偏った情報を元に“正しく”判断すると間違える

 その人に判断力がないわけではない。むしろ正常な判断力を持っているからこそ、偏った情報・間違った情報に惑わされ、発信者の意図した通りに誘導されてしまう。自分の頭で考えるのが危険なのである。

 このグラフを見た時、投票先の違いは単に“普段どのメディアに触れているか”の違いでしかないと悟った。高齢者はオールドメディア(テレビ)に触れる時間が長いから小池に投票しただけだろう。テレビで1秒たりとも取り上げてない候補に投票できるわけがない。テレビしか見ない人にとって、その候補は存在しないも同然だからだ。別に高齢者がバカだから小池に投票したわけではない。
 同様に若い世代が石丸を支持したのはYoutubeやTiktokに触れる時間が長いから、という理由でしかないはずだ。20代はバカだから切り抜き動画だけ見て石丸に投票したみたいな事も言われていたが、そんなのは小池だって同じじゃないか。オールドメディアによる上品な切り抜き動画、人当たりが良く有能そうで好感が持てるという“イメージ”だけがひたすら流れてくる。「小池さんなら信用できる」とまんまと誘導される。

 残りの要素は組織票だが、今その話はしない。
 メディアの効果は絶大で、白を黒にもできるし、いたはずの人間をいなかったことにもできる。
 思い返せば氷河期世代だって当時若者だったころ小泉政権を熱烈に支持していたのだ。メディア戦略にまんまと乗せられ、よりによって自分たち世代が最も割を食うことになるその選択に嵌め込まれた。今の若者を笑えたものではない。

民主主義はマスメディアなくして成立しない

 民主主義が成立するために必要なのは民衆の政治的成熟だと言われるが、それは論点のすり替えであると敢えて断言したい。マスメディアの存在を意図的に透明化し、由々しき問題は全て大衆の資質に帰そうとする卑劣なすり替えだ。
 民主主義の成立に真に必要なのは真っ当なメディアである。民衆はメディアを通じてしか政治を知ることができないからだ。報道の自由度が最下位なら政治レベルも最下位になるのは自明であろう。

 メディアの中立性が保たれていなければ民主主義政治は成立しない。さもなくばメディアを支配した者が大衆をコントロールし、選挙に勝つだけの茶番と化す。一体どこが「大衆の信を問う」選挙なのだろう。選挙は単に「メディアの報道効果をテストする」場でしかなくなる。

民主主義と資本主義は相性が悪い

 現体制に異を唱える者を政治犯として逮捕投獄する中国は実に分かりやすく最もプリミティブな言論弾圧を見せてくれる。しかし翻って日本はそれほど自由だろうか。——単に“やり方”が違うだけだ。

 都庁のプロジェクションマッピングに60億円。電通ライブが受注。談合事件を受けて入札禁止されているはずの電通が、停止措置中にも関わらず子会社を使って安々と通過。メディアを牛耳るあの電通が。一体どこまで政治と癒着しているのか。

 そもそもたかがプロジェクションマッピングごときにそんなに金がかかるわけがない。形だけやったフリをしておき、大半を中抜きすることに意味がある。そしてこれは単なる中抜きではない。広告代理店やメディアに対する口止め料であり広告費用なのである。表から堂々と裏金を渡すための建前として、プロジェクションマッピングなどの事業を形だけでも実際に展開しておく必要があっただけだ。

 オールドメディアが何故小池のイメージ戦略を積極的に行い、小池に勝たせたか。これがその理由だ。そして小池が再選した暁にはまたこんなおいしい仕事を振ってもらえる可能性がある。小池が落ちたら損になる。必ず勝ってもらわなくてはならない。

 暴力ではなくスポンサードして黙らせる。これが資本主義下の言論統制である。お客様の悪口なんて言えるわけがない。

 現職が巨額の公金を投じて事実上の選挙広報費に充てるなんて極めて不公平で普通に考えたらあり得ないことだ。民主主義の精神を冒瀆し、有権者を愚弄するものである。

クールジャパンの思い出

 ついでにもう一つ例を出したい。
 本来コメディアンには政治家を風刺し、揶揄するという崇高な役割があるのだが、しかし吉本芸人は絶対に自民党の悪口を言わない。何故か。クールジャパンの時に吉本興業に100億円流れているからである。アニメやマンガのクリエーターにではなく、何故か吉本興業に。

 大衆への影響力があるお笑い芸人に金を握らせて懐柔するためだ。イメージ戦略のための広告費用なのである。それ以外に考えられない。ただそのままの名目で金は渡せないから建前としての虚業が必要になる。クールジャパンも都庁ライトアップも本質は同じ。一見無駄に見える政府の無駄遣いにはこういう裏がある。ちゃんと目的があってやっているのである。

「野党!」じゃあないんだよ

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