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原田マハ『本日は、お日柄もよく』

原田マハさんの言葉は本当に力がある。
あ、ネタバレありです。

スピーチライターという仕事がある。社長や政治家のスピーチを一緒に考えたり、原稿の方向性を決める、ような仕事としてこの本に出てくる。この本は主人公が言葉の力を信じてスピーチライターになる話なんだけど、その師匠的存在のスピーチライターがいて、その人は野党党首、(後の総理大臣)のスピーチライターをしてる。
その人の作ったスピーチの部分を読んでいると、本当に自然と泣けてきてしまう。全体的にハッピーエンドに向かう物語なのもあって、「これは泣かされている!泣かせにきてる!」と思ってはいるが、本当にじわっと泣けちゃう。
言葉の持つ力をテーマとした小説が、本当に力のある言葉で書かれている。力のある言葉を書けるという絶対的な自信と実力があって、それを宣言しながら小説を書いてる原田マハさん。やべーと思いました。『ロマンシエ』もおすすめ。

という感じで、人間味のある優しくて暖かくて強い首相のスピーチライターの物語を読み終わった次の日。現実の岸田総理大臣のスピーチライターは同性愛者に対する差別発言をして更迭された。

僕は性的少数者じゃないし、そういう人間が同性婚の成立に賛成だと訴えること自体が、特権の上でカテゴリ、トピック、僕の論理、僕の主義として、彼らの存在を「扱う」行為な気がしてしまうから、そういう話はもっと人間同士の会話でしたいんですが。

僕は、
好きな人と結婚できるし、好きでもない人と結婚できるし、
結婚して子供を育てることもできるし、子供を育てないこともできるし、
夫婦として暮らすこともできるし、すぐに離婚することもできるし、
家を借りることもできるし、別居することもできるし、

その全てをよこせと言っている声だということに何故大人が気付けないんだろうと不思議でならない。
そういうことの全てを、生まれもってできない人間が周りに沢山いるということが、ストレスでしょうがない。ほんとうにイライラするし、悲しい。人間として尊重されない人間がすぐ側いるが、社会全体にとってどれだけ最悪なことか。

フィクションでは無い現実を生きるものとして、僕はもう希望より絶望を感じてしまう。

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