森のある道

ある老人が二人の若者に言った。「ここから歩いて一時間以内に向こうの駅に来なさい。」
駅までの道は二手に分かれている。何もない道と、鬱蒼とした森が茂る道。一人の若者は何もない道を通って駅まで行こうと思い、もう一人の若者に言った。「僕はこっちの何もない道を歩こうと思うんだけど、君はどうする?」
尋ねられたもう一人の若者は、少し考えて答えた。「うーん、僕は森のある道のほうを歩くことにするよ。」
そうして若者たちは二手に分かれた。
ちょうど一時間後、一人の若者が駅に現れた。何もない道を歩いてきた若者だった。本当に何もない道だったので、ただ歩くだけで時間通りに駅にたどり着くことができた。しかしもう一人はいつまでたっても現れない。二時間後、獣に噛まれ虫に刺され、ぼろぼろになった姿でもう一人の若者は現れた。老人は彼が遅刻したことを叱り、尋ねた。「どうして何もない道を選ばなかった?普通に考えたらそのほうが早く辿り着けるじゃないか。」
尋ねられた若者は答えた。「森の中を歩くほうが楽しそうだし、森に囲まれていて安全だと思ったから。」

私は森のある道を歩く人間である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?