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上場企業等が開示しているサステナビリティ情報について分析しました

サステナブルな社会の実現に向けて企業が果たすべき役割に関心が集まる中、経営戦略やリスク情報をはじめとした、非財務情報の開示の重要性が高まっています。

こうした流れのもと、2023年から、有価証券報告書において、企業はサステナビリティ情報の開示が求められることとなりました。

金融庁HPより

この記事では、2023年の上場企業等2,500社の有価証券報告書から、企業が開示したサステナビリティ情報について分析していきます。


分析内容


分析対象企業

2023年3月期決算の上場企業等2,551社

分析項目

各社の有価証券報告書の 第2 事業の状況 サステナビリティに関する考え方および取組(以下、サステナビリティ情報といいます)を分析しています

分析の視点

サステナビリティ情報のような非財務情報については、「量」と「質」の両面でみていくことが重要です。
この記事では、「量」と「質」をシンプルに捉え、「量」は文書の総文字数、「質」は文書に出現する単語を基準に分析しています。


ちなみに、2,551社の有価証券報告書は、金融庁の有報閲覧サイトEDINETから、EDINET APIとPythonを使って、XBRLファイルで一括取得しています。

XBRLは構造化されており、Pythonを使って「サステナビリティに関する考え方および取組」のテキストデータを抽出しています。


「量」の分析〜文字数


量の分析として、各社のサステナビリティ情報の総文字数が何文字だったかを見てみました。

まず、各社の平均文字数を調べたところ、3,846字でした。

有報には、リスク情報を記載する項目(事業等のリスク)がありますが、この平均文字数は4,437字でしたので、それより少なかったですね。

文字数ごとに企業数をカウントし、ヒストグラムにしたのが以下です。
2,000〜3,000字の企業が多そうです。
中には、2万字を超えてている企業もあります。

最大文字数は22,647字で、セイコーエプソンさんでした。

ちなみに、サステナビリティへの取組みが進んでいると思われる銀行業で見たところ、平均文字数は6,453字でした。

銀行業のヒストグラムは以下の通りです。

銀行業で最も文字数が多かったのは、三井住友トラストホールディングスさんで、18,482字でした。


「質」の分析①〜頻出単語


次に、どのような単語が多く書かれていかを見てみます。

単語ごとに出現回数をカウントし、出現回数トップ10を表にしたのが以下です。環境、社会、人材といったワードが並びます。

出現回数をトップ100まで広げて、ワードクラウドにしたのが以下です。


銀行業に限定して、出現回数トップ100でワードクラウドを作りました。
投融資や与信など、銀行らしいワードが確認できますね。


「質」の分析②〜単語の記載割合


サステナビリティに関する特定の単語について、どの程度の企業が記載していたかをみていきます。

気候変動・脱炭素・カーボンニュートラル

このあたりの言葉は記載割合が高いですね。

ダイバーシティ・インクルージョン・多様性

多様性は高いですね。


人材・人財・人材確保・人材育成

伊藤レポートにもある人財という言葉が定着してきていることが伺えます。
人材確保と人材育成で記載割合が大きく異なるのには驚きました。


人権・人権デューデリジェンス・人権問題

人権については、まだまだ問題意識が低そうです。


パーパス・存在意義

流行りのパーパスも浸透度はまだまだですね

ウェルビーイング・WELL-BEING・幸福

こちらも低かったです。


さいごに


今年から開示がはじまったサステナビリティ情報ですが、各社、まだまだ、「量」と「質」の両面で、記載の充実には課題がありそうです。

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