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31年間のプロレスラー人生のターニングポイント。ノアのTシャツを着てやっているのは覚悟の証!

6月12日、さいたまスーパーアリーナで開催される『サイバーファイトフェスティバル2022』。サイバーファイト傘下4団体が集結する一大イベントのメインイベントでプロレスリング・ノアのGHCヘビー級王者・潮崎豪に挑戦するのが新日本プロレスの小島聡だ。新日本のIWGPヘビー級、全日本プロレスの三冠ヘビー級のベルトを巻き、一時代を築いた小島にとってメジャー3大シングル王座制覇のチャンスでもある。

 偉業達成はもちろんだが、今現在の小島はあえて新日本の看板を背負わず、ノアとの対抗戦という感覚でもなく、あくまでも51歳、キャリア31年の一プロレスラーとして潮崎との大一番に臨もうとしている。その胸中は――。(聞き手/小佐野景浩)

――4・30両国大会で丸藤正道のパートナーの“ノア史上最大のⅩ”として登場したのは、正直ビックリしました。
小島 これはね、細かいことはあえて言わないですけど、ノアさん側との話し合いもあったり、自分の意見もあったりという中で、いろいろ紆余曲折もありながら少しずつ話が進んでいって、結果的に4・30のⅩになったという感じですかね。

――ここ何年間かの新日本プロレスの流れは若い選手が中心で、小島さんたちの世代にはなかなかチャンスが巡ってこないという現実がありますよね。そういう中で想うところがあったのかなと。

小島 ひとつの興行に出られる人数というのは決まっているというのもありますよね。所属選手がいて、その他に外国人選手がいて、フリーで特別に参加する選手がいてという流れの中で、ここ数年は第三世代と呼ばれている選手の出番が少しずつ減っていってるなと思っていましたけど、でもそれがある意味で自然な流れなのかなと正直思っていたんですね。だからそこに対する不満もなかったし、自分たちにできる役割があると思っていたし。それが例えば若手のヤングライオンの壁だったりとか、そこに今の自分のポジションがあると思ってやっていましたので、不満はなかったですよね。

――でも、そこで「今の主役は若い選手だから」と適当にやっていたら、今回のようなチャンスは生まれなかったですよね。いつでも勝負できるコンディションを作り、戦いへのモチベーションを持ち続けてきたからだと感じます。

小島 それはもう、プロレスラーを名乗っている以上、体を鍛えるのは当然だし、すべてにおいて常に「いつ、どんな試合を組まれてもいいよ!」というコンディションだけは作っていなければいけないと思ってやっていますよ。試合があろうがなかろうが、プロレスラーとしてずっと同じ世界観を持っていたつもりなので、急にそういう話があっても、何の心配もなかったですね。


――両国にXとして登場して、メイン終了後には潮崎豪選手に「GHCチャンピオン、次のチャレンジャーは俺だ!」と言い放ちましたが、自信を持っての挑戦宣言だったんですね。
小島 そうですね。ノアという団体には何年かに1回上がっていましたけれども、その都度、GHCのチャンピオンに挑戦したりとか、いろんなことをやってきた中で、また今回、自分の中で「今、やるしかねぇだろ!」っていう感触があったんですよ。

――いろんなものが合致したというか…。

小島 自分のプロレスラーとしてのターニングポイントっていうのがいろんな時にあったと思うんです。例えば新日本プロレスを1回辞めて全日本プロレスに移籍した2002年だったりとか、新日本に戻ってきた2010年だったりとか。何か、それに近い大きなターニングポイントのような気がしたんですよね、感触として。

――きっと、それを掴める人と掴めない人がいて、自分のターニングポイントを見極めることができる人がチャンスを掴んで上に行けるんでしょうね。

小島 そうですね。プロレスラーは長くやっていけば、必ずどこかにチャンスが落ちてるんですよね。その落ちてるチャンスを必ずものにできるかといったら、決してそうではないし、ホントに難しい世界なので。そういう意味では、自分自身がまたこういうチャンスに恵まれたことを嬉しく思うし、運が良かったなとも思うし、でも運が良かっただけでは済まないっていうのがあるので、だからこそ常に試合に出られる体だけは作らなければと思って、ここ数年やっていましたね。

――5・4後楽園ホールの6人タッグでの潮崎との初の前哨戦をラリアットで制した後の「試合と体は全盛期じゃないよ、きっと。だけど俺の気持ち、ハートは今が一番全盛期だ」という言葉が印象的でした。51歳、キャリア31年の心意気というか…。

