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ALL IN or...(GIFTの15分によせて)

テクノロジーが進歩し、帯域がはるかはるか広がって、通信の距離も密度も上がっていることで、誰もが世界中のコンテンツに触れられるようになった。かつては、自分が住む島のなかで取れる果実と、世界中の島に果実を届けることができる”大砲”を持つ国からの果実しか見られなかった。けれどいまは、どの島からも、世界に向けて果実を届けることはできるようになった。どの島からも、世界中でつくられた果実を味わうことができるようになった。もう、ハリウッドコンテンツだけに縛られる時代ではないのは、アニメ界の爆進を見ている私たちがもっとも体感している話だ。
よく日本人が勤勉、というけれど、アメリカの人はその上を行く勤勉な人が多く、とにかくtime is money、だから今起きているようなストは本来は起こしたくないはずのもの。そのくらい、ハリウッドは危機感を感じている。
もう自分たちが届ける物語だけで世界は支配できないと。

https://www.youtube.com/watch?v=ZRtdQ81jPUQ

ハリウッドという恐竜が断末魔の叫びをあげている中で、
「金輪際現れない一番星の生まれ変わり」が世界のキッズたちを踊らせている今、”アジアの片隅”などと謙遜しつつも、実は鼻息荒く世界からの評価しか気にしていない、この国からのコンテンツには、無限の広がりの可能性がある。

ただ、「無限の広がり」のためには、さきがけの切れ味が必須。
とてつもない切れ味が。
この1、2、3年の間に世界に飛び出していくものが、大事だ。
ゲームは?大丈夫、任天堂がいる。先日フランスでアプリ開発者に転職して大成功している現地の友人と話したら、発売から1ヶ月経った今でも、彼の周りはひたすらゼルダの伝説の話しかしていないそうだ。


アニメは?大丈夫、いくらでも猛者がいる。

https://twitter.com/kimetsu_off/status/1670239449022701568?s=20

https://twitter.com/shinkaimakoto/status/1653759037010505730?s=20

では実写は?
・・・ここで心もとなくなる。
宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が10年という年月と、日本最高のアニメーションのプロたちを総結集して作られたように、
とてつもない切れ味を見せるためには、「時」と「人」、そしてもちろんその「時」の間に「人」を雇える「予算」がいる。
映画のことは僕はほとんど又聞きしか知らないので言及せずに
分がプロとしてかかわるテレビのことを言えば、
圧倒的に、時間と、人が、少ない。それすなわち予算が少ないから。
体感では、同じ1時間の番組を作るのに、15年前とは
作る日数も、人も、予算もぜんぶ半分以下となっている。
それでも頑張って工夫して、一人が複数の任務をこなせるようにごまかして(ディレクターが撮るカメラなんて本来みれたものじゃない/ADさんを出演させたりするのも本来は恥ずかしいことだ)、安かろうをせめて旨かろうにしようとする。でもそれには限界がある。

実写の場合、ほとんどの場合において、
ゲームやアニメと違い、世界に広がることなど最初から諦めている。
なんでですか?と尋ねたことがある。何人かに。
ある人は言った。
「ゲームやアニメと違い、実写の場合、日本人の見た目が露骨に出る。
日本人の見た目は共感されにくい」と。
クロサワやオヅの昔、映画の「物語」には共感されても、
俳優たちがハリウッドから呼ばれたりしなかったように、
「見た目」の限界は実写は超えられないのだ、と。
・・・僕はこれを聞いた時、正直アタマを抱えた。
なんで黒澤明の時代の「のろい」に、60年近く経った今も縛られなくちゃならないんだと。
永遠にハリウッド=ベストの思考から抜けられていないけれど、今や世界人口の過半数はアジア人だ。ハリウッドが凋落の一途を辿る今、いつまで「見た目」のことなんて気にしてるんですか。と。

だがそうやって喧嘩腰になっても、
「じゃあ実際に、アニメでもゲームでもなく、実写/生身の人間で
世界をアッと言わせるコンテンツなんてあるか?」
そう言われると、なかなか思い当たらなかった。
―――2023年2月26日までは。

前置きが長くなりました。
この記事は、前回書いた記事の続きとなるものです。

 いま、世界に向けて配信されている「GIFT」。
このコンテンツには、「世界をアッと言わせるもの」が詰まりに詰まっている。
いま仕事と私事が立て込み、前半だけを見て、止めていた記事だけれど、
全世界配信との報を聞いて、いてもたってもいられず、後半を見出した。
前の記事に書いたのは、この配信にあたって、GIFTは前半と後半に分けられるものではなく、「すべて続き」になるように構成されたということ。

生の時のGIFTは前半/後半でしか切れない、まばたきすら禁じるようなすごいものだった。それはその記憶としてとても大事。

だけれども、いま配信となり、ひとつなぎとなったGIFTは、配信の恩恵として少しずつ、止めてみることができる。巻き戻すこともできる。
そういう意味で今回、後半開始から見ていて、15分め。ぼくはこの15分でまず「書かないと」と思った。この15分を止めながら、巻き戻しながら見ているだけで、どんどん自分のなかで湧くものを感じて、この文はおそらくあと10000字は行くだろうなと思ったからだ。
・・・なので、お読みいただく方には中途半端に感じられる方もいらっしゃるかもしれないけれど、今回は、本編始まって52分21秒から〜1時間6分59秒の間の、14分38秒間のことだけを書きたい。ここには、ありとあらゆる「狙い」と「思い」が詰まっている。それをこれから読み解いてみたい。

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