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最近読んだ小説-2-「ここはすべての夜明けまえ」
間宮改衣さんの「ここはすべての夜明けまえ」を読んだので、感想を書いていきます。
暇だったら読んでください。
ただしネタバレが嫌な人はブラウザバックしてください。
あらすじ
融合手術を受け不老不死となった女性が彼女の家族史を書き始める。
100年前の家族との思い出を振返り、彼女はこれからどう生きるのかを考える。
感想
SFであり、純文学の要素もある私の好きなジャンルだった。
性的虐待など苦手なシーンもあったけど、SFだからかすんなりと読めた。
不意打ちで出てくるギャグも好きだった。
シリアスなシーンに挟まっているから余計に笑える。
ラスト近辺に荒廃している世界にAIと融合した人間が暮らしていて、彼らがもう住めなくなりつつある地球から脱出しようとしていることが明らかになったシーンもぞっとして好きだったが、私がこの作品で取り上げたいのが死生観についてだ。
死にたいのに生きつづけなきゃいけないなんて拷問だろう、生まれることは選べないんだからせめて死ぬ権利くらいはすべての人間に保障されるべきだと思う。けど融合手術は言ってしまえば死ぬ権利の剥奪だ。俺はずっとお前が嫌いだった、おまえのせいで母さんが死んだと思っていたから。でもおまえだって選べるなら別に生まれてこないよな。生まれたくて生まれたわけじゃないだろう。自分が死にたいと思うようになって、やっとわかった。勝手に生まれさせられて生涯を搾取されて、本当に気の毒だと思う。すまなかった。
主人公の兄は主人公のことが嫌いで、それは引用文にあるように主人公が生まれたことが原因で母が亡くなってしまったからだ。
そんな兄は、60歳で定年を迎えたことを機に安楽死制度を用い、自ら死を選ぶことを選択する。
「もう疲れた。」それが理由だった。
そして、死にたいという感情を抱くことで、主人公への怒りが理不尽なものだったことに気付くのだった。
「生まれてこなければよかった。」「死にたい」などの意見をネットでよく見る。私は、その気持ちがよく分かるし、実際に思う。
しかし、そんな言葉を世間に放てば、「甘えるな」とか「努力しろ」とかの言葉が返ってくることが多いと思う。
そういう否定的な意見に触れるにつれ、なぜ両者は分かり合えないんだろうかといつも思っていたが、この作品を読んで、その理由がやっとわかった。
みんな死にたいと思ったことないのだ。
そして、死にたいと思わない人は一生、思わないままだろうし、両者の意見はずっと平行線を辿ることになる。
とても悲しいことだと思う。
でも結局、こんなことを考えても何の解決にもならないし、
この気づきを啓蒙しようともならない。
でも、私のように積極的に生きていたくない、どちらかというと死にたいと思っている人には救いになる作品だと思う。
主人公の好きな曲↓
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