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モーリス・ラヴェル博物館へ行った


去年の冬、ラヴェルの家に行ってきました。

フランスの作曲家モーリス・ラヴェルの晩年の家、通称「ヴェルヴェデール」は、パリ郊外のモンフォール・ラムリという町にあります。
この家はラヴェルが住んでいた当時のままの姿で、「モーリス・ラヴェル博物館」として残されています。

初めてのフランス旅行。ラヴェル博物館に行くことは、中学生の頃からラヴェルの作品が大好きだった私の長年の夢でした。
しかしこのラヴェル博物館、調べれば調べるほど情報が錯綜している。
つい最近まで閉館していたとか、あの有名指揮者と有名ピアニストが追い出されたとか...海外旅行もほとんど初めての若輩者がたどり着ける場所なのだろうか。

そこで、ここにヴェルヴェデールに辿り着くまでの一部始終を書き残したいと思います。
これから行こうと考えている方の一助となれば幸いです。

まず見つけたこのサイト(http://www.mmm-ginza.org/museum/serialize/backnumber/0811/museum.html)では、水〜日まで開館しているとのこと。ガイド付きのツアーでのみ来訪が可能であり、要予約とありました。
ところがこのサイトには、電話番号しか記載がありません。文字情報ゼロの状態でフランス人と電話するのは、ちょっと厳しい。
そこでフランス語で検索していくと、こちらのサイト(http://www.fondationmauriceravel.com/en/come-visit-le-belvedere/)にたどり着きました。
ツアーの料金とメールアドレスの記載があったのて、まずは予約できるか確認のメールを送ってみました。
1週間ほどすると、「開館は土日のみ」との返答が。
旅行のプランではフリーの日程が平日のみだったため、慌てて旅行日程をずらし、結果、土曜日の昼に予約を取ることに成功。
その日1日は、モンフォール・ラムリ観光に費やすことになりました。

念のため、予約のメールに「ほとんどフランス語は話せません」と一言添えました。
しかし返信のメールには日程が確定したこと以外の返答はなく、果たして大丈夫なのか...ガイドの話が1ミリも理解できない可能性もあるなと覚悟を決めました。


パリ市内を数日観光し、4日目にモンフォール・ラムリへ。
モンパルナス駅からパリ高速鉄道(SNCF)に乗り、30分ほどで「モンフォール=ラムリ・メレ」駅へ向かいました。
モンパルナス駅には駅ピアノがありました。ラヴェルのソナチネを弾いてから、ホームへ。

高速鉄道はパリメトロと違って改札を出るときにも切符が必要だったりややこしいのですが、そのあたりはパリ観光のサイトなどを見ればいくらでも書いていると思います。

雪の中たどり着いたモンフォール・ラムリ・メレ駅。小さくてこぢんまりとした駅で、人もほとんどいません。
ここから目当てのヴェルヴェデールまでは、徒歩30分。しかし地図を見る限り周りはほとんど畑のみの1本道で、不安がありました。
そこでG7というタクシーで向かうことに。アプリに出発地と出発時間、目的地を入力すれば、会話することもなく連れて行ってくれます。
パリ市内から来てくれているようなので値段は張りましたが、たどり着けないリスクを思うと頼んで正解でした。

タクシーに乗ること約10分で、小さな市街地に到着。
街の中心には教会があり、そこから建物が広がっていました。

教会の中では鐘の音が響いている。ラヴェルがうるさいと言って嫌がっていたのはこの教会の鐘か.....と感慨深くなりました。

教会の周辺には地元のレストランやカフェもあり、旅行者にも親切にしていただきました。


そして市街地から少し歩くと、すぐに「Musée Maurice Ravel モーリス・ラヴェル博物館」の看板が。

モーリス・ラヴェル博物館に到着。
入口に「ヴェルヴェデール」の文字が。

入口の看板にはしっかり休館日の情報が。これが公式の情報になります。

待ち合わせの時間にヴェルヴェデールの前で待っていると、道の向こうからガイドらしき女性が。
鍵で家を開け、中の準備をされているようでした。普段は人が住んでいる家と変わらず鍵がかかっているのだな....と驚きましたが、ガイド付きツアーのみなのも納得です。
しばらく玄関で待つと、煙突から白い煙が上がってきました。
まるで今もまだラヴェルがそこに住んでいるかのような、不思議な感覚でした。

※ガイドの女性は英語を話せる方で、説明も理解できました。しかし話によると、どうやら英語が話せる方は彼女だけのようで、それ以外のガイドの方はフランス語のみお話しになるらしく.....。
メールで書いたことを考慮してもらえたのか、運なのかはわかりませんでした。
ただ常にガイドの方が説明されながら家の中を見て回るので、フランス語の方に当たった場合の覚悟はしておいたほうがいいかましれません。

ヴェルヴェデールの中には、何度も伝記の写真で見た光景がそのままに広がっていました。
とにかく部屋の中の色々なものが小さいという印象。飾ってある装飾品や小物も小さなものばかりで、ラヴェルの趣味を垣間見れました。
一番印象的だったのは隠し扉の奥にある楽譜の置かれた本棚。一つ一つの楽譜を全部見ていきたかった......
生活していたそのままの形で残っているのは、こういった博物館としてすごく貴重だと改めて感じます。

部屋の中は撮影禁止でしたが、バルコニーから見える外の景色は撮影できました。

小さな日本庭園。パリで大きな公園をいくつも見ていると、その差が一目瞭然でした。
日本に住んでいるとあまりに馴染み深い庭の景色で、なんだか奇妙な感覚でした。

このバルコニーにいるラヴェル、この庭園で猫のムーアを抱くラヴェル.....
何度も見た写真がいくつもフラッシュバックしました。

博物館内ではポストカードなどの販売もあ理ました。来館者が自由に書くことのできるノートには日本人の方の文章も。皆さん、よくぞここまで......

1時間ほどでガイドツアーは終了し、しばらく街を散策してからパリへの帰路に着きました。

モンフォール=ラムリは霧に包まれた小さな街でした。
この街でラヴェルが過ごした日々がどのようなものであったのか、街を歩くたびにその光景が浮かんでくるようでした。

約一年前の旅行記ですが、今でも鮮明な記憶が蘇ってきます。
半年ほど前から下調べをしたことが功を奏し、また幸運が重なってたどり着くことができました。
おそらく留学などされていたり現地に住まれている方にとってはなんの問題もなく訪れられるのだと思いますが、初心者の旅行ではなかなか難易度の高い場所だと思います。
ラヴェルを愛する方々が、無事ヴェルヴェデールにたどり着けることを祈っています。

モーリス・ラヴェル博物館のチケット。名残惜しくて1年間お財布に入れていたらボロボロになってしまった

【追伸】

ちなみに、ラヴェル博物館はラヴェルの晩年の家ですが、そこにラヴェルのお墓はありません。

ラヴェルのお墓はルヴァロワ・ペレの墓地にあります。
パリメトロ3番線の「Pont de Levallois - Bécon」駅下車、徒歩10分ほどです。

近くのお花屋さんで花束を供えました。


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