無駄な悪あがき

最近、食事の量を減らしている。現在俺は28歳だが30まで残り数年を切った所で妙な焦りが出始めていたのが理由の一つだろう。
丸々とした顔、肥えた腹。覇気の無い目つき。
30歳を迎える前からもう全て投げやりになっているかの様な容姿だ。それを鏡で見る度にため息が出る様になった。
いい加減、何かするべきじゃないか。仕事の忙しさを理由に今まで何もしてこなかったのだから無理に時間を作ってでも。
そう思ってランニングを始めたがしっかり続けられたのは最初の一週間ぐらいだ。人は何かを始めようとする時明確なモチベーションが無ければ、やらない理由ばかり考える様になる。

ここ数日で言えば、やらない理由には事欠かない様な状況だった。
俺は子供の頃から自分の事を誰かや何かのせいにするのが得意な方だったがそれにつけてもここ最近は俺にとって都合が良すぎる程状況が悪い。世間じゃ今年最大の寒波が来るだのとお誂え向きの「やらない理由」をテレビが大々的に報道してくれる。実際仕事を終え、原付バイクで家路につく時吹きすさんでいる風の冷たさは、俺の体温と共にランニングへの意欲も一緒に奪い去っていく。
ランニングも始まってしまえば、後は無心で走るのみなのでそこまでハードルは高くない筈なのだが家に帰って食事を取り暖かい暖房の風に当たっているともう俺のやる気は完全に形を顰める。

こんな調子だからランニングはあまり続けられないでいる。この文章を打っている最中もランニングをしなければいけないと言う誰に強制されている訳でもないのに妙な義務感が顔を覗かせているが今日も多分行かないだろう。炬燵の暖かさが俺の足を掴んで離そうとしない。嫌だ。行きたくないです。

ともなれば、俺に残されている減量の手段はもはや食事制限以外に無い。
意外にこれは出来ている。頻繁だった間食を完全に無くして昼食はカロリーメイト。外食はしない。
朝と夕だけしっかり食事を摂る。
これが無理のない範囲出来る俺の食事制限だ。
しっかりとダイエットを行っている人からしてみれば「なんだそんな程度のもんで何かやった気でいやがるのか」と言われてしまいそうだが、仕方ない。
これだけでも俺にとっては十分な努力だ。

以前はよく不安になると何かを口にしていた様な気がする。休日。夕方ごろになるとほぼ毎回。
インターネットに漂流している海外のアマチュアが携帯で撮った様なクォリティのポルノ動画の視聴とさして熱中出来ている訳でもないゲームのプレイ時間で貴重な休日が浪費されていく時の、あの何とも言えない喪失感と焦燥感が入り混じった様な不快な感覚。

疲れた体を引き摺ってでも、目的が無くても外に出て行って普段の生活の中にない何かを探しに行くべきだったんじゃないのか?
そうしないとまた職場と家を行き来する様な生活が始まってしまうのに。
そういう感覚で頭を悩まされている時、外食やデリバリーの食事は手っ取り早い"体験"の入手方法だった。

腹一杯まで普段食べない様な内容の食事をすると何かをした様な気になった。休日を"何も無かった日"にしないで済んだという安堵感があった。

明日を頑張る為に必要な行為だったんだと自分を納得させる。
実際、その通りだったんだろう。友人が居ない俺は自分で自分を勇気付ける必要があった。
だけれど、そろそろ別の方法を試してもいいだろう。言い訳も得意だが我慢も同じぐらい得意な俺だ。
痩せて顔立ちや体型が変われば自信も付く様になるかもしれない。

悪足掻きでも良いからこれぐらいは続けてみよう。

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