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ハイパースケーラーが世界中のデータセンターを占有

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この記事は、2024年8月13日のSDxCentralの以下の記事を意訳したものになります。意訳後に記事に関する考察を述べています。

Why are hyperscalers hogging worldwide data center capacity?
なぜハイパースケーラーが世界中のデータセンターキャパシティを占有しているのか


なぜハイパースケーラーがデータセンターを占有するのか

Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などのハイパースケーラーは、データセンター拡張ブームの真っ只中にあり、今後10年で世界中のデータセンター容量のほぼ3分の2を支配することになります。これは、2017年に彼らが支配していた容量の約8倍に相当します。

Synergy Research Group(SRG)の新しいレポートによると、ハイパースケーラーは現在、世界中に合計1,000以上の大型データセンターを持ち、これは全データセンター容量の41%を占めています。そのうちの半分以上は自社で建設・所有しているデータセンターであり、残りはリースされた施設から成り立っています。

この拡大により、ハイパースケーラーは現在、全世界のオンプレミスデータセンター容量を上回り、総容量の37%を占めています。アナリスト企業は、これは6年前に全データセンター容量の約60%がオンプレミス施設にあったことと「著しく対照的だ」と述べています。

この差は今後数年間でさらに拡大すると予測されており、SRGは2029年までにハイパースケーラーが世界中のデータセンター容量の60%を支配し、オンプレミスの場所がわずか20%になると予測しています。

「2012年には、企業はデータセンターハードウェアとソフトウェアにクラウドインフラサービスの12倍の費用をかけていましたが、現在では自社のデータセンターインフラにかける費用の3倍をクラウドサービスに費やしています」とSRGのチーフアナリスト、ジョン・ディンスデール氏は書いています。「そこにソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)やソーシャルネットワーキング、eコマース、オンラインゲームなどの消費者向けデジタルサービスの巨大な成長が加わり、ハイパースケールデータセンターの急成長が生じているのです。」

AIがデータセンターの需要を押し上げる

ディンスデール氏は、企業がますます多くの機器をコロケーション施設に設置していることが、オンプレミスのデータセンター容量を減少させており、企業が人工知能(AI)サービスをさらに活用するにつれてこの傾向は続くと述べています。

「生成AI技術とサービスの台頭は、今後数年間でこれらの傾向をさらに悪化させるでしょう。なぜなら、ハイパースケールオペレーターはほとんどの企業よりもAIオペレーションを実行するのに適しているからです」とディンスデール氏は書いています。

調査会社ISGは最近のレポートで、大企業の平均が今年末までにAI対応アプリケーションの数をほぼ倍増させる計画であると指摘しています。この平均値は、2023年末に250件だったAI対応アプリケーションから、2024年末には488件に増加する見込みです。

この変化は、データセンター全体の排出量にも影響を与える可能性があります。

デロイト コンサルティング(Deloitte Consulting)のマネージングディレクター、ジョン・メネル氏は、SDxCentralへの寄稿記事で、クラウドベースのハイパースケーラーインフラストラクチャが所有データセンターよりも最大60%少ない排出量を生むと最近説明しました。「なぜかというと、ハイパースケーラーは独自の持続可能性投資を大規模に行っており、エネルギー使用量の多くをデータ処理に直接適用しているからです」とメネル氏は書いています。

Dell’Oro Groupは、これらのデータセンター投資の一部がAI関連のデータセンター処理とストレージ需要の急増に対応するために必要な先進的なエネルギー管理技術に向けられていると報告しています。

「私はAIは進化であり、革命ではないと考えています。これまで、ほとんどの高速計算の展開はそれをサポートするように完全に設計された施設で行われていませんでした」とDell’Oro Groupのリサーチディレクター、ルーカス・ベラン氏は説明しています。「AIの次の進化のステップは、目的に合った電力および冷却インフラストラクチャを備えた施設における高速計算の展開です。多くの場合、これらのデータセンター物理インフラストラクチャの注文はすでにベンダーと契約済みです。その結果、DCPIベンダーは生産能力を増強するための製造投資を行っており、これは今後18か月間で意味のあるDCPI市場の成長として実現することが期待されています。高速計算と目的に合った物理インフラストラクチャの展開が一致すると、AIのワークロードパフォーマンスは利益を享受することになるでしょう」

