酵母細胞が精神病性障害の治療薬を生産する方法を探る

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酵母細胞が精神病性障害の治療薬を生産する方法を探る
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2023年 11月 10日
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生物学 細胞・微生物学
生物学 バイオテクノロジー
編集者ノート
酵母細胞が精神病性障害の治療薬を生産する方法を探る
ピーター・アーガード・ブリクセン(デンマーク工科大学

酵母細胞がどのようにして精神病性障害の治療薬を生産できるかを探る
グラフィカルな抄録。出典:Nature Chemical Biology (2023). DOI: 10.1038/s41589-023-01430-2

遺伝子操作された酵母細胞を用いた医薬用生体物質の生産は、国際的な研究チームによる基礎研究で新たな有望な成果を示している。2022年、研究者らは、微生物細胞工場に史上最長の生合成経路(「組立ライン」)をプログラミングし、抗がん剤のための生物学的物質を生産するように設計することで、国際的な注目を集めた。

Nature Chemical Biology誌に掲載された論文「Biosynthesis of natural and halogenated plant monoterpene indole alkaloids in yeast(酵母における天然およびハロゲン化植物モノテルペンインドールアルカロイドの生合成)」で、研究者らは今回、精神障害の治療に有望な結果を示している天然物質アルスチニンを人工的に生産した結果を発表した。

「天然植物物質からの医薬品開発は広く行われています。しかし、植物は人間の病気と闘うためにこれらの物質を生産するわけではないので、より効果的で安全なものにするために、しばしばその物質を改変する必要があります」と、DTUバイオサステインの上級研究員で、バイオテクノロジー企業バイオミアの共同設立者であるミヒャエル・クローグ・ジェンセンは言う。

研究者たちは、酵母プラットフォームが植物由来の医薬品の発見と開発において重要な役割を果たすことを期待している。

患者への副作用が少ない
新たな研究成果は、研究者らが2022年に発表したビンブラスチン以外のアルカロイド群に属する物質も、操作された酵母細胞が製造できることを証明するものである。研究者らは、アルスチニンとセルペンチンという2つの新しい天然植物物質の生産に加え、医薬品開発でよく用いられるハロゲン化と呼ばれる化学プロセスによって、この2つの物質の19の新しい派生変異体を作る方法をさらに開発した。

現在、ヒトの臨床試験でテストされている物質の最大40%は、ハロゲン化によって製造されている。

「私たちは、酵母細胞に酵素を使わせ、ハロゲン化と同じ化学プロセスを実行させる方法を発見しました。通常、植物はハロゲン化を自然に行うことはできません。したがって、私たちの汎用性の高いバイオテクノロジー・プラットフォームは、植物由来のアルカロイドを最適化し、開発するための可能性のある方法であり、そのアルカロイドは、例えば、既存の医薬品を使用すると不眠症、体重増加、免疫力の低下など多くの副作用がある統合失調症に対する医薬品に使用できる可能性があります」とミヒャエル・クローグ・ジェンセンは言う。

酵母細胞が精神疾患の治療薬を生産する方法を探る
酵母におけるde novoアルスチニンとセルペンチンの生産。a, アルスチニンとセルペンチンを生産するための、植物生合成経路とネイティブ酵母代謝経路の統合。IPP、イソペンテニルピロホスフェート;DMAPP、ジメチルアリルピロホスフェート;GPPS、GPP合成酵素;FPSN144W、FPP合成酵素N144W変異体;CPR、NADPH-シトクロムP450還元酵素;CYB5、シトクロムb5;GES、ゲラニオール合成酵素;G8H、ゲラニオール8-ヒドロキシラーゼ;8HGO、8-ヒドロキシゲラニオール酸化還元酵素; ISY、イリドイド合成酵素;IO、イリドイド酸化酵素;CYPADH、アルコール脱水素酵素2;7DLGT、7-デオキシロ酢酸グルコシルトランスフェラーゼ;7DLH、7-デオキシロ酢酸ヒドロキシラーゼ;LAMT、ロガン酸O-メチルトランスフェラーゼ;TDC、トリプトファン脱炭酸酵素;SLS、セコロガニン合成酵素;STR、ストリクトシジン合成酵素。b, YPD培養培地におけるAS候補のスクリーニング。遺伝子候補は以下のように株識別子にリンクされている: RteAS1(Sc87)、RteAS2(Sc88)、RteAS3(Sc90)、RteAS4(Sc92)、RteAS5(Sc94)、CroAS_nat(Sc96)、RseSBE_nat(Sc97)、GseSBE_nat(Sc98)、 CroAS2_nat(Sc100)、CroAS2(Sc101)、CroAS(Sc102)、RseSBE(Sc103)、GseSBE(Sc104)、CroSS_nat(Sc157)および陰性対照株(Sc86)。c,d、3mMトリプトファンを添加した3×SC培地1mlで培養したSc112株とSc85株それぞれの小規模フェドバッチ法によるアルスチニン(c)、セルペンチン(d)および経路中間体の代表的な生産プロファイル。bはn=3、エラーバーは平均値からの1s.d.を表し、データ点は黒い点で重ねた。出典:Nature Chemical Biology (2023). DOI: 10.1038/s41589-023-01430-2

研究チームは、天然植物物質の生合成を可能にする植物由来の遺伝子を大量に挿入することで、酵母ベースの細胞工場を作製した。さらに、これらの天然物質をハロゲン化するための酵素をバクテリアから挿入し、酵母での生産を試験した。

セルペンチンとアルスチニンへの変換後、物質は精製された。その後、研究者らは、原子の組成を調べるNMR分析(核磁気共鳴分光法)を用いて構造を調べ、サルの細胞株で生理活性を調べた。

ハロゲン化植物からヒントを得た天然物質と19種類の変異体の酵母を用いた新しい生産に関する研究はまだ初期段階にあり、研究者たちは現在、精神障害の治療に使用する最適な候補物質を探しているところである。そして、その候補物質を臨床試験用に準備しなければならない。ミヒャエル・クローグ・ジェンセンは、アルスチニン由来の物質を臨床試験に送り出せるのはせいぜい2026年だと予想している。

臨床試験で統合失調症やその他の精神障害に対して有望な結果が出たとしても、その研究が薬局で購入できる新薬につながるまでには少なくとも10年はかかるだろう。

詳細はこちら: Samuel A. Bradley et al, Biosynthesis of natural and halogenated plant monoterpene indole alkaloids in yeast, Nature Chemical Biology (2023). DOI: 10.1038/s41589-023-01430-2

ジャーナル情報 ネイチャー・ケミカル・バイオロジー

提供:デンマーク工科大学

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