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どこかでだれかときいたはなし

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劇作家・美術家の私道かぴが、作品づくりのために行った先々で聞いた話、経験した出来事について書いたコラムです。毎週水曜に更新します。(2024年1月~)
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記事一覧

どこだれ⑰ 京都の民藝店で教わったこと

学生時代、京都の出版社で手伝いをしていた。ある特集で「民藝」がテーマになったのをきっかけ…

どこだれ⑯ 蚕に教わったこと

今年も蚕を飼っている。 昨年「かいころく」という養蚕にまつわる演劇を作り、長野県の大桑村…

どこだれ⑮ 幽霊話がいやだったわけ

「ホールの下手の奥の方、出るらしいですよ」 ある滞在中、何人かで会場の下見をしている時に…

どこだれ⑭ 地元神戸、知らなかった街のこと(後編)

神戸をテーマに創作するにあたって、まずは震災のことを今一度知らなければと思った。足を運ん…

どこだれ⑬ 地元神戸、知らなかった街のこと(前編)

「お洒落なところでいいですねえ」。 これまで出身が神戸だと伝えた時に、最も多かった返事だ…

どこだれ⑫ 駅で他人に懇願すること

切符売り場の前で、私は途方に暮れていた。その駅は、地方でもたくさんの電車が乗り入れる所で…

◎宮古駅から出た列車の行き先

『〇〇のこえ』と題して、日本各地でその土地に住む方にお話を聞き、作品をつくるということを続けている。宮古に来るすこし前には、神奈川県横浜市の左近山団地に滞在し、団地に住む人々の暮らしや人生の話をまとめた『団地のこえ』を制作した。戦後の住宅需要の高まりのなか1968年に建てられたこの巨大団地では、全国各地から横浜に出てきた人々がいまも多く暮らしている。その人生はまさに企業戦士といった様子で、高度経済成長で国が湧きたっていた頃の雰囲気をつよく感じた。 一方宮古で話を聞いていると

どこだれ⑪ すべて見ていた山

ある神社を探していた。 その地域に昔住んでいたという人から、「べこ(牛)を祀っている神社…

どこだれ⑩ 子どもたちを尊敬している

芸術関係のことをしていると、度々ひょっこりと現れるのが「ワークショップ」の機会だ。 中学…

どこだれ⑨虫に愛着を持つ日

その滞在場所はすぐ後ろに山があって、よく言えば自然が近く、表現を変えれば色々な動物が家の…

どこだれ⑧聞き書き作品のプライバシー

どこかの土地に行って、そこに住んでいる人に話を聞き、聞いたエピソードを基に作品をつくるこ…

どこだれ⑦一生をかけた作品をもらう

どこかの土地に滞在して、いっとき親しくなったとしても、作品をつくって発表してしまえば呆気…

どこだれ⑥むこうの言葉でしゃべる人たち

昨年は縁あって、漁師と猟師に話を聞く機会があった。読み方はおなじでも、双方の職業はかなり…

どこだれ⑤知らない誰かの善意を聞く

その日、私はある小学校の前で困り果てていた。校門にはガッチガチに南京錠がしてあって、インターホンの横には「関係者以外お断り」と掲示がある。 奥の校庭からは子どもたちの楽しそうな声が聞こえる。しかし、その声が遠い。インターホンを押すか否か迷って、結局やめて引き返した。 広告会社で飛び込み営業をしていた頃、色々な失敗をした末に、初対面の会社に伺う時に最も気をつけなければいけないことを悟った。それは「怪しまれないようにする」ということだ。 最初に相手に巻き起こるだろう「この人誰」