ハイパースケーラーがデータセンターへの投資を継続

ハイパースケーラーはAI関連の投資を増やす必要性について、ますますほのめかしています。

「私たちは、何四半期にもわたって話してきたように、AI容量に制約があります」とMicrosoftのCFO、エイミー・フッド氏は最新の収益報告の中で述べています。「そしてそのために、...いくつかのリースが遅れているため、第三者と契約して私たちを助けてもらっています。私たちはこのAzure AIの需要に対応するためにAzureプラットフォームを拡張するために、喜んで助けてくれるパートナーと一緒にそれを行っています。そして、私たちがバランスの取れた状態に戻るために、かなり多くの投資をしていることがわかるでしょう。」

しかし、彼らはその投資を管理する方法にも注意を払っています。

AmazonのCEO、アンディ・ジャシー氏は、第2四半期の収益報告の中で、AIを取り入れたデータセンターのトラフィックの増加をサポートするために十分な容量を確保することが重要であると認めましたが、「実際に容量を過剰に提供すると、経済的にはかなり厳しく、営業利益のリターンが好ましくない」と述べています。

「現在の現実は、私たちはAI分野とインフラストラクチャにかなりの額を投資していますが、今日すでに持っている以上の容量を確保したいということです」とジャシー氏は付け加えました。「今、私たちは非常に多くの需要があります。そして、これは非常に非常に大きなビジネスになると思います。」

ABIリサーチはレポートで、このAIによる投資ブームが「大型およびメガサイズのコロケーション施設」に向けられるだろうと指摘しました。同社は、現在、全世界のデータセンターの28%がこのサイズの定義に該当するとしていますが、「AI/生成AIワークロードやその他のデータを大量に消費するアプリケーションを収容できるように、企業がより大規模なデータセンターを建設するにつれて、その数は2030年までに43%に増加するだろう」と述べています。

以上が、SDxCentralの記事の意訳になります。
 

この記事に関する考察

ハイパースケーラー(Hyper Scaler)とは、100万台以上の巨大なサーバーリソースを保有する企業を呼ぶ総称で、世界中でクラウドサービスを展開するAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)を意味します。

今後10年間で世界中のデータセンターの3分の2をハイパースケーラーが保有すると言う至極当たり前の記事でした。

2000年頃、グリッド・コンピューティングユーティリティ・コンピューティングという言葉が流行りましたが、ユーティリティ・コンピューティングとは、まさにコンピューティング・リソース(CPU・ストレージ)を電気・水道・ガスや電話のように使用した分だけ料金を課すようにサービスを意味していました。

例えば、電気が必要な企業が、それぞれ電気を作るための発電所を建設・運営するのはあまりにも非効率なので、ユーティリティ(公共)サービスとして利用しようとする考え方です。

グリッド・コンピューティング、ユーティリティ・コンピューティングは、その後、言葉が根付くことはありませんでしたが、2006年のクラウド・コンピューティングが、広く一般に根付きました。

コンピューティング・リソース(CPU・ストレージ)を企業がそれぞれ保有するのではなく、サービスとして利用するという考え方は基本的には同じですので、コンピューティング・リソース、つまり、サーバ・ストレージをサービス利用するということは、それを設置する場所、つまりデータセンターもサービス事業者側の設備を利用することになります。

クラウドサービスの利用が進むにつれて、いち企業のデータセンター需要は縮小し、ハイパースケーラーのデータセンター需要が拡大するということになります。

もう20年前から、自社データセンターを保有する一部の金融業などを除き、企業のデータセンター需要はどんどん縮小しています。
その一方で、立地(活断層からの距離、洪水、交通網)、ネットワーク接続性、各種の規定や規約(データセンター Tier、ISO、ISMS等)、電気代の高騰など制約で、データセンター事業の収益が大きく悪化していることから、システムインテグレータなどはデータセンター事業から撤退しています。

ハイパースケーラーが、規模の経済を活かし、エネルギー効率の良いサーバ(CPU)を制作するのと同様に、エネルギー効率の良いデータセンターを自社で建設するのは自明の理です。

サーバ・ストレージが、クラウドへどんどん移行され、企業が利用するデータセンターのコロケーション(ハウジング)は、ネットワーク・セキュリティ機器と、一部の特殊機器だけになっています。
そして、ネットワーク・セキュリティ機器(Firewall、IPS、リモートアクセス機器)については、同じくクラウドサービスである Secure Access Service Edge (SASE、サッシー)への移行が進んでいきますので、いち企業のデータセンター需要は今後なくなっていきます。

境界型防御や、データセンター集約型ネットワーク構成で課題を抱えられている方は、是非 SASE をご検討ください。







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