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故郷

僕は長いこと横浜で暮らしているけど愛着みたいなものは今もない。身も蓋もないね。

もともと僕は西東京で生まれて数年後に親父の異動があって23区の北部で1年過ごしたあと横浜に来た。

それに社宅のようなところで育ってきたので実家と呼べるものでもなく根無し草みたいなものだと思っている。

ざっくり言えば成り行きで横浜にいるだけなのでハマっ子とは思っていないし呼ばれることに抵抗がある。

横浜市歌もうろ覚えだ。

そんな僕にとって故郷とはどこだろう…と考えると宮崎県になるんだろうな。

両親が共に宮崎県の出身なので昔から馴染みがある…というより訪れると心が落ち着く。

少し大げさかもしれないけれどDNAが伝えてきているような感じがする場所が宮崎県。

子どもの頃から帰省すると横浜に戻るのがとてつもなく嫌だったくらいだから実際に生活したことはないけれど故郷と呼べる場所なんだと思う。

当たり前だけど横浜と比べたら宮崎は不便のオンパレード。

たぶん地方あるあるだと思うけどバス停の時刻表に空欄があったり(まだ廃線になってないだけマシ)コンビニまで歩いて30分なんてこともある。

特に親父の実家は鹿児島と熊本の県境に近い典型的な田舎なので見渡す限り田んぼ。

高校生の時、遠くに見えるコンビニを目指して歩いたら片道1時間くらいかかったことを今も鮮明に覚えている。

直線距離だともっと近いけれど田んぼがあるので道があみだくじみたいになっていて迂回の連続だった上に肝心のコンビニが定休日という悲劇。

人生で初めて呆然とした瞬間かもしれない。

それでも道すがら青々とした田んぼが風に揺られるたびに海のように揺れるていたりオニヤンマが飛んでいるのを見ると心が穏やかになっていたし

頭の中ではベン・E・キングのスタンド・バイ・ミーを流していたから悪くないなと思いながら歩いていた。

…毎日だったら耐えられないと思うけどね。


一方でオカンの実家は宮崎市内、それも空港のすぐ近くだったので轟音が鳴り響くのに慣れてしまえば比較的便利なところだった。

海も山も近いおかげで青島海岸で磯遊びをしたり綾町で川遊びをしたことを今も覚えている。

特に青島海岸は振り返ると山というダイナミックな地形ということもあって僕のお気に入り。

近くにある植物園(現在は宮交ボタニックガーデン青島)に立ち並ぶヤシの木やソテツを見ているとまさに南国!という異国感も味わうことができて心から伸び伸びできる。

ちなみに青島からさらに南下するとサンメッセ日南というところがある。

ここには美しい日向灘を背にイースター島公認のモアイ像が立ち並んでいて素晴らしい眺望なのでちょっと不便だけどいつもセットで訪れている。

パワースポットかどうかは分からないけれど開放感はそんじょそこらで味わうことができないから行く価値ありの場所です。


僕は数年前から宮崎への移住を考えている。

ひとりっ子だから親のためというのもあるけれど都会の生活に辟易していて心が落ち着かないというのが一番の理由。

殺伐とした満員電車に凄まじい人混み。

これだけ人がいても思いやりや優しさが抜け落ちている都会が息苦しくて仕方ない。

あらゆることが便利なのに不便さを感じる都会にいるより不便さの中で便利を探す方が健康的だと数年前から考えるようになった。

何よりも老いていく親の傍にいたい。

親不孝ばかりしてきたからせめて残りの時間は孝行をしたい。

そう考えるようになった。

若い頃はそれこそ「故郷は遠きに有りて思ふもの」なのかもしれない。

けれど僕も気づけば40になった。

人生の折り返し地点みたいなところにいると思ったら自分の過ごしたい場所で残り半分を過ごしたい。

一時的にカミさんと別居することにはなるだろうけど親と過ごせる時間はそんなに長くはないから、

いやもちろん長くあってほしいけれど。

カミさんとは20年も一緒に過ごしているから数年くらいは通い婚でも良いのかなと勝手に考えている。

…永遠に別居という悲劇にならないように今まで以上に愛することは必要になると思うけどね。


僕はずっと中途半端な生き方をしてきた。

それが双極性障害だから…とは思わない。

単に努力することが面倒で逃げていただけだと思う。

けれどピアサポートの世界に飛び込んでからようやく僕は努力を怠らなくなった。

生まれてはじめて勉強が楽しいと思うようになった。

それが本の編著に繋がったし大学の研究に参加することにも繋がった。

オンラインフリースペースを立ち上げたのも精神保健福祉の現状を知ったからこそ。

あとはこれで食い扶持さえ稼げたらと思う。

それさえ実現できたら僕は今すぐにでも移住する。

さんざん世話になった横浜には申し訳ないけれど何の未練もない。

宮崎の太陽、青い海、燃える緑。

僕の心を落ち着かせてくれる環境こそ僕にとっての特効薬だ。

宮崎のことを想うだけでほんの少し心が穏やかになる自分に気づいたとき、僕にとって宮崎こそ故郷なんだなぁと気付いた。

ただ…一つだけ非常に重要な問題がある。

僕は精神科医が認めるレベルのフォビアがある。

「虫」だ。

特にあの黒かったり茶色かったりするアレが出ると過呼吸を起こしてしまう厄介なところがある。

南国の虫は総じてデカい。

…さて…どうしたものか…。

食い扶持よりこっちのほうが遥かに深刻なのかもしれません…


ってなわけで今回も最後までお付きあいくださってありがとうございました。

皆さんも心が安らぐ場所を大切にしてくださいね。

それでは…アディオース!





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