仮面をした男性（その３）

「都会で生きる男性の多くは仮面をかぶっている。やましいことがある者はたいてい仮面をかぶっている」

一見、サラリーマン風の平凡そうな男性だが、実はこの人も仮面をしている。
さすがにパッと見ただけで、この男性の仕事の内容を知ることはできない。だから、この男性が何者なのかはわからない。
男性は仕事（悪事）を終えて帰宅すると仮面を外す。
その後、男性はいくつかのＳＮＳをチェックする。
これはもう現代人にとって日課になっているから、この男性に限らず、色々な人が同じようなことをするだろう。

男性は一通りのチェックおよび作業を済ますと夕飯の支度を始めた。
男性は慣れた手つきで料理をする。
もしかしたら、男性は料理の腕がいいのかもしれない。
男性は黙々と料理をする。
もしかしたら、男性は裁かれる立場なのかもしれないのに、今はただ料理をさばく……。

３０分くらいして料理はでき上がった。
今夜は肉料理のようだ。
男性は肉料理をテーブルの上に置き、その後椅子に座った。
男性は肉料理と対面する。
男性はどこか冷めた目つきをしながらも肉料理を凝視した。
それから数十秒すると、男性の目つきは変わった。それは鋭い目つきだ。
男性はナイフとフォークを手に取った。
そして、男性は肉を適当な大きさに切り、それを勢いよく口の中に入れた。
肉を食らう！
肉を食らう！
肉を食らう！
肉は活力のもと！
男性の顔が険しくなる。ものすごい形相だ。
肉を食らう！
肉を食らう！
肉を食らう！
これこそ生きている証！
男性は目を吊り上げ、ニヤけながらも口をモグモグさせている……。
男性は口の中にある肉を一気に飲み込んだ。
そして男性は……。
肉を食らう！
肉を食らう！
肉を食らう！
人生のうまみはここにあり！
男性は口の回りをソースでベタベタにしながら肉を切る。残りわずかな肉だ。
そして男性は……。
肉を食らう！
肉を食らう！
肉を食らう！
これでフィニッシュだ！
（この男性からすると、これがフィニッシュらしいよ）
男性は鼻息を荒くさせながら、口の中の肉を噛んでいる。

男性は肉料理を食べ終えると紙のナプキンで口の回りを拭き、その後すぐにかたづけを始めた（意外と几帳面のようだ……）。

男性は後かたづけを終えると、冷たい目つきをしながら再びＳＮＳのチェックをし始めた。

「都会で生きる男性の多くは仮面をかぶっている。やましいことがある者はたいてい仮面をかぶっている」