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「ゲームで生きていく」の研究 (第4回)

岡崎女子大学 子ども教育学部の花田経子先生にお話を伺う最終回。

この4月から小中学校でギガスクール構想がスタートした。実務で動いているのに「構想」もないんじゃないかと思うのだが、実施したら「ギガスクール」でいいのだろうか。

まあそんなわけで子供とコンピュータ、あるいはITというのは義務教育内に織り込まれたわけだが、その下、幼児教育においてはコンピュータはどのような扱いになっているのだろうか。

実際に幼児教育へ学生を送り出す先生の立場から、現場の声を聞いた。

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小寺:この4月からギガスクール構想が前倒しになって始まるところは始まるんですけど、それによって、子供がコンピューター的なものを扱う、という研究は進みそうですけど、ゲームはあんまりそこには関係なさそうですね。

花田:やっぱり、ほとんどの学校でゲームコンテンツを例えば“許可”するみたいなことはされてないんじゃないかなと思うんですよね。ゲームはギガスクールで配布されるようなタブレットやパソコンでは使えない、というのが前提じゃないかなと。もし仮に使えたとしても、例えばキーボードの練習をするゲームとか、そんな程度だと思うんです。

小寺:何かを覚えるクイズ的な、教材のようなのはありえますかね。

花田:ありえるとは思います。漢字の部首当てクイズみたいなね。私はわりとスクラッチでそういうのを学生に作らせてるんですけど。「九九の計算を練習するプログラムを作れ」とか。

で、それぞれにちょっとゲーミフィケーションの概念をちゃんと入れて、ゲームとして楽しめる内容にしなさい、みたいなのをすると、「お姫さまを助けにいこう」みたいなのを作って。典型的な(笑)。敵が5問問題を出してくる、みたいな、ベタなね。もうちょっとひねろよ、と思うんですけど、まあそれはいいか、と思って(笑)。

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岡崎女子大学 子ども教育学部の花田経子先生

小寺:(笑)。

花田:教育現場って、ゲームは遊び、遊びは悪い、みたいなイメージがすごく強いんです。そのくせ幼児教育は遊びなんですよ。

小寺:まあ、当然そうなりますよね。

花田:遊びの中で学びが生まれる、って。よく遊ぶ、ということが前提ですと。

5年前に、ある教員に言われてすごくびっくりしたのが、幼児教育の世界では直接体験/間接体験という言い方をするんですけど、なぜ遊びを重視するかというと、「そこに直接体験があるから」というんですね。

例えば、泥遊びをします、というと、泥を実際に触った感触が得られるし、どれだけ水を加えたら泥だんごができるか、ということを理解できるし、泥だんごをきれいに丸くしたり、場合によってはつやつやになるまで磨いたり、乾燥させたり、というような、そういうことを考えなさいね、みたいなところをやるんですよね。

で、実際に泥を触ると泥はどんな感触かとか、泥は冷たいのか温かいのか、泥だんごは重たいのか、ということが分かる。これは直接体験しているので、直接体験というふうに言うんですけど。

そのある先生は、保育実習とかの指導担当の先生で、長年現場にずっといらっしゃった方なので、ベテランの人なんですけど。最初に言われたのは、「専門だけど、ほんとうに言い方が変だったらごめんね」と断られた上で、「最近、ITを使えだのなんだのって現場に言ってくるけれども、でもさ、パソコンを使ったら直接体験にならなくない?」って言われちゃったんですよね。それが現場の本音なんだな、と。

小寺:うーん、まあ確かにね。物理的にさわれるものじゃない、という意味では違うかもしれないけどな。

花田:においもないしね。

小寺:でも、ゲームというか、仮想空間だけでしか実現できないものがあったときに、それはどう考えればいいんですかね?

花田:そう。だから、結局そこなんですよ。ゲームでしか実現できない世界もあるし。

私がよく学生に言ってるのは、アナログの良さというのをデジタルは否定するつもりはないのよ、と。ICTというのは、アナログの良さを否定することはしないものなんだよ、それがいちばん理想だよと。

例えば、紙で描かせた紙芝居をスキャナでデジタルデータとして取り込ませて、音声を引き込んで動画にする、ということをやってるんですよ。あるいは、ストップモーションみたいに、ちょっとずつ作った絵を動かして、それを連続再生させるとか、そういうのも授業で取り入れてるんですけど。

動いて生きてるみたいに見えるでしょう、尺取り虫がこうやって動いてるように見えるじゃん、と。そういうふうに、デジタルにすることで新たな面白さが出てくる、ということをちゃんと理解した上で、どっちも大事、というふうに教育するのがあなたたちのこれからの教育だよ、保育だよ、というふうに言ってるんだけど。

結局これが、現場サイドではなかなかまだ切り替わってない、というところに問題を感じるんですよね。

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