自動車雑記 2023年12月24日 ダイハツ工業 認証不正について思うこと(続報)

遅くない?

確かに初報が4月なのでもうちょっと早く…というのは思わなくはないですが、続報がかなり昔まで掘り下げていたのでここは致し方ないのかなと…
僕が記事書くタイミングが遅いのは…暇な日がたまたま今日だっただけです(笑)
その影響か、トヨタの北米での大規模リコールの話も書けるようになりましたね…リコールと認証不正では全く違う事象ですが、「日本オワタ」大好きな人にとってはネタが豊富でいいですね(棒

記事を書く前に

決まり文句ですが、当方はダイハツ工業および親会社のトヨタ自動車とは直接的に利害関係のない立場で、乗用車の認証手続きにも関与したことはないです。
周辺業界の製品開発ではないエンジニア職あたりが当方の属性となります。
ですので実務ベースではなく、本件を自分の領域に落とし込んだような形で以下の記事は書いていきます。

真因に対する僕の捉え方

会見では「余裕のない計画で追い込まれた実務担当者のやらかしを、実務を知らない上司が気づけなかった」といった感じの事が言われていました。
正直、全部が全部これで済ませられるのかは微妙な気もしますが、まあ大半はそうなのでしょう。
僕が思ったのは以下となります。

・余裕のない計画

もうこれは自分の業務でも心当たりしか無い。
上司の中に一定数は「なんでも削ることが正義」な人っているんですよ…
本件の場合、日程・人員・予算・試験に供する部品あたりが対象かと思いますが、一番きついのは日程ですかね。
やばい上司って、実務担当者が引いてきた計画に織り込んであるコケた時のバッファを目ざとく見つけて消させるんですよね…多分それでたまたま失敗せずに出世しちゃってる。
それでも予備部品だけでも潤沢に用意してあればすぐさま追試って逃げもあるんでしょうけど、まあ日程削るマンがそんなところを見逃すわけもなく…

・実務を知らない上司

これも大きい会社では稀にありますが、叩き上げじゃなくて他部署(特に製品設計)とかから来た上司は、当然のように実務を知らない。
じゃあ勉強しろって話なんですが、人事の切り替わりで引き継ぎ期間が半年とか年単位くらいあればいいですが、そんなに潤沢には取ってもらえないですからね…
しかも上位の方々だと会議とか他部署調整とかでなかなか現場に行く余裕も無い、特にここ最近はweb会議システムが普及したので軽率にいろんな打ち合わせに呼ばれがち。
それでも中間管理職や実務担当者から聞く能力があれば、少なくとも違和感は感じるはずですが、そこは個人の資質的なところもあるので、任命した人が無能って話かもしれませんが…

・他工程への理解、配慮

これが個人的には一番根深いと思ってます。
ダイハツがどうこうって話じゃないんですが、日本人って自分以外の職域に対する敬意がめちゃくちゃ希薄だと思っています。
この場合ですと、企画段階で発売までのスケジュールはおおまかに引かれているはずなんですよ。
その中で最上流って製品設計で、認証とかってモノが出来ないと何も出来ないので事実上の最下流になりますよね。
生産準備も下流ではありますが、こちらは設備や金型のリードタイムがかなり長いのである程度は製品設計段階でも準備を始めるので、認証よりは少しは余裕がある。
ここからは個人の感想なのですが、上流の人って下流の余裕を食い潰しがちかなと…
上流の人は「俺様たちの完璧な設計なんだし、認証試験なんて一発OKよ?余裕度なんていらんやろ」くらい思っているフシがある。
なんなら「試験失敗?んなもんお前らが残業でも休日出勤でもしてなんとかせーや」くらい思っているかも(若干の被害妄想あり
日程の終わりは決まっているので、どの工程でも想定がが起きたら最終的には下流がケツを拭かされるわけですよ。
失敗しても自工程で吸収できるようになっていればいいのですが、会見の内容からすればそんなこともなく…
そうなれば、なんとしても日程に合わせるために不正という選択肢も見えてしまう気はしますね。
少なくとも、自工程のやらかしは自分たちでなんとかする…って文化があれば、多少は件数が減っていたのかもしれませんね…

