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懊悩タイムトラベルVol.2-3

ところで20年以上前のことをなぜ綴っているのかというと今、僕が携わっている研究プログラムの影響が大きい。
前にも紹介した「あいりき」のことです。

もともと「精神障害者が語る恋愛と結婚とセックス」を作っているときに原稿にするか考えていたのだけれど直接的な因果関係があるわけじゃないので自分でボツにしていた。
一方であいりきでは自分にとっての愛について考えることが多い上に他の人の考えを聞くことになるので今までよりも真剣に考えるようになり、
改めて過去の恋愛について振り返ることが増えた。
で、まぁついでにアウトプットしておこうかなと思いここに綴っているわけです。
さて、前置きはこの辺にしておこう。

2000年の3月。
僕は貯金やら何やらをかき集めて新千歳空港に降り立った。
横浜は少しずつ春の気配がしていたけどこっちはまだまだ冬の寒さでしっかり雪が積もっていた。
迎えに来てくれた彼女の笑顔で寒さは気にならず…
とは行かず氷点下の気温は肌に突き刺さってくる感じがした。
それでも彼女と手を繋いでいると少し和らぐような気がしていた。
今度は僕がホテル生活。
言うまでもなくシングルルームである。
旅費が足りなかったので少し支援してもらった以上、ここは逆らえなかった。
それに彼女は日中、仕事をしているのでどうしたって別行動になるからホテルの方が楽だった。
この日は休みだったのでチェックインしてすぐにご飯を食べに手を繋いで夜の札幌へ繰り出した。
ニッカウイスキーのバカでかいネオンや大通公園などテレビでよく見た景色がそこにはあった。
そう言えばガメラ2は札幌が舞台の一つだったな…なんてことをどこかで考えながら歩いていた記憶がある。
彼女が連れて行ってくれたのは札幌で有名な回転寿司だった。
ボタンエビやウニなどが地元価格で食べられるらしくて平日の夜だったけれど混んでいた。
ちなみにこのとき、僕はまだウニが食べられなかったのでエビとカニをしこたま食べた。
ぶっちゃけ彼女がいれば店は何でも良かったんだけど楽しそうに食事をしている姿を見ていると何だかとてつもない幸せを感じている自分がいた。

店を出る頃にはすっかりと夜になって気温がぐんと下がっていた。
ふと見上げるとビルの上に「気温-5℃」なんて出ていてそりゃ寒いわけだねなんて話をすると暖かい方らしくてえらく驚いた。
大通りはロードヒーティングされているので歩道に雪はなかったけれど一本はいると道が凍っていたりしているらしくて彼女が手を引きながら
「本当に滑るから気をつけてね」と言った矢先に自分が転んで支えようとした僕もコケてしまい二人で大笑いしながらホテルのロビーで別れた。

翌日。
彼女は仕事だった。
夕方まではだいぶあるので観光に…ではなく僕は部屋で音楽を聴きながら京極夏彦の小説をタバコ片手に読んでいた。
だって寒いんだもん。
しかも雪が降ってる。
窓の隣りにあるソファーに腰を掛けて夕方までずっと本を読んでいた。
先に言っておくと滞在中、僕はほとんど昼間はホテルで過ごしていた。
たから時計台は未だに見たことがない。
本当に彼女にしか関心がなかった。
日が暮れたら待ち合わせ場所の「豚の鼻」と呼ばれている広場に向かってデートをする。
夜なのでご飯を食べるだけ。
けれど仕事終わりという大人の雰囲気に包まれた響きが僕には心地良かった。
そしてこの日は彼女の部屋に泊まった。

なぜかファミリータイプのマンションに住んでいて遠方に住んでいるご両親が札幌に来たとき滞在するために持っているという話だった。

とはいえ普段は彼女の生活拠点。

彼女の部屋に泊まるというのは憧れでもあり付き合っている実感が湧く瞬間だと思う。

もちろんセックスが伴うので気が進まない部分もあったけれど、ほとんど経験がないだけでいずれ慣れてくるだろうと思いながら肌を重ねた。

が…やはり快感ではなくてどこかめんどくささを感じてしまうので表に出さないようにして何だか変な疲れを感じてしまった。

それでも彼女とずっと過ごせる幸せは感じていたからたくさん笑って過ごしていた。

僕と彼女の時間で幸せのピークはここだ。

何やかんやと楽しい時間を送りいよいよやってきた最後の夜、彼女とセックスを終えたあとのこと。

ふと彼女が「お腹出たかな…」と尋ねてきた。

当時18歳でデリカシーなんてものを身に着けていなかったのと生来の素直さでバカ正直に僕は「そうだね」と答えてしまった。

当たり前だけどショックを受けて彼女は泣き出してしまい背中を向けて寝てしまった。

もちろんすぐに謝ったけれどよりによって帰る直前に取り返しの付かないことをした後悔と自責で僕は明け方まで眠れなくなってしまった。

目覚めた彼女は彼女で僕が寝不足の酷い顔になっている僕を見て何かマズったと思ったらしくフライトまで僕を部屋に連れていき休ませてくれた。

ずっと謝っていたような記憶がある。

もういいよ、と言われても謝り続けていたけれど

結局、二人の歯車が欠けるきっかけになってしまった。

新千歳空港で最終便を待つ間、僕らは抱き合っていた。

次にいつ会えるか全く分からなかったこともあってギリギリまで抱き合っていた。

フライトは21時30分。

さすがにギリギリだと迷惑をかけてしまうので21時15分に保安検査場に向かった。

これでもじゅうぶんギリギリですけどね。

するとCAさんがきょとんとした顔で僕を見てどのフライトなのか尋ねてきた。

どの…も何も最終便なので変なことを聞くなぁと思いつつチケットを出すと衝撃的な答えが帰ってきた。

「そちらは先ほど離陸いたしました」

21時20分。定刻前。

僕はハニワのように立ち尽くした。

帰れなくなったわけです。

慌てて親に電話すると定刻前なので全く信じてもらえず激しい口論となり頭にきた僕は一方的に電話を切った。

仕方なく彼女の部屋に戻り泊めてもらうことにしたけれど親に対する怒りが全く収まらないのを不憫に思ったのか、しばらく一緒に生活しようと切り出してきた。

はい、そうします。

こうして僕は彼女と楽しい同棲ごっこを始めることになった。

ただ歯車が欠けたことにはまだ気づいていなかった。


今回はここまで。

これからますます暗さを増していきます。

いやぁ…大変だったな、わし。

明るい恋愛したかっただろうなぁ…

では、また近いうちに。

この暗いエピソードにお付き合いいただきありがとうございました。

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