見出し画像

家を壊してネコを救い出した話

「お昼あたりから子猫の鳴き声がする」

実家へ帰省した日、母と姉が言っていた。家の裏に子猫でもいるのかな、なんて言いながら、もしかしたら空耳かな、なんて言いながら。

我が家にも猫が一匹いる。2歳ほどの、無口でめったに鳴かないメス猫。

姉は動物病院で働いているので、普段から犬や猫にまみれて生活している。子猫の鳴き声が聞こえても、空耳なのか本当に聞こえているのかがわからないと言っていた。

子猫の鳴き声は一晩中鳴り響いていたらしい。

次の日、家のチャイムが鳴った。近所のおばさんだった。

「猫飼ってる?」と聞かれた。

私は近所付き合いが全くないのでわからないが、母も姉も家にいなかったので私が対応するしかなかった。

「猫飼ってます。」とだけ答えた。

「昨日から猫の鳴き声が鳴り止まないんだけどお宅の猫じゃない?」と聞かれ、「うちの猫ではないんですけど、母も猫の鳴き声がするって言ってました」と答えた。おばさんは帰っていった。

我が家の両隣の人たちが「どこかで猫が引っかかって抜け出せなくなっているんじゃないか」と心配していた。

姉が仕事から帰宅してそのことを伝えると「ちょっと見てくる」と言って外へ飛び出した。

我が家で飼っている猫も近所で拾ってきたし、他にいる犬2匹も保健所から保護してきた。我が家はそういう家なので、「他所で幸せになれる子はいいけど、そうじゃない子はうちにきたらいい」というポリシーで動物を飼っている。らしい。おかげで犬3匹、猫1匹の大所帯になった。

困っている子供と犬猫を放って置けないのが母で、その遺伝子をパワーアップさせたのが姉である。

脚立を取りにきたり、長い棒を取りにきたりとウロウロしていたが、家の裏に猫はいなかったと肩を落として帰ってきた。

少し時間が経つとまた鳴き声が響き始めた。

「壁の向こうから聞こえない?」

と姉が家の壁を指差して言った。元々家のつくりが古く、5年ほど前に内部のみリフォームして住んでいる家なので、骨格は古いまま。隙間だらけらしい。

とはいえ家の壁の中に子猫が入り込むなんて、まさか、ねぇ、と言った。

一度気になると夜も眠れなくなるほど気になって仕方がない姉は

「壁に穴をあけてみよう」

と言った。DIYでもあるまいタイミングで家の壁に穴をあける人ってどれくらいいるんだろう。自ら家を壊しにかかる人はどれくらいいるんだろう。

思い立ったら止まらない姉は大工をしている親戚に声をかけ、数時間後には壁に穴を開け始めていた。

私は外で仕事をしていたので経過は知らなかったが、一つの動画が家族LINEで共有された。

猫が


壁から


生まれた


そんなことある?

家の壁から猫って出てくる?

さらにびっくり、先住猫と同じ柄、同じ色。性別もメス。

犬バカ、猫バカしかいない我が家なので、このキジトラ姉妹が家の中を和ます和ます。一瞬でイチコロ。

母は喜んでおそろいの首輪を買うし

2匹のじゃれあいなんて見始めたら1日が終わる。

犬しか好きじゃない!猫は苦手!と言っていた私も、今ではすっかり猫を吸わなければ禁断症状が出る体になってしまった。

全人類が犬とか猫を飼えば世の中の争いごとは全てなくなるのではないかとか、死にたくなったらとりあえず子猫を抱きしめてみたら世の自殺者は減るんじゃないかとか、なんかわからないけど、子猫はいいぞ。

犬猫のおかげで家族の会話は増えたし、「今日こんなことをしてこんな風に可愛かった」という話題が9.5割を占めている。

犬猫がいなかったら我が家に会話なんてない。

ありがとう犬猫たち。

ネコが大好きな犬と、犬が大嫌いなネコの図


犬が家族になった経緯はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?