小島 年齢ばっかり言われるのも嫌なんですけど、それとも向き合わなきゃいけないなっていうのが凄くあって、だからこそ「今の年齢で、これだけやれるんだよ」というのを見せたいですよね。年齢とともに衰えがあるのは人間だから当たり前であって、でもそこで諦めてしまうのか、そこから努力してまた違う何かを掴むのかは自分次第だと思うんですよね。

――小島聡というプロレスラーは、いい意味で変わらないですよね。

小島 いい意味で(笑)。自分自身では様々なところが変わってきて、それを必死に繕っていきながら、全盛期と言われた2005年あたりですかね、その時をキープしようと思って必死になっていろんなことをやっている最中ですね、今は。「変わらないね」って言われることは励みになりますし、あとは武藤(敬司)さんという存在が視界に入っていたというのも、今回の頑張ろうと思った要因でもあるんです。

――ノアに関して言えば、今のノアの若い選手が触れたことがない三沢光晴と04年7・18両国で対戦しているんですよね。小島選手が全日本所属、三沢さんは4年ぶりの全日本マット登場というシチュエーションで、小島さんはエプロンから場外へのタイガー・ドライバー、エメラルド・フロウジョン、タイガー・ドライバー91のフルコースを体感しました。

小島 これも自分のとって大きなターニングポイントになった試合でもありましたし、あの試合があったからこそ、今現在、ノアに参戦している意味になっているのかなというのもあるし、今もその経験が生きているっていうことに感謝してますね。

――小島選手がローリング・エルボーを使い始めたのは、あの三沢戦のあとですか?

小島 確か三沢戦を経験したあとからだと思います。それも含めて、たった1回でしたけれども三沢さんを体感できたことは一生の宝になっています。

――あとは2010年夏にフリーになった後に8・22有明コロシアムのノア10周年興行でモハメドヨネと対戦していますし、14年の『グローバル・リーグ戦』、16年には天山広吉とのテンコジで『グローバル・タッグリーグ戦』に出場したりと、ノアとは縁があるんですよね。シングルの大勝負としては12年12・9両国で森嶋、15年1・10後楽園で丸藤が保持していたGHCヘビー級王座に挑戦しています。で、2回のGHC挑戦は、実はノアのターニングポイントになった大会なんです。森嶋に挑戦した両国は小橋建太さんが引退を発表したり、大会以前に秋山準らの退団が公になって殺伐とした大会でした。丸藤に挑戦した後楽園大会は試合後に鈴木軍が殴り込んできて、そこからノアvs鈴木軍の潮流が生まれています。

小島 よく憶えてます(苦笑)。だから今回のタイトルマッチも、どういう結果になったとしても、何かノアにとって大きな節目になればいいかなと思っています。

――今回のタイトルマッチに関しては、これまで新日本のIWGPを2回、全日本の三冠を2回戴冠している小島選手が佐々木健介、高山善廣、武藤敬司に次ぐ史上4人目のメジャー3大シングル制覇を達成できるかも大きな話題になっていますが、意識しますか?

小島 実は、最初はまったく意識していなかったんですよ。想像していた何十倍もの周りの反響に自分でもかなり驚いていて「それだけのことを今回しようとしているんだ!」っていう感覚になっているんですよね。実際問題、これだけの時間の中で達成した選手が3人しかいないということもそうだし、それも含めて今回、注目していただいているのかなと思います。でも、今回の挑戦はメジャー制覇がありきではなく、それはあとからジワジワと感じたことであって。

――今回、挑戦する王者・潮崎とは2010年8・8名古屋のG1クライマックス公式戦で対戦してラリアット合戦を制して勝っています。そしてこの大会に優勝しました。

小島 あの時は全日本を退団して、フリーとして新日本に上がったので心に期するものもありましたし、あの時の私の年齢(39歳=1ヵ月後に40歳)がきっと今の潮崎選手(40歳)と同じぐらいですよ。それを考えると、また感慨深いものがあるというか。

――なるほど。実際に前哨戦で当たってきた潮崎豪の印象はいかがですか?

