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GLOCOM豊福先生に聴く、「どうなる? AIと教育」(5)

毎月専門家のゲストをお招きして、旬なネタ、トレンドのお話を伺います。


国際大学 グローバル・コミュニケーション・センター准教授・主幹研究員の豊福晋平先生との対談も、今回で最終回。

先生が最近手がけられているのが、「デジタル・シティズンシップ」だ。これまでネットリテラシー教育は主に青少年に対して行なわれてきたが、もうネット利用のレベルが10年前とは格段に違っており、次のステップに移行する時期である。

だがそこでネックになるのが、大人の古いリテラシーだ。ここもブラッシュアップしていかないと、社会全体が古い考えのままでは、子供にだけ新しい事を教えても、モノにならない。

それは地方も中央も関係なく、やれるところからやっていかなければならない課題である。


小寺:最後なんですけど。先生は総務省のICT活用のためのリテラシー向上に関する検討会の委員をやってらっしゃって、この間、報告書が――あれはロードマップ案かな。

豊福:ロードマップは確定しました。

小寺:あ、確定したんですね。その話を伺いたいんですけど。これは全体的にはICTリテラシーの向上の話なんですけど、AIに関する部分もあってですね。そこだけちょっと取り出してお話をするのもちょっと難しいのかもしれないですけど、AI活用は今後どういうふうな方向性でやっていきましょう、というふうになったのか、まとめていただけると助かるんですが。

豊福:これはね、検討会の本当に終盤で出てきた話なんです。

小寺:あ、そうなんですね。

豊福:だから、けっこうね……なんだろう、委員の中で検討する余地はあんまりなかった気がする。たぶんね、今年そのへんの深掘りをしようってことになると思うんですよ。

小寺:なるほどね。じゃあ、今、とりあえずは課題整理したぐらいのところまで、というところですかね。

豊福:うん、会議体自体はね去年の秋口から始まってるんだけど、このAIの話が入ってきたのって、確か2月とか3月ギリギリなんですよ。

小寺:そうですよね、AIが話題になり出したのって、今年になってからですもんね。

豊福:なので、ちょっとそこはまだ、委員としてはね、申し上げられるところはあんまりないです。

小寺:わかりました。この検討会はすでに終わってるんですよね。

豊福:この検討会はもう終わりました。ただ、この検討会自体は、そもそも子供にけっこう特化して、総務省がやっていた安全教育だったり、消費者系の教育というのを、全世代型にもう1回立ち返って再設計しようって発想だったんですね。

僕的には大きかったのは、今までは情報モラル的な、わりと抑制的、禁止的、安全教育的なやり方が強調されてたものを、デジタル・シティズンシップが必要だ、と総務省が言い出して。僕らじゃなく向こうが(苦笑)。で、それ故に、子供だけじゃなくて、大人にもデジタル・シティズンシップが必要だよね、と。

で、それはAIの話にも繋がっていて、今回お話ししてきた文科省の指針というのは、授業の中でAIをどう使うかという流れになってるから、AIのリテラシーって子供に教えればいい、という話になってるんですよ。

小寺:うんうん。

豊福:だけど、一番足りてないのは実は大人なんですよ、これって。

小寺:ま、教える側に想定されてますもんね。だけど実際に使っている人は少ない。

豊福:そう。これはさっきの話に戻っていくんだけど、要するに先生が火の使い方を知らないのに、子供に火の使い方を教えらんないでしょ、と言ってる。その流れで、デジタル・シティズンシップ自体も、子供に情報モラルを教えなきゃ、という話はいいけどさ、大人だってわかってねえだろ、って話ですよね。そのへんが、AIの議論と相半ばというか、ちゃんと合致してるところもあって。総務省はけっこうね、次に出してくる話は面白いものになると思います。

小寺:なるほどね。AIを先生が学ばなきゃいけないんだけど、要するにそれはさっきの問題にループをするんですけど、先生の負担が大きすぎて、他のことを勉強する時間がねえじゃねえかよっていう。

その中で、授業の中でどのぐらい使うのかわからないAIを勉強してくれ、というのも、やっぱり酷な話なんじゃねえのか、というところがあってですね。

豊福:ほとんどの先生にとってみると、AIは「なんか議論してるらしいけど、俺には関係ないもんね」って思ってると思いますよ。

小寺:うん、そうなんですよね。

豊福:それはね、情報モラルとかデジタル・シティズンシップの話も一緒で。先生方にとってみると、当面自分の授業の範疇に入ってこない話は、アウトオブサイトなんですよ。全くね、興味ないの。

小寺:興味ないっていうか、やってる暇ないっすもんね。

豊福:そう。だけど最初にもお話しした通り、公教育の仕掛け自体がメディアの影響やテクノロジーの影響を受けて変わりつつある、という話と、授業のスタイル自体がいま転換しようとしているという状況を考えると、あんまり「俺関係ないもんね」って言ってると足元をすくわれるよって話なんですよ。

小寺:うん。

豊福:そろそろこっち向いて真面目にやってほしいけど、まあ、それはけっこう時間かかるかもね、ということですね。

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