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「リモート授業」その光と影(第2回)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。

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前回から、大阪工業大学 知的財産学部 准教授の関堂幸輔先生に、リモート授業の実態についてお話を伺っている。

2020年度は試行錯誤の年だったと思うが、2021年度は文科省が対面授業にこだわったことから、現場では大混乱が起きているという。

・文科省が「コロナ禍でも対面授業」にこだわるせいで、大学で「大混乱」が起きていた(現代ビジネス)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83003

これはおそらく、「高い授業料を払ったのに子供が家にいる」といった保護者の不満が文科省や文科大臣に直接ぶつけられた結果、現場を顧みない指示が出されるという、現場にとっては地獄絵図のような構造になっているものと思われる。

一方で、授業がオンラインになるということは、一般人も大学の講義を気軽に聴講できるというメリットがある。関堂先生の知財法の授業は、日本でもトップレベルの講義だと思うが、いくら聴講が可能だからといって宮崎県在住の筆者が大阪まで毎週講義を聞きに行けるかというと、そんなことは不可能だ。だがオンラインでは可能になる。

大学の学びをオープンにするという意味では、オンライン授業には隠れた意義がある。一方で学生や親からすれば、大学というハードウェアリソースが全然使えないという点で不満は残る。

「リモート授業」その光と影(第2回 全5回予定)

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小寺:先生側のモチベーションもいかがですか。やっぱり自宅で収録するということになりますよね。今、先生は自宅ですか?

関堂:これは自宅なんですけれども、自宅で収録するほうが逆に落ち着けるというか。もし、これを職場でやるとしたら、私は幸い研究室が割り当てられてますので、研究室で収録しようか、ということもあるかと思うんですが。

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・自宅からZoomで取材を受ける関堂幸輔先生

実はこの一年ぐらいかけて、私の大阪工業大学の研究室の隣の建物が、解体工事をしてまして。

小寺:おお。建て替えですか。

関堂:振動と騒音がすごくて、ものすごくうるさかったんですよね。こんな状況じゃ、それこそ研究室では仕事ができない、というぐらいうるさかったもんですから、だったらいっそのこと自宅でやったほうが落ち着ける、ということで。

幸い、自宅も個室というか、書斎的なところがあるので、あとは呼び鈴の音をちょっと止めておいて、家族にお願いしてあんまり音を出さないようにしてもらう、ということをやっておけば、比較的やりやすかった。

ただ精神的な意味では、誰に向かって話してるか、というのもいまいち分からないというところもあるので、その点ではやりづらさというのはあったんですね。でもだんだん慣れてくると「こんな調子かな」というふうにはなってきたので、ある意味いい勉強にはなりましたけれども。

小寺:でも生徒がいないままで、いわゆる無観客試合みたいなことを45分とかやるわけじゃないですか。それって今までの生徒ありきの授業と、ちょっと喋り口調とか内容とかが違ってきたり、というのはあるんですか。

関堂:はい、その通りです。僕はわりと昔から、授業ってある意味ライブパフォーマンスみたいなものだと思ってまして、ミュージシャンがコンサートとかライブをやるのと同じような、こちらがいわゆるコンテンツを提供するんだけれども、何かしらお互いに行きかうエネルギーみたいなものがあってやる、と。その意味では、僕は大学の授業だってある意味ライブパフォーマンスだな、というのは昔からずっと感じてはいたんですよね。

ただ今回の場合は、ある意味スタジオレコーディングみたいな形でやって、それを観てもらう、という形にしてるわけですので、やっぱりちょっと違います。ノリというかですね、どうしても変わってきちゃうのはありますね。

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