小島 非の打ちどころがないっていうのは、こういう人のことを言うんだなっていうぐらい、すべてにおいてパーフェクトなプロレスラーだなというのを日々感じながら試合しています。

――前哨戦を見ていると、変な駆け引きなしにお互いに真っ向からぶつかってますよね。

小島 そうですね、駆け引きをしたことがないというか、できないというか(苦笑)。結局、そんな頭を使うプロレスをしてこなかったし、できないし、別にそれをしようとも思ってないっていうか、それが自分のやってきたプロレスなので。良くも悪くも真っすぐなプロレスをやってきたので、それを信じて今回もやろうと思います。潮崎選手も真っすぐなので、年齢だけを考えれば潮崎選手の方が全盛期に近くて有利だと思います。だけど自分は、体はボロボロかもしれないけど、31年間プロレスをやってきた経験が武器だと思うし、31年間を知ってくださる人たちに何かメッセージを伝えたいなというのが凄くあるんですね。

――長いキャリアの中で潮崎選手と似たタイプの選手はいますか?

小島 棚橋(弘至)選手を思い出すというか、同じ匂いがしますね。キャラクターの部分だったり、スタイルだったり、カッコよさだったり…棚橋選手と似通った部分を感じます。

――そして最大の注目はラリアット対決です。小島選手は06年2月にニュージャージーでスタン・ハンセンの指導を受けましたよね。

小島 ハンセンさんに会えたことでラリアットの価値観を高めることができましたね。今思えば打ち方もそうだし、そこに至るまでの過程、ラリアットに対する思い入れであったり、すべての面で変わりましたね。ずっとラリアットは使ってきましたけど、ハンセンさんに会う前と会ったあとでは180度、すべての感覚が変わりましたね。

――以前は体ごとぶつかるラリアットでしたけど、ハンセンさんの指導を受けたあとはカチ上げ式で腕を振り抜く形に変わったと思います。

小島 それは直接教わったというよりは…打ち方よりマインドなんですよね。気持ちの面で変わったのが一番大きくて、気持ちが変わるにつれて打ち方も変わってきた気がしてるんですけどね。打ち方自体よりもそこに行くまでの思い…ラリアットに行く直前の気持ちの方が大きかったですね。

――前哨戦ではラリアットの応酬が毎回見られますが、潮崎選手の豪腕ラリアットを体感してみての率直な感想は?

小島 やせ我慢してますけど、とってもしんどいです(苦笑)。試合後に首を冷やしたりだとか、マッサージしてもらうとか、いろんなケアしてもらって。チョップにしても想像を絶する痛みというか、プロレスラーにしか味わえない痛みを日々感じながら過ごしてますね。
毎日毎日、いろんなところが痛くて大変ですけれども、それも含めて今は楽しんでいこうかなと思います。自分のキャリア、年齢とも戦わなきゃいけないですからね。

――3大メジャー、ラリアット合戦、そしてもうひとつ注目されているのが、ノアの興行での挑戦ではなく『サイバーファイトフェスティバル』というサイバーファイト傘下のノア、DDT、東京女子、ガンバレ☆プロレスの4団体が集結する大イベントのメインを新日本プロレスの小島聡が飾るということです。

小島 それも含めて、正直、物凄いプレッシャーですね。でも自分は新日本の代表だという感覚はなく、今回に関しては小島聡個人としての意気込みがとても大きいんですよね。もちろん新日本に所属してますけど、自分自身の価値観を大事にして試合したいなと思ってます。所属がどこだろうが、どこの大会に出ようが、そのメインイベントを務める責任感も持ってます。何年ぶりだろう…こういう感覚を味わうのは久しぶりだし、緊張もしてますけど、敢えて楽しみたいなと思ってます。

――これはⅩとして登場した時からの疑問なんですが、ノアのTシャツを着て入場しているのはなぜなのかなと。

小島 やっぱりノアにどっぷり浸かりたいっていう自分の中での感覚ですよね。新日本プロレスから来たっていうふうに見ている方が多い中で…両国の時も、あの1試合で帰ると思った方は多かったと思うんですけども、そうじゃないという意気込みをまず見せたかったですね。だからこそ、自分の感性で「どっぷり浸かるしかないな」って、そこからずっと着させてもらっている感じですかね。

――小島選手にとってはノアとの対抗戦ではなくて、小島聡個人の勝負なんですね。

小島 だから今回に関しては、新日本プロレスっていう名前は自分の中ではほとんど出していないつもりだし、出す必要がないというか。これだけ長い時間、プロレスラーとして生きてきたからこそ、小島聡個人としても見せられるんだよというものを感じながらやっていきたいなと思ってます。

――最後に、潮崎選手に勝ってGHC王者になった後のビジョンはありますか?

小島 もちろんです。今は明言しないですけど、いろんなことを考えてますし、今回それだけの覚悟を持ってノアさんのTシャツを着てやってますから、何としてでもベルトを持って帰りたいですね。その先のことは…しっかりベルトを獲ってから言わせてもらいます!


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