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目は合いますか? #ノア版野鴨

ご縁ありまして、個人的に初の平日2連続観劇となりました。ポケットスクエアありがてえです。


あらすじ

昔、窃盗団の一味だった2人が、10年ぶりに偶然再開した。2人はそれぞれ犯した罪を償い、今は真っ当に働いていた。男は職を転々としていたが恋人と仲睦まじく生活をしていたし、友人は親の不動産業を引き継ぎ仕事で成功をおさめていた。
しかしある日、友人は男の恋人の写真を見て驚愕する。男が恋人だと言う女性は10年前に窃盗団が捕まることになった事件の被害者にそっくりで、しかも彼女を死に至らしめる原因を作ったのは男だったからだ。
その日以来友人は男の生活を観察した。観察の中で分かったことは男には恋人などはいなく、男は一人ぶつぶつと独り言を言ってる光景が頻繁に見受けられた。そして友人は確信する。男が昔の事件で犠牲者が出たことを無かったことにして、偽りの幸せに逃げ込んでいることに。それどころかその犠牲者を自分の恋人という設定にして男の本当の罪から目を背けているという事実に気付くのだった。
それは真の幸福ではない。
友人は男が本当の意味で罪を償っていないという事実に憤りを覚え、男が真の生活を取り戻すためには男に真実を告げ、男の犯した罪を本当の意味で男が償わなければならないと考えるようになった。
正義と真実の名の下に行動する友人と今の幸福を大事にしている男。人生の理想を追求するうえで正しいのはどちらか。真の真実とは何か?人は理想と現実の間でどう選択するべきなのか?真の幸福とは何かを問う物語。

https://magazine.confetti-web.com/news/news-news/43163/


目が合うのか合わないのか

HOPEといえど、近い近い。最前は役者さんが飛んできそうな臨場感がありました。特に飲み会のシーンは皆様との目が合う感じ。世界にどっぷりと浸かれました。
ただ、そういうギミックに頼らずともしっかりと熱のある演技が伝わりました。部屋ひとつで繰り広げられるちょっと不思議なヒューマンドラマというか、楽しさと狂気の入り交じる空間が何とも言えない。
個人的には、亘の精神が壊れていくところでふと目の光が消えた感じがしました。最前なのに、なんというか何も見えなくなってるんじゃないかという感覚でした。それくらい、亘という人間が精神を蝕まれてるのが伝わりました。

シンプルだけど、深みがある


物語自体は、正直超どんでん返しとまではいかない。モカを亘以外は認知できていない。あらすじにもある通り亘と亮平は過去に過ちを犯している。というところから、「この人は殺されたんだな」くらいのことは想像できる人は少なくないでしょう。真相はちょっと違いましたが。
ですが、過ちによって命を落とした人がずっと見える。という点と、どこか噛み合わない周りの人とのやり取りで亘の精神に何かしら異常があってもがいている点。ここから亘が幸せになるエンドなのかそれとも、、、と考えながら観ることが今作の楽しみ方のひとつだったかと。
ある程度予想されたエンドとは思いますが、今作の魅力はそこではなくシンプルな構造だからこそ一人一人の演技や様子に注目できたのだと思います。
イヤミスというか、後味の悪い結末もおそらく観劇した方々の心に刺さったのではないでしょうか。とくに、目をそらさずにしっかり観ていた方には。



無駄のない登場人物たち

それぞれに見せ場があり、雑に扱われてる人がいないのが個人的には満足。カンパニーが作品ごと好きになる。という当たり前なことですが、それができてないと成り立たないことなんですよね。
与えられた人が、どんな人なのかとことん追求してそこから導き出される行動原理がわかる時ほど面白いことはないです。
個人的には、パンチが効いたカップルの朝君と凛子の2人が本当にお互いが好きだとわかる描写があって、キャラに頼らない感じがしたところが好きでした。タバコ吸うと知って倒れた時は、目が虚ろになっていたり、亘が発砲したシーンはちゃんと視界を遮ったし。そういう細かい人物描写は設定や台本を読み込まないと出ないことですね。

ただ、過去を隠す必要があった分それぞれのエピソードを掘り下げるに至らなかったのは少し物足りなく。湯田が亘をなだめるところに至るまでの布石はどこかで欲しかったかなあ?ユダの話もちょっと急に出た印象。
結末に大きな影響をあたえてたら困りましたが、そうではなかったので「疑問に思った」で止めておきます。湯田と結婚とかのエンドだったら何がしたかったの感が強かったかも。

小演劇とはこういうもの

と思う作品でした。大規模な演劇はもちろん、正直同じ場所にあるポケットの後ろで観たらどこか入り込めない不安はあるように思いました。
基本的には亘の部屋1つというシチュエーションでこそ成り立つ狂気的なストーリーだと思うので、小演劇を楽しみたいという人は是非にと思う作品でした。

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