夏の燃えてのちの

違う季節が幕を開けて
もう会いたいとも思えなくなってしまった

少し
外が明るくなった
それか遠のいたような

ある日おとずれたものがあって
空っぽだった、
ぼくのなかに何かをいれてくれ
それが彼の形をとり
ぼくは一人ではなくなったけれど
その彼はぼくのなかから出ていってしまった


家とはなんだろう?
なぜ家にいなきゃならない?

なにかを見たいわけじゃない
行ったところでなにも用もない
どこにも知ったものしかない
でもここにはいられない
間違ってここにいるようだ
間違って生まれてきてしまった
ぼくは、ここから行かなきゃいけない
ぼくは東に行かなきゃならない
ぼくは追いかけなきゃあいけない

ここは風の生まれる場所
眼を持たない無色が、こわごわと
ふるえて、やがて……
色濃い雲にまぎれて彼の背が
在りし日の、少年の
遠い、遠い、とおい
地平のうえへ、かすんで

白い手紙を畳んで燃やすと
ゆっくりとかるく、かろくなって
踊りあがる獣の祭儀
不揃いの燃え滓のまだ名残るあたたかな
もう少し、もう少しを
また燃やしてゆくゆっくりと

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