サーカス・続

人々はなおもサーカスに興じ続けた
サーカスはなかなか去らなかった
町で人々の帰りを待つ家族は
サーカスをすっかり厭うていた

キリンやジャグリングに飽いても
ゆくても知らぬ郷愁があり
帰ろうというものはなく
誰もテントから出てこない

供犠のように 罪人のように おざなりに
豚が片付けられてゆき
遥かな音楽を聞きながら
こころは過ちを優しく織りなした

彼らは思うほどの未来にいるのでも
きれいな現代にいるのでもなかった
あいまいに浮遊する
切り離されたうたかた

いまこの時だ
茶色い戦争では誰もが
いつか隣の客の手を取る
夢を見る 夢をみる 夢

燃え殻に手をかざすと
まだ暖かい
人はそれをだいじにいだきしめ
やがて帰途を探すのだ

盛んなるまぼろしの篝火に照らされた
乾いた土地の物語
(ひどい匂いを放っている)

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