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ケガレを取れるでしょうか #水上のゴンドリエーラ

ご縁あり、ぱすてるからっとさんの水上のゴンドリエーラ 船チームを観劇しました。
ハレノヒカンタータのときと共通する部分、異なる部分なども見えてきて自分なりにも言葉に出来るかなと思います。

あらすじ

『 リストラされたならうちで働くか?海に放たれたゴンドリエーラ。 』


舞台は少し未来の水の都・ベネツィア。

イタリアにあるこの街は、道路はなく、
人々や荷物の移動は運河を流れるゴンドラを使う。
運河沿いには歴史ある宮殿や広場があり、街には何やら
“不幸の石”が起源の、不思議な力が秘められているようだ。

この街で、運河を渡るゴンドラの漕ぎ手・ゴンドリエーラ”の少女が
カンパニーから漕ぎ手をリストラされてしまうところから物語は始まる。

「はぁ…またやってしまった…。もう私に出来るお仕事なんて…」

その少女の元に現れたのは、最近ベネツィアで話題となっている“怪盗”の少女だった――。


業界初!?「レーザービームライト」も舞台演劇に取り入れた、
2.8次元“ベネツィア×魔法バトルファンタジー”エンターテイメント舞台!

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登場人物たちの魅力

今作も沢山の登場人物がいて、それぞれが個性あるものでしたが1つ良い点は主人公の1人、ルーチェのキャラが一貫していたこと。
ポンコツで愛らしい主人公で、ダメなところはしっかり受け入れて表情で表現している。急に逞しくなるご都合主義でもなく隠された能力もサポート系と、最初から最後までどういう人かが一貫。自分がよく観る作品は、ルーチェのようなタイプの女性が主人公であることが実はあまりなかったので新鮮さもありましたが。
また、こういうちょっと抜けた愛らしいキャラを邪魔する要素がなかったのも○かなと。

あとTwitterにも書きましたが、ジーナとジルダの言い争いしてるシーンが個人的には感情もストレートに伝わって好きでした。個人的にはこの2人のやり取りはもっとじっくり見たかったので、ちょっと出しよりは、ルーチェ達が訪問した時くらいガッツリ絡むシーンが欲しかった。ここの2人はもっと深堀すれば、劇場の空気持って行ける要素を感じたなあ。(作風的にシリアスが出過ぎるとちょっと方向性が変わって迷子になってしまうかもですが)

あとは全体的にツッコミ役が少なかった(というよりも明確なツッコミポジはいたかな?)ので、コメディ要素が全体的に出てしまっていた分、役割というか「こういう人だ」っていう認識が薄くなってしまった人がチラホラいたのでそれは勿体なかったかな。例えば、フランチェスカは比較的真面目ポジなので、他のゴンドリエーラが騒いでいたら「やめなさい」の一言や床ドンでルーチェらを黙らせるシーンがあるだけでもメリハリが着くし、上下関係もわかる。個人的には無言の圧に負けるルーチェが見たかったなあ。と。
後述しますが、ぱすてるからっとさんは登場人物それぞれをフィーチャーする要素が強い印象がありますが、塩梅も大事なかと。

ゴンドラという存在

本作を語る上で欠かせない存在のゴンドラ。名前を知っている人はいても、ゴンドリエーラなどの付随する知識のあるお客さんは多くなかったのではないでしょうか。特に、ルーチェのケガレから解放させる力はゴンドリエーラという存在がベネツィアではどれだけ大切なものかを刷り込めば刷り込むほど味が出てくるものだと思います。そこを起点とした物語は良かったのではないでしょうか。
中間のダンスでもしっかりとゴンドラを形作った振り付けもあったのは個人的に◎。物語の世界観を大事にした振り付けは、特にコンセプトが決まった作品では大事だと思っているので、好きな表現でした。
おそらく、観劇後はゴンドラに対して少し思う所が変わるような作品ではないでしょうか。そういった意味での心を動かせていたのは良い作品ですね。

ただ、ゴンドラの表現はもう少しこだわって欲しかったかな?軸になるロープがたるんでたり、布の部分がひっくり返ったりは気になったのと、オリビアがゴンドラをパクられたときに「船首とかが違う」ってわざわざ説明が入っているのに同じだったなあと。この作品の肝になる部分だから、そこはこだわって良かった部分かなと思います。


