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【映画感想】モンキーキング

 タイトルの『モンキーキング』は孫悟空の英訳ということで、日本語のタイトルをつけるとするなら『孫悟空』となるのだろうか。内容としては西遊記の前日譚であり、孫悟空がお釈迦様に幽閉されるまでの顛末を描く。(ぼくはこれまで西遊記にあまり触れてこなかったので、エンディングまで見て理解したが…)。3Dアニメとしての映像は美麗で、迫力もあって純粋に格好良い。突然2Dアニメが挟み込まれるのは、ぼくが大好きなアニメ『FLCL』で、急にコミック調の演出となったことを思い起こさせた。
 しかし、全編を通して何とも薄味風味。確かにテンポは良く、爽快感のあるストーリーではある。終盤に一応山場といえるところもあるのだが、いまいち盛り上がりに欠けるし、オチもある程度は読めてしまっているからドキドキ感もない。そして何よりキャラクターに魅力が感じられなかった。主人公である孫悟空、ヒロインのリン、敵役である龍王など多くのキャラクターが登場するのだが、どれも深堀りが十分とは言えず、感情移入ができなかった。(孫悟空はいつ分身の術を覚えたり、筋斗雲を入手したのか?など細かい点も気になってしまった)もっとも、本作は分かりやすいアクションとギャグを味わうのが正統な楽しみかもしれないし、このあたりの感じ方は人に因るだろう。
 特に気になったのが、ラスボスである龍王は突然始まったミュージカルの後、何故世界を滅ぼそうとしたのか。孫悟空には大切な如意棒を奪われた恨みはあるだろうし、自分のしっとりお肌が故の生きにくい世界への嘆きが唄われてはいたものの、世界を滅ぼす理由としては弱い。終盤の盛り上がりに置いていかれたような気分になった。
 そんな本作でも褒めるところはあって、龍王の子分二人の掛け合いだ。ギャグとしてみると非常に面白い。
『でも妖怪はギターを弾けない』や『照明が当ててあるだけですね?』は噴き出して笑ってしまったし、こちら方面に特化した作品作りだったら、もっと好きになってたかもしれない。孤独な幼少期を過ごした悟空が、素直に仲間が欲しいと言えずに暴れるしかない哀しみや、リンの悟空と村人の間で揺れる葛藤など、描きたいことは分かる。だがそれらの表現が十分だったとは言い難い。
 ところで、本作はどの層をターゲットにしているのかが気になった。子供向けではないだろうし、大人向けか?と言われても違うような…。なんとなく曖昧なマーケティングだった気がしてならない。




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