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AIイラストなのに「ラフな線と雑な塗り」には理由がある

▶ラフな線と雑な塗り

AIイラストと言えば、美麗、緻密、高品質な塗り、というようなイメージが強いかもしれません。しかし、黒猫さんはAIイラストの生成方針として真逆の「ラフな線と粗い塗り」というものを掲げています。
というと、なにそれ?と思われるかもしれませんが「理想形としては宮崎駿先生の描くイメージボード的な感じ」といえばニュアンスは伝わるでしょうか。ささっと描いた鉛筆画をちゃちゃっと水彩で色を付けて仕上げるアレです。アレがすごい好きで、生成AIでもああいう温かみや味のある絵を作れないものかと悪戦苦闘しているわけですが、なかなか難しいです。

niji・Journey生成によるかなり理想に近い出来のイラスト。こーゆーのでいいんだよ。っていう絵

▶ラフな線とラフな塗りには利点が多い

いわゆる「AI絵」には、特徴的な絵柄と塗りのほか、細部が崩壊(指とか小物とか)しがち、直線や円が上手く扱えない、元々小さい絵を拡大して生成するので描線が荒れがち、など見慣れた人が見れば一発でAIが描いたとわかる特徴があります。
最近はAIツールの進化でこういった弱点は解消されつつありますが、まだまだAI生成イラストが一般的となる以前、黒猫さんはこれらAI絵の弱点、特に細部の崩壊を解消する手段はないかと模索してたどりついたひとつの答えが「ラフな絵」でした。
手や指の崩壊や謎のデッサン崩れなどAI絵では避けては通れない難点も、もともとゴチャっした「ラフな絵」だと目立ちませんし、ぶっちゃけ修正も楽です。

手とか細部がかなりテキトーに描写されているが、全体的にラフなので全然気にならないし、なんなら「味」になるので、とても美味しい。

また、インペインティングによる修正やアウトペインティングによる絵の拡張に際しても、かなり違和感なく行えるのもラフい絵の特徴的利点といえるでしょう。

たぶん言わない限りどの部分をあとから書き足したかはわからないと思います。

今回のタイトルに使った絵も、もともとは縦長のものでしたがアウトペイント(今回はphotoshopの生成ぬりつぶしを使用)によって左右を書き足してからトリミングしてます。
アウトペインティング機能はどのAIもまだ発展途上という感じで、きっちりした絵だと違和感が出やすいのですが、「ラフい絵」だとほらこのとおり。最低限レベルの違和感で済んでしまいがちです。

「ラフい絵」のメリットをまとめると

①手指の作画崩壊やデッサン崩れなどをごまかしやすい
②元がラフなので、修正もラフでいいよく修正しやすい
③AIのインペイント機能やアウトペイント機能を使っても違和感が出にくい

といったところかなと思います。特にアウトペインティングの自由度の高さは生成時にあまり画角を気にしなくて良くなるので、メリットは大きいと感じています。

▶ラフな線とラフな塗りは個性にもなる

「ラフな線とラフな塗り」を言い訳でなく方向性として個性にする黒猫的戦略。

制作の際の利点をいくつか紹介しましたが、それ以外にも「ラフい絵」にはメリットがあります。そのひとつは差別化です。
正統派方向のAIイラスト生成をする人はAIイラストの黎明期から星の数ほどいて、超絶レッドオーシャンなうえ上手いひとたちがひしめいていました。反面、積極的に「ラフな線とラフな塗りにこだわっていAIイラストを生成している」という人となると黎明期にはそれほど多くはなかったので、これを個性と言い張ることで自分のポジションを作っていくという戦略がなかなかいい感じで通用しました。

この戦略はそれなりの成果を上げたようで「ラフな線とラフな塗り」を手抜きではなく個性と認識してもらえるようになってきて「黒猫さんらしい絵」といわれることも増えました。
今では似たようなラフい特徴のAIイラストを生成する方も増え、なおかつものすごくクオリティが高くなっているため埋没しがちで、それほど大きなメリットとは言えなくなりつつありますが…。

あとはおまけ的なメリット(?)ですが、AI絵に詳しくない人はこういっったラフな絵をAI生成のイラストだと認識していないことが多く「AIに描いてもらってるんですよー」っていうとびっくりしてもらえます。
その反応が意外と嬉しかったりもするのです。

▶ラフな絵にも種類がある

ひとことで「ラフな絵」といっても色んな種類があります。主線を太めにしてラフさを力強さに変える押し出しの強いタイプのラフ画、逆に繊細な線をラフに使うことで雰囲気を出すタイプのラフ画、色鉛筆風、クレヨン風、墨絵風など画材表現に拘ったラフ画など、表現方法も味付けも千差万別です。いくらでもバリエーションはあり、研究・実験のネタは尽きません。
今後も「ラフな線とラフな塗り」という切り口で生成AIイラストを追求していければなぁ、と思っています。

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