梅津 裕一/あんばい農園
元教師の経歴を活かし、体験学習型農業を実現する落花生農園
■プロフィール
大学・大学院時代は、海洋研究開発機構(JAMSTEC)に出向して、深海生物の研究に携わる。
卒業後の2012年からは5年にわたって神奈川県の中高一貫校で理科教員として地学や環境学を指導していたが、ストレスなどが原因で病気退職。療養のために妻の実家近くの千葉県に移住して家庭菜園を始めたことがきっかけで、農業の魅力を知る。
2017年10月、アグリイノベーション大学校に入学し、平日は野菜農家で研修しながら、週末は農業経営を学ぶ日々を1年半にわたって続ける。千葉市の認定新規就農者に認定された2019年4月、1ヘクタールの農地を借りて落花生専門の農園をオープン。
元教師の経験を活かして、農業体験に訪れる親子を対象に、収穫しながら落花生の生態について学ぶ学習型の農業体験が人気だ。
■農業を職業にした理由
病気で教師を辞めた後、リハビリ代わりに始めた家庭菜園を通じて、自分のペースで生きていける農業に魅力を感じるように…。
アグリイノベーション大学校で農業経営を学びながら、平日は農家で研修を実施。
家庭菜園時に落花生だけがうまく栽培できなかったことや落花生の面白い生態に興味を持ったことから、探究心が刺激され、落花生専門の農家を目指す。「千葉=ピーナッツ」のイメージが普及しているので、ブランディングの必要がないのも魅力だった。
キャリアを活かした体験学習型の農園として、千葉市の認定新規就農者となる。研修中に出会った元料理人でWebデザイナーの三本木絵未さんと共同運営中。
■農業の魅力とは
時間の管理や書類提出などに追われた教師の仕事と比べて、自然相手の農業には「雨だから仕方ない」と、自然のリズムに合わせながらも自分のペースと責任で物事を決められる自由があります。
それでも1年目は播種の3日後に豪雨に見舞われ、土壌や種を流出させる失敗がありました。以来、天気図を分析して慎重に播種計画を立てるようになりましたが、それも「農家としての生き方」を選んだのか、「仕事としての農業」なのかどうかで、考え方が変わっていくと思います。
前者を選んだ僕は、自然の恵みがあるから農家として生きられていると考えていますが、お金を稼ぐことが主目的ならば、ハウスで環境を制御して回転効率を良くするのが適していると思います。
■今後の展望
落花生は1年1作の食べ物で、4カ月の栽培期間に加え、乾燥する時間もかかりますから、付加価値の高い商品を開発する必要があります。
千葉でも落花生は、すでにいろいろなことがやり尽くされたと考えられていますが、2021年にはオイルを絞った後の落花生を粉末状に加工した商品を作りました。タンパク質が多いのに低カロリーで、牛乳に混ぜてプロテインパウダー代わりにしたり、ヨーグルトに混ぜてデザートのように楽しめます。
ハチミツを加えたペーストも作り、販路拡大を目指しています。 そのためにもいずれは農地面積を2倍に広げて、人を雇用できる農家になりたいです。落花生栽培と、もうひとつの収入の柱である学習型の体験農園は僕にしかできないことです。昨年はコロナで実施回数が減りましたが、元理科教師として落花生がどんなに興味深い植物か、伝えていきたいと思っています。
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