ぱすてるからっと「らしさ」

良くも悪くも可能な限り全登場人物に何かしら焦点をあてたエピソードがある。というところです。
もちろんダンスだとか、女性が大多数で色んな女性が出てくるという2.5次元的な要素などもありますが、個人的に思う要素としてはこれ。

片方のチームをで22人、両班観たら44人の大所帯。正直演劇慣れしていないと全員に目を向けることは厳しい。特に、推しだけをずっと見ていたいタイプの方には。なので、メインキャストでなくとも、何かしら本編とは異なる路線でのエピソードが入っているのは特徴なのでしょうか。まだ2作しか見ていませんが。
ただ、先にも書いた通り良くも悪くもとは思っていて、エピソードが多いと意識が分散したり、単純に長くなってしまう。
多くは語らずとも「あの人って普段何してるんだろう」みたいな含みを持たせるのも好きかなーと個人的には思います。

風の噂で聞きましたが、細かい伏線の部分とかは考えさせる意図はあるようです。が、根幹に関わる部分はもう少し描写しないと、設定のブレを誤魔化すようにも使えちゃうし、スッキリ感が少なくなるかな?

ちょこちょこと出る疑問

もちろんファンタジー系なので、そもそもベネツィアで魔法は使えませんとかそういうマジレスはするつもりはありません。ある程度平行世界のお話として受け取りましょう。
・今回の時代設定がもう少し明確になって欲しかった。
というのも、あらすじだと少し未来のベネツィアとありますが、どんな世界観なのかは結構ボヤけてました。充と音寧が比較的観客側の目線(舞台となっているベネツィアを知らない)なので、うまく説明を入れて世界観を植え付けて欲しかったかなと。とくに、剣を使う=過去の物語という錯覚を起こすものなのでそこのズレを修正するところは世界観の把握のために欲しかった。

・なんでダリアは観光客2人を紹介されてないのに「日本人」と分かったのか。
多分イタリア語または通訳的な感じで話しているんだろうけど、それだとダリアが日本語に精通していたかもとか、数々の日本人を騙してきて覚えてしまったとかあるかもしれない。それも「考えて」で済ませるのは簡単だけど、あんまり多いと作り込み甘いの?ともなる。。
言語の違いで国を推測するっていうのが個人的に好き(セリフは日本語だけど、設定上は違う言語だから○○訛りだなとか)が好きなので、細かいところだけど疑問としてあげました。

・オリビア急に復活
これは結構思った人が多いらしい。というのも、今作はルーチェのケガレから解放する力が物語を大きく動かす要素だったのに、オリビアだけはジョルジョが助けに行き枠外で急に復活。これはちょっと設定を大きく覆すような感じになって疑問が残りました。
考察
系譜として手に入れていたルーチェの力をジョルジョが持っていた?(その伏線あったかしら)
愛の力があれば復活できる(ならルーチェじゃなくてよくないか?)
尺の都合上無理やり復活した(こんな事があったらアカン。なら他のシーン削りなさい)
など、ちょっと観る人任せにするには重いかなー?とは思いました。


見どころはありつつも

魅力的な人物たちや、ある程度善悪や進む道がわかる作品でダンスシーンなどは人数も多く爽快です。
ただ、社会情勢や風刺のメッセージを入れたと明言するならもっともっと観ている人に考えさせたり心に訴えたりがあっても良かったかな?風刺を入れるにしては悪が少なすぎるとというか、実世界にいたら嫌だよね?という訴えになる要素がそこまでという印象。普段私が相当ひねくれた作品を読んでいるからかもしれませんが。(それはぱすてるからっとさんの作風とは違う)
せっかくケガレという、ひとつ淀みのような概念を出しているのであれば、邪な心を持った人が特に呪われてしまうような要素もあっても良かったかな?あなたもケガレに囚われる可能性があるかもねって言う部分。

ストーリー性や設定などは面白いと感じる部分があるので、個人的にはどこまで研ぎ澄ませるか。優しさを捨てられるかもみてみたいなと思う作品であり、プロデュースだと思いました。まだまだこれが完成系ではない、と思います。何か「刺さる」鋭利な刃物のような演出もみてみたいかな。

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