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昔、書いた落書き

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2019年11月まで、mixi、Yahoo!ブログ、Bloggerなどに載せていた 小説や詩のようなもの掘り起こして載せています。 (『ガムテープ女』が最後の作品です。)
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#ナンセンス

『素顔』

「あなたに見て欲しいものがあるの」 いっしょに暮らし始めたばかりの部屋で 彼女が剥いてくれたリンゴを食べていたとき、 背中越しに彼女の声が聞こえた。 「何?」 男が振り向くと、彼女はさっきまでリンゴを剥いていた 果物ナイフを手に男に近づいてきた。 「な、何をするんだ」 慌てる男に、彼女は宥めるように言った。 「大丈夫、そこに座って見てて」 そういうと持っていた果物ナイフで自分の首を切りつけた。 首をぐるりとあまり深くない傷が走ったが 不思議と血は出なかった。 声もなく、た

『ホットドッグ早食い大会』(後編)

ゼッケン2番。彼はひたすらホットドッグを口に放り込んでいく。 右隣にいる前回チャンピオンの日本人は自分のペースを守りながら 順調にホットドッグを口に運んでいるように見える。 しかしその顔をよく見ると、ちらりちらりと隣を見ているのが分かる。 明らかに動揺している。それほど今回のチャレンジャーはすさまじかった。 なにしろ、噛むこともせずに次々とホットドッグを平らげているのだ。 何なんだこいつは? 観客だけでなく、他の出場者でさえ手を止めて見入っている。 開始から7分が経過

『ホットドッグ早食い大会』(前編)

今年もやってきた『ホットドッグ早食い大会』。 毎年あのイエローモンキーに優勝を持っていかれて 正直この街の人間として怒りは頂点に達している。 今年こそは、と意気込んでみるがいつも2位どまり。 しかし、今年は秘策があるんだよ。 吠え面かくなよ、ファッキンジャップ!! おっと、日本人にもファッキンジャップくらいは 分かるんだったな、危ねえ、危ねえ。 で、その秘策ってぇのが不思議な話でさ 数日前のことなんだけど、俺はあるバーにいたんだよ。 そこで一人の黒人が酔っ払いにからまれて