日本一野犬の多いまちからやってきた家族
コロナ禍真っ只中。仕事も学校も休みになり、「新しい犬を迎え入れるなら今だよねぇ」とよく家族で話していた。
保護犬、保護猫をSNSで身漁るのが趣味の母は、どんなに忙しい時でも「みてみて！この子可愛くない！？？」と雑種の犬や猫の画像を見せてくる。
2020年5月ごろ、1つの記事が母の目に留まった。山口県周南市の保健所の記事だった。
まだ生まれて1ヶ月ほどの子犬が何匹か保護されており、日に日に引き取られて数が減っていくものの、いよいよ処分前日に残された子犬。
「この子、明日処分されるんだって。」という母。何やら保健所に電話している様子だった。
処分されてしまう犬猫なんて毎日何匹もいる。全てを救おうなんて無理な話で、避妊手術をきちんとするとか、野良を増やさないことに尽力した方がいい。
どの子を家族に迎え入れるかはタイミングの問題であり、同情のみで引き取るのは危険だと、3歳から保護犬と過ごして私は学んできた。
明日にはなくなってしまう命で、ちょうど家族が集まっており、先住犬が生きているうちに一緒に過ごしてほしいという想いがあった我が家は（母は）、山口県周南市の保健所から生後1ヶ月の雑種犬を引き取ることにした。
体内外に虫だらけ、どんな大きさの犬になるかもわからない。中型犬くらいかな？と言われていた。先住犬は15才の中型雑種と、10才くらいのシーズー。久しぶりの子犬にみんな大喜び。
日に日に大きくなっていく姿が愛おしくて、毎日記録写真を撮っていた。
先住犬がとにかくドライだったので、人間が大好きで甘えん坊の犬が初めてだった。お腹を見せる犬が実在することを初めて知った。
数ヶ月単位で家を離れるようになり、たまに帰宅するとどんどん大きくなっていた。
耳が立ってきたので、垂れ耳じゃなく耳が立っている犬なんだとわかった。個人的に耳が垂れていてほしかったので毎日折り畳んだけど、日々真っ直ぐな耳になっていった。
ボーダーコリーみたいな犬になるのかなぁとか、ハスキーみたいなかっこいい犬になるのかなぁとか、妄想を膨らませていた。
鼻が伸びてきた。ボーダーコリーみたいにはならなさそうだと思った。
人間大好き、犬も大好きな天真爛漫な性格は、先住犬からうっとおしがられていた。
大きくなるにつれビビりな性格が増し、くちばし型の口輪をつけられる。ちゃんとしつけないと、噛み付く犬になったら手がつけられなくなると姉が懸命にしつけた。
奇跡の3ショット。見事に3匹とも仲が悪い。我関せず。
それから数ヶ月間、家に帰ることがなかった。たまに送られてくる写真で大きくなったなぁとは思っていたけど、どのくらい大きくなったのかはわからなかった。
久しぶりの再会。
鼻が長い。足が長い。目が小さい。
色も薄くなった。体がゴツくなった。中身は赤ちゃんのまま。
細長い足と、立派な犬歯と、草食動物のような顔つき。
詐欺じゃん。
赤ちゃんの頃の画像を見ては「幻だったね」とよく話す。
中身は赤ちゃんのままなので、相変わらず甘えん坊。ビビりな性格なのでよくいうことを聞くし、小さい生き物にもすごく優しい。とってもいい子。顔が不細工なくらい。
処分されるはずだった子犬が、スクスクと育ち、鼻と足はニョキニョキと伸び、耳はピンと立ち、毎日のびのび過ごしている。
あとから知ったけど、山口県周南市は日本で一番野犬が多い街として知られている。大量発生する野犬はとても野蛮で、地域で問題になっているらしい。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210116-OYT1T50112/
みんな似たような顔をしている。周南顔だ。
自分達でうちの子はブサイクだというのと、他人から言われるのではまったく意味が違う。
他人から「ブサイクだね」と言われると
「うちの子が！！？？？ブサイク！？？！！！！甘えん坊でどんな生き物にも優しくて素直でとってもいい子だけど！！？！？？！？」
となる。そんなもんだよね。親バカ。
まあなんというか、子犬期間なんて一瞬で終わってしまうから、一分一秒たりとも逃さず記録に残しておくべきだと学んだ。
写りのいい画像ちょうだい！と姉に頼んだら「全部同じ顔だわ」とこれが送られてきた。ナイス野良犬顔。
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