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2022年8月に観た映画

夏はやっぱりホラー、戦争映画、ポップコーンムービー。


女神の継承

監督: バンジョン・ピサンタナクーン
2021年
131分
タイ東北部の村で脈々と受け継がれてきた祈祷師一族の血を継ぐミンは、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返すようになってしまう。途方に暮れた母は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。ミンを救うため、ニムは祈祷をおこなうが、ミンにとり憑いていたのは想像をはるかに超えた強大な存在だった。
映画.com(https://eiga.com/movie/97044/)

タイ・韓国合作のモキュメンタリー・ホラー映画。
序盤からじわじわと嫌な予兆を感じさせる出来事の数々。
ミンの精神、そして身体の変容、これはただの体調不良なのか。
彼女の身に一体何が起きているのか。

予測不可能な展開の連続でずっと精神を削り取られる上に、終盤の一歩手前では派手なジャンプスケア&ホラーでは定番?である動物の無惨な死(今作では犬)。
そして最終決戦ではもう次から次へと登場人物に降りかかる地獄の沙汰に、観ているこちらも疲弊してしまう。
モキュメンタリー=POV方式であるため、画面酔いしやすい人は要注意。
他にも、『エクソシスト』(1973)の十字架のシーンに匹敵するようなシーンもあり、これらの刺激の強い描写のため、本作はR18指定作品となっている。

何歳になっても怖い。

信仰心を持つ人には、かなり厳しい問いかけをする物語でもある。
「目に見えないもの」を信じるということ。
信じる者は、一体何に救われるのだろうか。
今作を観た後は、自分も何か悪いものが憑いてしまったのではないかと思えるほどだが、「プロの祈祷師のお仕事映画」として面白い映画であることもまた魅力である。


軍旗はためく下に

監督:深作欣二
1972年
97分
昭和27年。富樫勝男の未亡人サキエは“戦没者遺族援護法”に基づき遺族年金の請求をするが、政府はこれを却下した。理由は富樫軍曹の死亡は“敵前逃亡”による処刑で援護法の対象外というもの。しかし、“敵前逃亡”の確たる証拠はなくサキエは以来、昭和46年の今日まで夫の無罪を訴え続けていた。そして、ある日、サキエはついにその小さな手掛かりを手にするのだったが…。
allcinema(https://www.allcinema.net/cinema/143913)

毎年8月には何かしらの戦争映画を観ているが、今年は前から観たかった今作を映画館にて35mmフィルムで鑑賞。

厳しい戦場での戦闘を描いた作品かと思いきや、舞台は戦後、ひとりの女性が市役所にいるところから物語が始まる。
彼女は戦時中、敵前逃亡の罪で死刑となった夫の死因究明を続けている。

夫・勝男が戦場で死ぬことになった本当の理由は何だったのか。
妻が出会う人物は、何故か皆異なる彼の最期を語る。
この構成はさながら黒澤明の『羅生門』(1950)のようであるが、ここで勝男を演じる丹波哲郎が、ひとりの男の様々な在り方を演じ分ける。語弊がある表現かもしれないが、思わず観客も一緒になって彼の死の謎について考えてしまう、ミステリーとしても一級に「面白い」作品である。
戦争の苦しみは、その期間中だけではない。
例えその戦闘自体が終ったとしても、傷は残り続ける。
家族にも、遺族にも残り続けるのだ。
存命の戦争経験者が減り続ける今、このような作品を通して戦争というものを私達は学び続けなくてはいけない。


ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

監督:コリン・トレボロウ
2022年
147分
ジュラシック・ワールドのあった島、イスラ・ヌブラルが噴火で壊滅し、救出された恐竜たちが世界中へ解き放たれて4年。人類はいまだ恐竜との安全な共存の道を見いだせずにいる。恐竜の保護活動を続けるオーウェンとクレアは、ジュラシック・パーク創設に協力したロックウッドの亡き娘から作られたクローンの少女、メイジーを守りながら、人里離れた山小屋で暮らしていた。そんなある日、オーウェンは子どもをつれたブルーと再会。しかし、その子どもが何者かによって誘拐されてしまい、オーウェンはクレアとともに救出に向かう。一方、ある目的で恐竜の研究をしている巨大バイオテクノロジー企業のバイオシンを追っていたサトラー博士のもとには、グラント博士が駆け付け、彼らはマルコム博士にも協力を求める。
映画.com(https://eiga.com/movie/95217/)

1993年に公開された『ジュラシック・パーク』から始まる一連のジュラシックシリーズ、ひとまず?の完結作。

『ジュラシック・パーク』は間違いなく映画史に残る作品であり、世界を変えてしまったと言っても過言ではない。
グラント博士とサトラー博士が初めてブラキオサウルスを見たあの瞬間、2人の「恐竜は本当にいたんだ!」というリアクション(まずこの2人のリアクションをじっくり見せて、観客にはなかなか恐竜を見せない焦らしも効いている)と、映画を観ている観客の「映画で恐竜が見られるんだ!」というリアクションが完全にリンクした、まさに奇跡のシーンである。ジョン・ウィリアムズのスコアが素晴らしいのも言うまでもない。

色褪せない名シーン。

1作目の制作秘話はNetflix『ボクらを作った映画たち』のジュラシック・パーク回で観ることができる。「CGで恐竜を作りたい勢」VS「アニマトロニクスで恐竜を作りたい勢」の技術バトルが面白い。

何故か乗る度に毎回誤作動で危険コースに連れて行かれてしまう非常に杜撰な作りのUSJのアトラクションも、おそらく次に乗った時もやっぱり危険コースに連れて行かれてしまうのだろうけれど楽しい。

そして今作。
世界中に解き放たれた恐竜と人間の共存は、未だ出口の見えない問題となっている。
そうこうしているうちに、新たにイナゴ問題も勃発。
虫が苦手な人は閲覧注意レベルの描写でイナゴ(大きい)が人間を襲う悪趣味さは、やっぱりスピルバーグ元祖のシリーズならでは?

近年、恐竜は研究が進んだことにより、自分が子供の頃に恐竜図鑑で見た様子とはだいぶ異なるということが分かっている。
今作ではそんな学説の変化に合わせて、羽毛のある恐竜も出てくる。
完結作ということで、まるでお祭りのようにさまざまな恐竜が出てくることは今作一番の魅力かもしれない。
パーク組キャストの再集結も、ずっとシリーズを見てきたファンには嬉しい。
ローラ・ダーンの、あの時から変わらない恐竜への優しい眼差しが印象的。

悪い企業のトップは恐竜に無事成敗され、イナゴ問題も何とか解決の糸口を見つけ、それぞれの人間関係も良い雰囲気に落ち着いたところで、最初に問題提起した「恐竜との共存」の件はあんまり前進していないような…なんて気がしなくもないが、バラエティに富んだ恐竜たち、新旧メンバーの合流はやはり楽しくて、夏にぴったりのポップコーンムービーであった。
本当に完結作なのかも怪しいので、また新たに作られる(かもしれない)新シリーズも密かに楽しみにしていたい。

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