脇田もなりちゃんの歌のおかげで自分の住む街を好きになれた話



 自分の住む街が、ずっとずっときらいだった。


 こうやって書くとすこしだけ語弊があるんだけどね。この街で生活をすることはきらいじゃない、すごく好きです。あいかわらず信号機も街灯もすくないし、夜が来るのも早いけど、自分のことを置いてけぼりにしない、そういう生活ができる場所です。

 もっと正確に、ていねいに言葉をあててみると、自分の住む街で、好きな人たちを待っていることが、好きじゃあなかった。きらいだった。自分で書いておいてあれだけど、ひりひりする言葉だな〜 好きな人たちっていうのは、好きなアイドルとか、ステージに立つ人のことです。わたしには楽しいことがステージを見ることしかないと思っていて、みんなが石川県に来てくれるのを待っている間に、楽しいステージをどかどかといくつも見逃してしまうんじゃないかな〜って、どうしようもなく怖かったんだよね、たぶん。


 脇田もなりちゃんがソロとして初めて石川県に歌をうたいに来てくれたのは、ファーストシングルをリリースしてちょうど一か月後の2016年12月16日のことでした。グループ時代にも何度か来てくれたし、その度にうれしいってたくさん届けたり人一倍喜んでいたけれども、だからと言って、毎月来て!なんておこがましくて言えなかったし、次会うのはまた石川で!とはまったく思わなかった。やっぱり感覚としては、待っているより見に行く人。ソロデビューして、また東京へ見に行くぞ〜と思っていた頃だったから、「金沢と福井のみんな、この日はあけておいてね」っていうツイートを見たとき、心の底から驚いたことをよく覚えています。今書いてみても、あの頃の再現とかではなく、今の自分で新鮮にびっくりしてしまう(笑)もなりちゃん自身も、こんなに早く北陸で歌うことになるなんて思ってもみなかったと思います。


 「あのね、ひみつを話すね、」そのやさしい歌い出しに、わたしね、あの日、救われました。この場所で、たった一人のあなた、になれた瞬間のこと。その当時のわたしは、思い出を大事にしすぎていてその重さに今にも押しつぶされそうで、思い出以上に楽しいことをなかなか見つけられなくて、ぜんぶちゃんと覚えているわけじゃないけど、とにかく毎日どうしようもない顔をしていたんじゃないかな(笑)だから、思い出のなかの自分じゃなくて、今の自分ときちんと向き合わせてもらえた感じがして、ハッとしたんだよね。今ここにいるあなたに歌っているんだよって、もなりちゃんの歌にはそういう力があった。その時のわたしの気持ちとぴったり共鳴したのが、あのね、、、だったから、今も大好きな曲です。


 次の年の8月20日には二度目の石川でのライブ。新しくおろしたスカートは、触るとさらさらしていて、楽しみな気持ちを街中に染み込ませるように歩きました。

 真っ赤なドレスを着たもなりちゃんが、「最初から盛り上がってもらいたくて」って一曲目に選んだのが泣き虫レボリューションでした。「わたしにできるなら、あなたにもできるよ」このことばがほんとうにほんとうにすごくって、宝物みたいで、魔法が閉じ込められていて。でも本当のところ、魔法なんかじゃなくて、すべてもなりちゃんの歩みで、っていうことを思い出しては何回でも心を打たれてしまう。もなりちゃんが歌うことばたちはどれも知っている気持ち(今はもう持っていないとしても)で、自分が感じてきたことを、ひとつずつすくい上げてくれるんだよね。たぶん聴いているみんなにとってそうで。歌詞が制約じゃなくて世界を広げてくれるもので、過去も今も未来のこともそっと肯定してくれる。だからわたしは、もなりちゃんから発せられることばが大好き。

 ライブとしては、対バンだったから初めてもなりちゃんのことを見た人もたぶん多かったけど、世界まるごとまきこんじゃえ!ってにこにこ楽しく歌いつづけてくれたから、たくさんの声がもなりちゃんに返ってきたんじゃないかな〜って、もなりちゃんにとって石川が何かを大きくした場所になったらいいな〜って、思いながら見ていました。


 そのまた次の年は福井と福岡へ連れて行ってもらいました。ライブが終わって帰り際、また金沢にも来てねって言ったら「約束する!」って指切りをしてくれてね。そんなのひさしぶりにしたから、そのあとしばらく自分の心臓の音を聞いて過ごしたな〜〜


 そうしたら今年、それがほんとうに叶って。8月25日。日よう日。大切な人の晴れの日。"RIGHT HERE" リリースツアー初日の石川公演へ行ってきました。puddle/socialにて。

 愛おしさがそのまんま音になったみたいに、かわいくて楽しくて、どの曲も心の真ん中の音楽でした。「これから始まるストーリー 君と夢を見ていたい 新しいこの世界で、輝いていきたいよ」いつかきっと出会えるとびきりの自分へ起点を置いて歌うもなりちゃんは、とても晴れ晴れとしていて、格好良かったです。MCでは、ソロになって初めてアンコールをもらった場所が石川の同じ会場でっていう特別な思い出を聞けてうれしかった。フロアからのことばが、ちゃんともなりちゃんがくれた楽しさへのお返しになっていたんだなぁ。


 石川でのライブが決まったことを、運命だとか、そんなふうに言うつもりはまったくぜんぜん思いっきり、ないんだけど、それでもやっぱりあの約束は、もなりちゃんがこの日へ向けて時間をかけて届けてくれたことばだ!と、もなりちゃんが自分で勝ち取ったことばだ!と、もうここでは思い切って決めてしまいます。その時間を振り返ってみて気づいたのが、この街でもなりちゃんを待っていた何か月間か、めっっちゃくちゃ楽しかったな〜〜っていうことで。「明日は今日より輝いているはず」そう歌ってくれる曲やたくさんの曲が生活の中でずっとすぐ隣にいてくれて、毎日聴いていたんだよ。もなりちゃんの歌を聴きながら出かけた先で、この街でしか出会えない楽しいことをたくさんたくさん見つけられたし、昨日の自分と明日の自分を繋ぐのは、今もなりちゃんの歌を聴いている今日の自分なんだよな〜っていうことが、信号機も街灯もないこの街の、夜道を照らす明かりでした。わたしねぇ、自分の住む街で、もなりちゃんを待っていることが、いつのまにか特別に、好きになっていました。もなりちゃんのおかげで、何にもないと思っていた石川のこと、こんっっなにも好きになれたよ。わたしの大好きな石川へ、歌いにきてくれてほんとうにほんとうにありがとう。さすがに毎月来て!とは今でも言えないけど(笑)、来年はバンドセットで来たいって言ってくれたし、これからも石川でライブがある度に、待ってたよって手を広げて出迎えられる、そんな人でいたいです。


 わたしは、もなりちゃんみたいにたくさんの人を救うことなんてできなかったし、きっとこれからもできっこないけれど、わたしが救えるたった一人がわたし自身だから、これからもずっと、自分の生活のなかで、ゆっくり、もなりちゃんのファンでいます。歌いつづけてくれてありがとう。またね。

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