・余裕のない設計

今の自動車って本当の意味でグラム単位での重量を削ってるんですよね。
新車解説記事を読んでもわかりますが、例えば高張力鋼板を使って板厚を薄くして軽量化とか、ダウンサイジングや素材の置き換えとか血の滲むような細かい軽量化を積み重ねてます。
車にとって軽さは命で、走行性能にも燃費性能にもダイレクトに効いてくる。
スーパーGTとか見るとよくわかりますが、あれだけ造り込まれたレースカーでも数十キロのサクセスウェイトで戦闘力を著しく削がれるわけですよ。
コストと重量という制約が上位なので、認証に対する余裕度なんてそりゃあ軽視されますよ。
でもさすがに、例えば何かの数値が「100以上」となっているものに対し「101」で設計することは無いと思いますが、今だとCAE解析で設計検証するのでどれくらい設計と実物にズレがあるかって、けっこう後にならないとわからないんじゃないかなと。
昔は解析技術も未熟だったので実物での検証をしていましたが、今はだいぶ数を減らされてるらしいですね。
で、試験担当者からすればそんなギリギリ(かもしれない)ものを試験しろって言われるんですから、不正な手段で余裕を作り出そうとする者が出てきても不思議では無いですよね。

・いわゆる「忖度」

僕の捉えでは、多分上(上司も親会社も)からの本当の意味での圧力はほぼ無かったと思います。
ただ、圧がかかる前に予め忖度して短納期・低コストな無理しすぎな計画をしていたと言うことはあると思います。
それは成功体験だったり、自分の今後の出世のためだったり、気が弱くて言えないだったり理由は色々あると思います。
トヨタとしてはダイハツの自主性や風土を尊重していく方針だったのでしょうが、100%子会社なんだからそこはもっと関与して悪いところは是正していくべきじゃなかったのかなと思います。
今そんなことを言っても時間は戻りませんが、今後のカイゼンに期待したいところですね。

・パワハラ気質の上司

これは完全に僕の妄想ですが、そういう上司がいたんだろうな…
ダイハツだって人数の多い会社なので、全員が全員不正やバッド・ニュースを黙ってるわけじゃないと思うんですよ。
そのおかげで、初報が出たわけですし。
じゃあなんでそれがもっと早く上に上がらなかったかって思いましたが、上げない・上げさせない上司がいる(いた)と考えるのが一番シンプルなんですよね。
どんな会社でも、それなりの確率でヤバいやつが上司になっちゃう人事的バグが発生してしまうんですよね…
こればっかりはダイハツ人事部さん頑張れとしか言えませんが…

・内部監査の弱さ

ダイハツも大きい会社なので、それなりの部署が社内の監査ってやってたと思うんですよ。
そこでも見つからなかったって事は、内部監査がお手盛りだったり本当にヤバいのを見つけても揉み消す文化になっちゃってたんじゃないかなと思います。
僕の職場くらいでもたまに監査ありますが、基本的には他部署の人が監査官なのでさすがにお手盛り監査って事は無いですね。
一応は社内の人ですが、それなりに緊張感をもって(上司が)対応しています。

・D-SPORTはじまったな

エンジン関連の不正内容で、ポート研磨だとか特注カムだとかヘッド面研だとかロムチューンだとかあって、「何やってんだよ…」と思う反面で社内で出来るんだったら、昔のホンダのタイプRみたいなスペシャルモデルで売れるんじゃないかなと不謹慎な事を思ったり…
まあ、比較的昔の不正なので無理でしょうが…

今後のダイハツどうするんだろう?

まあ、なんやかんや言ってもトヨタがダイハツを見捨てたり会社を潰すことは無いと思います。
小型車生産でトヨタの世界戦略に必要な会社ですし、仮に潰しても親会社がケツを拭かないといかんので、そうなるくらいなら活かしておいて立ち直らせたほうがメリットが大きいと思います。
ただ、トヨタからの人材注入は多くなるでしょうから「ダイハツらしさ」みたいなものをどうしていくのかは課題としてあると思います。
トヨタからしてみたらダイハツが「ミニトヨタ」になってもなんにも嬉しくないし、舵取りは難しいかなと。
日野とダイハツで近いタイミングで身内からやっちゃったメーカーが出てしまったのは、ほんとお疲れさまです…の気持ちです。

とりま、頑張って

もう、やっちゃったものを今からどうこう言っても仕方がないので、一刻も早い真相究明と認証の再取得、そしてリコール案件が出た場合は素早い対応を期待しています。
ただ単純にダイハツやトヨタを叩くのも楽しいのかもしれませんが、まがりなりにも底辺エンジニア職なので事例を確認して自分の周りで同種の事が起こらないようにしていくのが個人としては最善かなと思っています。
調査報告書をまだ全部は読めていませんが、これだけ膨大な失敗事例集を無料で読めるんだから、活用しないのはもったいないですよね。
日本の企業の中で上位の勝ち組企業でもこんな事になってしまうのですから、それより下の会社は「自分のところでも起こっているかも…」と感じるのが普通の感覚だと思いますが…

追記

リコールの話も書こうと思ったけど、長くなっちゃったので気が向いたら冬季連休中に書くかも…

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