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10年以上繰り返し読む、心の負担になるけど大事な本5選の話

こんばんは。

今日は、よっこいしょとメンタルの重しを上げて、心揺さぶられた本について書こうと思います。

癒し映画や癒しマンガの話でも書きましたが、私は何度も同じものを繰り返し楽しむ派です。

物語も例に漏れずそうです。

しかし、小説というものは、その出自からして、人の心を正負両側へ揺さぶるのですよね。

故に元気な時しか読めないことに、気がつきました。

しばらく読んでないな、、物語。

かえって、心があんまり動かない、ただ癒しになる小説が読みたいです……知りたいです……

こころ 夏目漱石

 https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/773_14560.html

青空文庫 うまくリンク貼れませんでした。

思い入れが深い、おはなしです。これ以上に好きな小説にまだ出会っていません。

至らないところが多いままでも、

生産する側にまわれなかったとしても、

自分勝手のしっぺ返しを受けても、

精神が脆弱な己に苛立ちを覚えても、

ひたすら生きるしかないな、となぜか思うことになります。わたくしはこの本を読むと。

何度読んでも、毎度違うことに気づき、毎度違う癒しと悲しみを得ます。

読むたび、違う文列、違うセリフにハッとさせられます。

表現はどこを切り取っても至高。

高校生の頃に読んだ時は、恋愛の話だと思いました。

大学生の頃に読みかえした時は、働きたくないダメ学生のための話だと思いました。

時には、ホモソーシャル的な苦しみを描いた話だと思いました。

またある時は、精神の病理について描いた話だと思いました。

今は、エゴイズムの話だと思っています。

「私」に不可解な自分を少しでも伝えてあげたくて、私に自分を解らせてあげたくて「書いた」「そのために10日間生きた」と語る、最後の最後の五十六章の先生の独白は迫力があります。

乃木大将を出し、死のう死のうと思って生きた35年と腹に刃を突き立てる刹那と、どちらが苦しかったろうかだなんて。

Kが亡くなった理由について何度読んでもよく解らないし、そこがメインではないのでしょうけれど、最近は、書いてある通りなんだろうと思っています。(1億年前からあるお話なので、Kの自殺はネタバレにはならないですよね。)

自分は薄志弱行で到底行先の望みがないから、自殺するというだけなのです。

引用元:https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/773_14560.html
青空文庫 夏目漱石 『こころ』 四十八

意志薄弱で先の見込みがないからって、そんなことで?と思ったこともありました。

好きな人をとられたり、友達に裏切られたから?と若い時の私は思ってました。

でも今は分かるような気がします。
そして、作中の乃木大将と同じように、「もっと早く死ぬべきだった」とKは思っていたのですね。それも今は、よりわかるような気がします。

漱石の生きた、全体から個へと向かう時代の始まり。そして現代、今はもうほとんど、個も淵まで来ている。

何度読んでもただひとつ変わらない感想は、「私も高等遊民になりたい」ということです。

「私」のお兄さんとは多分1億年後も相容れない。

さて、鎌倉の海のどのへんで先生と私は出会ったのでしょう。七里ヶ浜?

アルケミスト パウロ・コエーリョ

そこはかとない透明感。

今ここ、を懸命に生きることを思い出させてくれます。

すべてのお金をなくしても、何度でも立ち上がること。

目の前のクリスタルを磨くこと。

そんなふうに働けたことがあったかしら。

クリスタル屋さんのシーンが1番好きです。

透明なグラスでミントの飲み物、飲んでみたいなぁ。

羊飼いという、希望が詰まったことば。

ショコラ ジョアン・ハリス

映画版を観た方は、小説版との雰囲気の違いに驚かれるかもしれません。

映画版はロマンスの香りが強く、実際小説も恋愛小説といってもいいのですが、ある一対の男女の始まりと結び、という描かれ方ではありません。

小説版は、中世の魔術の香りがします。

小説版は、ロマ民族(もっと大枠での、ジプシーかな?)の放浪の感覚、ネイティブインディアンのスピリチュアルな感覚、欧州の魔女的な自然魔術とアロマテラピーの雰囲気、それから、タロットカード。

生と死と、老いることと、自分の人生についてまわる「黒い男」と対峙すること。

現代を舞台にした小説でありながら、精神世界や見えないものへの扉がすぐそこにあり行き来しているようです。

そしてフランス的(語弊がある。)で、女性的な感覚に親和性があります。

もちろん、チョコレートのお話なので、チョコレートも大事です。チョコレートの描写や、ホットチョコレートの描き方が涎が出そうなほど素敵です。

なぜか私は、海外に出かける時は毎回、お守りのように持っていき、飛行機の中で読みます。


伊坂幸太郎 重力ピエロ、アヒルと鴨のコインロッカー


伊坂幸太郎を初めて読んだのは高校2年生の時で、『重力ピエロ』です。

エンタメ小説にあまりハマることがないのですが、伊坂幸太郎さんにはハマりました。

とてつもない衝撃だったのを覚えています。彼の本を読んで、小説家になりたい、と思った気がします。

高校生の間は、当時出版されてる伊坂幸太郎作品を読み漁っていました。

伊坂さんは確か、法学部のご出身なんですよね。

だからなのか、法で捌き切れなかった悪と、法ではどうすることもできない人間の悪への復讐について描かれてらっしゃるのでしょうか。

人間にはどうすることもできない悪や罪に対して、人間ではない存在を用意したり。

もしくは法の外で働く痛快な犯罪とかでしょうか。

見出しの2作品は、許し難い犯罪者が出てきます。

それらへの強烈な思いからくる意思から、物語は紡ぎ出されます。

復讐といえば、タランティーノの映画が思い起こされます。あそこまであっけらかんとするとすごいですよね。

ノルウェイの森

小説がすごく好きだったんですが、最近は映画の方を繰り返し見ています。

映画の方が、心が痛くないです。

綺麗だな、とか、美しいものに心がいくからでしょうか。

直子について分かるようになってきたのは、精神の弱さに自覚的になってきたからかもしれません。

以前は、まるで分からなかった。

なんでなんだ、という、ワタナベくんのような気持ちで読んでいたと思います。

ワタナベが直子に、そういうのは気持ちの問題だから、のようなことを言い、直子が、私の問題は全て心のことなのだと言うところ。

気の持ちようというレベルの話ではないことを、ワタナベはホントの意味でわかってないんですよね。(確かに直子は大事、でもたぶんすけべ心も大きかったはず)

元気になったらまた、のまたがいつくるのか。いつ元気になるのか。無邪気に未来を待てる人との時間感覚の違い。出口の見えない暗いトンネルの中。

気持ち的に人に会えない時、このまま「調子が悪い」と会わないでいて、いつまで待っていてくれるだろう、と怖くなります。

そんなことを思うようになったのですね。

10年て、長いようで短い。

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