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大人になってからファッションを始めようとするあなたに送る「ファッション脱初心者」になるためのガイドブック


対人要素のあるゲーム界隈などでは「初心者は自意識を一端横に置いて、環境機・テンプレビルドでやれ」とよく言われる。

これは、初心者はそもそも自分の選択肢が強いのか否か、合理的なのか否かを判断するための基準自体を持っていないため、まずはゲームシステムとの相性が良く、操作しやすくそして勝ちやすい環境機で対人経験を積むことで、そのゲームにおける一つの評価軸を確立せよ、という意図の金言である。環境機に習熟することでゲームのシステムやそれぞれの選択肢の強みや弱みを体得し、その上で自分の傾向や好みを合理的に反映していくことで、ようやく「脱初心者」となっていくのである。

これは趣味としてのファッションにおいても全く同じ事が当てはまる。
あまりにも多い選択肢。しかもファッションには、ゲームにはある「勝利」という絶対性はなく、「かっこいい」だの「ダサい」だの「新しい」だの「古い」だの相対的なものしか存在せず、しかもその「かっこよさ」は究極的には「かっこいいからかっこいい」というトートロジーでしかない。
そんな空虚な穴が中心にぽっかり空いた大海に大人になってから飛び込もうとする奇特な人に、少しでも善き航海となるよう、まず洋服を趣味として始めたい初心者のためのガイドをまとめたので、参考にして欲しい。

このnoteのコンセプト及び構成について以下のブログの記事を参考にしました。こちらは全男子必見なので是非読んでみて欲しい。


ステップ① 店に行く

ファッションについて何も分からない人はまず、「オーラリー」と「コモリ」と「グラフペーパー」の3択から選ぼう。

これらのブランドは、
・全国のどこでも取扱店が存在する入手性の良さ

・ある程度高額である(着ている本人も周りの人間も、上質な服を着ているということが分かるクオリティを備えている)

・毎シーズン新作が販売される(流行に併せたスタイルの更新)

・極端すぎないコンセプト(とっつきやすさ、日常生活に無理なく溶け込む程度の主張、コンセプトを先鋭化さえたブランドの入り口となる間口)

の理由で、初心者が安心して身を委ねることができるテンプレブランドである。

まずは、上記のブランドの取扱店をネットで調べ、とにかく店に突撃しよう。オシャレな店構えや店員に遠慮する必要は無く、不潔さえでなければどんな服でいってもつまみ出されることはないから安心して欲しい。
入店してしばらくキョロキョロしていると親切な店員なら「何かお探しですか?」とか「気になったのは広げてくださいね」とかと声をかけてくれるので、すかさず「(ブランド名)を見せてください、試してみたいです」と伝えよう。入店してもしばらく無視されていたら自分から言いに行こうネ。

決して「何か良い服ないかなと思ってゴニョゴニョ」なんて曖昧な返事をしてはいけない。それを聞いた店員は様々なブランドや様々なアイテムをあなたに見せてくれるだろうが、あなたは服の良さすら判別できないヒヨコなのでお互いにとって不幸である。何なら上記の3ブランドを挙げて「そのうち一番気に入った物を買うつもりである」とまで言ってしまっても良い。自分は冷やかしではなく明確に服を買うためにやってきた人間であるということ店員に分かってもらった方が、別のブランドを試すために一端決断を保留することも伝えやすいし、店員もそういう観点でアドバイスを焦点化することができるのだ。

② 実物を見て、試着する

目当ての服が並ぶラックに案内されたら、とりあえず目の前の服のうち、「良さそうだ」と思ったトップス(Tシャツ、シャツ、ニット、スウェット等を季節で選ぼう。アウターは×)とボトムをセットで試着させてもらおう。何も分からなければ店員に上下を選んでもらっても良い。可能なら複数の組み合わせを試して、一番しっくりくる物を見つけよう。先述の通り「良い物は買う」という意志を明示しているので、試着を遠慮する必要は無い。むしろ店員も(選んでもらえるよう)そのブランドの良さをしっかり言葉で伝える努力をしてくれるだろう。
着た服が「自分にはあわないな」と思わない限りは、そこで買ってしまった方が話は早いが、別のブランドを試すために一端決断を保留しても良い。

③ トップスとボトムを買う

心に決めたらお世話になった店員に「これください」と力強く宣言しよう。店員の努力が最も報われる双方にとって最も幸福な瞬間である。今購入した服が、最初の評価軸そのものになるので、必ず上下セットで買おう。恐らく上下セットで買うと7~10万程度になるだろうが、一度でも趣味という世界の深淵を覗き見た者ならば、エントリーモデルが10万程度で済むのなら決して高い買い物ではないと分かってもらえるだろう。

④ 10回以上着る

さて、あなたの目の前には、これまで手にしたことのない金額の布が転がっているはずだ。決して特別な機会にだけ着る一張羅にしてはいけない。おしゃれな服を着ていく場所があるのではない。どんな場所でもおしゃれして行くのがファッションという趣味である。たくさん着て、ちゃんと洗濯しよう。洗濯は特殊な素材(キャプラ、ヴィスコース等)でなければ、ネットに入れれば他のものと一緒に洗濯して問題ない。心配なら洗濯しやすい素材の服を店員に教えてもらおう。
日常生活において上質な服を着ることの醍醐味をちゃんと味わうことで、服の善し悪しを判断する軸があなたの中に形作られていくのである。

⑤ 最初に選んだブランドじゃない方のブランドで、トップスとボトムを買う

さて④のステップを経た人ならこの頃には「フィンクスツイルキモチエエ」とか「コノヌノノドレープイカス」とか「ワイドシルエットサイッキョ」なんてことを口走っているはず。しかし、最初に選んだブランドのアウターを買いに店に走るのではなく、選ばなかった方の上下セットを試着し、購入しよう(もう服屋に着ていく服もあるし自分で大枚はたいた経験もあるということで店に入るハードルは大いに下がったことだろう)。これによって、ブランドコンセプトに対する評価軸を得ることができる。その2ブランドを着倒すことで、自分がファッションにおいて、どの要素を強く求めるのか、どんな系統の洋服が好みなのか、そういったことを自覚的に把握していけるのである。

⑤そして高みへと

ここまでくればもう「ファッション脱初心者」といって差し支えないだろう。
この基本ブランドのアウターや小物を買い足すもよし、これらのブランドを先鋭化させたよりマニアックなブランドを試してみるもよし、インポートブランドに手を出すのも良いだろう。以下にテンプレブランドその他からのクラスチェンジルートのサンプルを示す。

下のチャートが理解できるあなたは、最早沼に腰まで使っているのでいろいろ覚悟しておこうね。

おわり。

オーラリー(ナチュラルカジュアル)
→マーティー、ナイスネス(アルチザン寄りカジュアル)
→アプレッセ(古着寄りカジュアル)

グラフペーパー(オフィスカジュアル)
→ギャルソンオム、シャツ(モードカジュアル)
→テアトラ(テックオフィス)

コモリ(モノトーンカジュアル)
→リックオウエンス(リックオウエンス)
→ヨウジ(モード)

オーベルジュ、ポータークラシック(手工業)→ビズビム(民藝)

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