【七峰】再読「発達障害サバイバルガイド」
【日報】2024/09/24付
刊行当時に手に入れていなかったので図書館で借りようとしたら貸出中で、予約して待っている間にどこを読み返したかったのか忘れてしまった。就労移行中に支援所で読み、ある程度までは就職後の生き方として参考にしていた。
まず初読から時間が経って思ったこととしては、54ページのHack06『「世界一ラクな家計簿」で浪費が止まる』でクレジット払いの明細を家計簿代わりにするライフハックが紹介されていたが、僕はスマホ越しのネット通販で消費欲求が促進されすぎてしまうので、クレジットカードを持ったことはあまりいいことではなかった。
これは72ページにある「生活に無理があると、浪費をしてしまう」の項に通じる部分もある。生活の余剰として積み上がるのが貯金だとすると、今の僕には余裕がない。生活を楽しくするために「あれが欲しい、これが欲しい」とやっているはずなのに、家にいてもつまらないと思うことのほうが多い。
本書に書かれている「自分への投資」の多くは調理や入浴にこだわる趣味人的な部分であったり、睡眠・食事・デスクワークの生活改善に重きが置かれている。
およそ「楽しい生活」とは、突き詰めるとこういうものなのだ──オタク的に充実しているかは関係なく、社会人としての当たり前の暮らしを不便なくこなせるように環境を整えるという意味の──という感じはする。
浪費癖の強い僕は何度か「一年間それだけで越すには十分なコレクションをもう集めたので、来年はなにも本とかゲームとか買わない生活をしよう」と考えるが、たぶん無理だと思う。今年だって(カード明細を見ながら)こんなに買いたいものが降ってくるとは思いもしなかった。それがやたら五千円とか一万円とかするし、「今だけ」を謳うのだ。
以前格ゲー沼に足を突っ込んだ時に、誰かが「ストリートファイター6を遊んでいたら浪費が減った」みたいなことを言っていた。この人は「家での生活を楽しむ」ことに成功したのだろう。
僕にそんな遊びがあるとすればファイプロだけなのだが、いま朝活として試合動画を毎朝アップロードしている以上に、ファイプロ中心の生活にできる気がしない。たとえばプロレスとその業界のことをよく知る地頭力があって、発売から7年間で総プレイ時間が3000時間とかそういうレベルの「ファイプラー」へのあこがれもないではないが、まだまだ難しいと感じる。
というか、はっきり言おう。実家暮らしは僕にとって楽しい暮らしではない、と。
ネット上にこのようなことを書くと極論的で早まったような流れにもなりそうだが、成人しても実家で暮らせるそれなりに安定した基盤と、住み心地の良さは必ずしも一緒ではないと、僕は心の奥のほうでわかっている。
本書は「ライフハックと自分が幸せに生きていくことの目的を履き違えるな」と忠告しており、必ずしも本の内容で人生が好転するとは明言しない予防線を張っている(そもそも、そんな「一発逆転マインド」を可能な限り排除しろと書かれている)。
僕がいきなり一人暮らしを始めて、うまくいくかいかないかは五分五分だ。だがうっかり1LDKなんかに住んじゃうと、スマホを別室に隔離できず昼夜逆転する可能性が高いので「無理めかな」という感じがする(ここになんらかの心理的ブレーキが存在する向きは認める)。
だけどもうなんかいちいちリビングのテレビモニターの独占に気を使ったり、それに映す映像やゲームの内容に気を使ったり、なんらかのタイミングが家族次第/家族任せになったりするのが、ストレス源だ。
ここにいると、なんとなく僕の好きなものが鼻で笑われ、あるいは「わからない」と分断され、僕はニヤけながらも萎縮してしまうばかりで、楽しいことを楽しいと素直に思えなくなってしまう。
5年前、僕はいつから「大人」なんだ? と泣いた夜もあったが、僕自身が実家暮らしの甘い汁を吸い続けることになんとも思わないでいる限り、ずっと薄っっすらイライラをつのらせながら、いつか老いがすべてを刈り取る日まで、あと20年か長くても30年は、これがずっと続く。
そのあとになってから何か事を起こしたり諦めたりするのでは遅すぎるということを、まずは理解しておきたい。
じゃあどうすればいいんでしょうね? という問いの答えを、この本ははっきりと用意してはくれない。するはずもない。変わりたいという意志と環境の変化による心の痛みを受け入れる覚悟のある者にしか、変わることはできないのだから。
(了)
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