2022年8月に観た映画
夏はやっぱりホラー、戦争映画、ポップコーンムービー。
女神の継承
タイ・韓国合作のモキュメンタリー・ホラー映画。
序盤からじわじわと嫌な予兆を感じさせる出来事の数々。
ミンの精神、そして身体の変容、これはただの体調不良なのか。
彼女の身に一体何が起きているのか。
予測不可能な展開の連続でずっと精神を削り取られる上に、終盤の一歩手前では派手なジャンプスケア&ホラーでは定番?である動物の無惨な死(今作では犬)。
そして最終決戦ではもう次から次へと登場人物に降りかかる地獄の沙汰に、観ているこちらも疲弊してしまう。
モキュメンタリー=POV方式であるため、画面酔いしやすい人は要注意。
他にも、『エクソシスト』(1973)の十字架のシーンに匹敵するようなシーンもあり、これらの刺激の強い描写のため、本作はR18指定作品となっている。
何歳になっても怖い。
信仰心を持つ人には、かなり厳しい問いかけをする物語でもある。
「目に見えないもの」を信じるということ。
信じる者は、一体何に救われるのだろうか。
今作を観た後は、自分も何か悪いものが憑いてしまったのではないかと思えるほどだが、「プロの祈祷師のお仕事映画」として面白い映画であることもまた魅力である。
軍旗はためく下に
毎年8月には何かしらの戦争映画を観ているが、今年は前から観たかった今作を映画館にて35mmフィルムで鑑賞。
厳しい戦場での戦闘を描いた作品かと思いきや、舞台は戦後、ひとりの女性が市役所にいるところから物語が始まる。
彼女は戦時中、敵前逃亡の罪で死刑となった夫の死因究明を続けている。
夫・勝男が戦場で死ぬことになった本当の理由は何だったのか。
妻が出会う人物は、何故か皆異なる彼の最期を語る。
この構成はさながら黒澤明の『羅生門』(1950)のようであるが、ここで勝男を演じる丹波哲郎が、ひとりの男の様々な在り方を演じ分ける。語弊がある表現かもしれないが、思わず観客も一緒になって彼の死の謎について考えてしまう、ミステリーとしても一級に「面白い」作品である。
戦争の苦しみは、その期間中だけではない。
例えその戦闘自体が終ったとしても、傷は残り続ける。
家族にも、遺族にも残り続けるのだ。
存命の戦争経験者が減り続ける今、このような作品を通して戦争というものを私達は学び続けなくてはいけない。
ジュラシック・ワールド/新たなる支配者
1993年に公開された『ジュラシック・パーク』から始まる一連のジュラシックシリーズ、ひとまず?の完結作。
『ジュラシック・パーク』は間違いなく映画史に残る作品であり、世界を変えてしまったと言っても過言ではない。
グラント博士とサトラー博士が初めてブラキオサウルスを見たあの瞬間、2人の「恐竜は本当にいたんだ!」というリアクション(まずこの2人のリアクションをじっくり見せて、観客にはなかなか恐竜を見せない焦らしも効いている)と、映画を観ている観客の「映画で恐竜が見られるんだ!」というリアクションが完全にリンクした、まさに奇跡のシーンである。ジョン・ウィリアムズのスコアが素晴らしいのも言うまでもない。
色褪せない名シーン。
1作目の制作秘話はNetflix『ボクらを作った映画たち』のジュラシック・パーク回で観ることができる。「CGで恐竜を作りたい勢」VS「アニマトロニクスで恐竜を作りたい勢」の技術バトルが面白い。
何故か乗る度に毎回誤作動で危険コースに連れて行かれてしまう非常に杜撰な作りのUSJのアトラクションも、おそらく次に乗った時もやっぱり危険コースに連れて行かれてしまうのだろうけれど楽しい。
そして今作。
世界中に解き放たれた恐竜と人間の共存は、未だ出口の見えない問題となっている。
そうこうしているうちに、新たにイナゴ問題も勃発。
虫が苦手な人は閲覧注意レベルの描写でイナゴ(大きい)が人間を襲う悪趣味さは、やっぱりスピルバーグ元祖のシリーズならでは?
近年、恐竜は研究が進んだことにより、自分が子供の頃に恐竜図鑑で見た様子とはだいぶ異なるということが分かっている。
今作ではそんな学説の変化に合わせて、羽毛のある恐竜も出てくる。
完結作ということで、まるでお祭りのようにさまざまな恐竜が出てくることは今作一番の魅力かもしれない。
パーク組キャストの再集結も、ずっとシリーズを見てきたファンには嬉しい。
ローラ・ダーンの、あの時から変わらない恐竜への優しい眼差しが印象的。
悪い企業のトップは恐竜に無事成敗され、イナゴ問題も何とか解決の糸口を見つけ、それぞれの人間関係も良い雰囲気に落ち着いたところで、最初に問題提起した「恐竜との共存」の件はあんまり前進していないような…なんて気がしなくもないが、バラエティに富んだ恐竜たち、新旧メンバーの合流はやはり楽しくて、夏にぴったりのポップコーンムービーであった。
本当に完結作なのかも怪しいので、また新たに作られる(かもしれない)新シリーズも密かに楽しみにしていたい。
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