを使うことはあるかもしれないが、基本的にはスマートフォンでできる方法を探す必要があった。

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