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観劇日記#3 ロロ 『Every Body feat. フランケンシュタイン』

2021年10月10日 ロロ 『Every Body feat. フランケンシュタイン』@東京芸術劇場シアターイースト

※すっごくネタバレを含みます。

 ロロが2年ぶりの新作公演をすると聞いてすごく嬉しかったのは、その2年前の『四角い2つのさみしい窓』を観てすごく感動して、「私は演劇が好きだということが決定的になったのだった。」から。
 この2年間もロロのたくさんの作品を観てきたけれど、やっぱり新作と聞くとテンションが上がる。

 舞台は「それ」が生まれるシーンから始まる。「それ」というのはタイトルにもあるとおり「フランケンシュタイン」的な死者たちから作り上げた怪物なんだけど、「それ」は「フランケンシュタイン」とは呼ばれていない(し、「フランケンシュタイン」という言葉は一度も出てこない)。
 「それ」はハナタバという女の子に出会い、この物語は「それ」がハナタバに名前を付けてもらう物語で、その間に「それ」の素となる3人の人間(スカート、ペイジ、シーナ)の回想が繋がりを持ちながら上演される。

 まず、これまで僕が観てきたロロの作品は一幕もので現実と同じ時間の尺であるか、そうでなくても時間は一定方向に流れていく作品ばかりで、1時間の物語を1時間で体験するリアルさや、徐々にストーリーが組み上がっていく立体的なドラマ感のある作風だった。でも今回は「それ」の誕生から遡ったスカートたちの回想シーンが中心的な内容になっていて、どこか病的な人人の話話が平面的な広がりを見せていて、なんというか意外な路線変更だった。モノローグが多かったのもこの変化を感じた理由の一つだろう。

 「それ」を作ったライカは子供の頃からいろいろな「音」を録音するのに熱中していて、卵が割れる音や、弦の切れたギターの音、鳥が死ぬ瞬間の音など「壊れる/壊れている音」を集めていた。自分の骨が折れる音を録音するためにペイジに殴ってくれと頼んだりもしてた。歌が上手なスカートの声を聞きながら、「音が聞こえた瞬間にはもうその音が無くなっていること」を嘆いてた。「壊れる」に対する強い好奇心や憧れと共に、失ってしまうこと、忘れられてしまうことの恐怖心が病的に彼を支配していた。シーナの親友が死んだ時には彼女の死体を残そうとし(彼女以外にも同じことをしてたっぽい)て、シーナからキレられる。最終的にライカは死者たちの声(壊れ続ける音)を聞くためにスカート、ペイジ、シーナの3人の死体を使って「それ」という怪物を生み出したんすよね。うーー。

 僕が読み取った話の流れはだいたいこんな感じ、なんですけど、、
 物語に登場する主要なキャラクターはライカだけじゃなくて、全員が何かしら病的なものを抱えていた。1年間絶食中の人や、大食いすぎる人、自傷をする人、中毒の人、病気の人、見えない友達と話してる人(観客に見えないだけかも)。「それ」やライカを含む全部の存在(Every Body)がそれぞれに抱えた病(やまい)的なものを目の当たりにさせられた。ユーモアと演技でそこまで暗すぎる印象にはなっていなかったけど、ここまで闇病(ヤミヤミ)なロロの作品って今までに観たことがない。これもまた意外な路線変更だった。ロロみたいに長く活動を続けていて、ファン的な観客も多い劇団が、こういうチャレンジをしているのってすごく尊敬する、攻め攻め。

 今回は頑張ってストーリーの内容について触れましたが、戯曲だけじゃなくて、上演もすごく見応えあった。音響が良かったってのは見てるみんな思ったんじゃないかな、最初会場には音楽がなっていて、それが途切れないままパジャマという登場人物が入場してきて、いきなり始まったんだけど、機械音のような心音のような音が続いたまま「それ」の誕生のシーンになって、しょっぱなからすごく劇に引き込まれた。感謝。美術と舞台装置もすごく刺激的だった。全体が回転する仕組みや、たくさんのドアやフレームが次々と空間を立ち上げていく面白さは本当に演劇でしかないものだった。

 この作品は池袋で17日まで、当日券あるのか分かりませんが、気になった人は是非行って、みて、感想ください。読んでくれてありがとう。
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